「【ネオ・ヒューマン/ハーロックの不敵な笑い】」銀河鉄道999 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【ネオ・ヒューマン/ハーロックの不敵な笑い】
ワープ航法は未だ夢物語だけれど、”機械の身体”の実現はもう近い未来に迫ってるかもしれない。
最近、NHKのクローズアップ現代と朝日新聞デジタルが、「サイボーグ」になろうとしているイギリスのロボット工学者スコットモーガン博士を取り上げた。
スコットモーガン博士は、2017年にALSと診断され、余命2年と宣告されたが、生きるために自身の研究でもあるテクノロジーの活用を積極的に選択した。
筋力の衰える前に、胃や腸に穴をあけチューブを通し、栄養の接種や排せつを人工的に行えるようにし、誤嚥性肺炎を防ぐために気管と食堂を切り離し、声も出なくなることを前提に、合成音を専門企業とともに数千のフレーズを収録し、これを基にAIが合成した声で会話をするようにしたのだ。
こうした取り組みは大手のハイテク企業の助力もあって成立したものだが、スコットモーガン博士は、今後もスーパーコンピューター、AI、ロボット工学の発達で、自分の能力はますます発達するだろうとし、将来は脳とコンピュータをつないで自らの意思を引き継いだVRの中のアバターが自分として生き続けることになるとも言っている。自らの著書のタイトル「ネオ・ヒューマン」を自分自身で体現しようとしているのだ。
僕は、上記のようなことが人間の幸福かどうかは分からない。
スコットモーガン博士はノン・バイナリーで同性婚をしたことでも知られていて、様々なことが僕の理解の外側にあるように感じる。
あと、批判を覚悟で言わせてもらえれば、子孫を残すという意識が薄いのかななんて考えたりもして、ちょっと複雑な気持ちだ。
僕は、ノン・バイナリーへの差別がなくなれば良いと強く思う方だが、同時に人間の生物としての営みとか生存とか、進化とか、そういったものをどうでも良いとは思えない。
自分は成長とともに学び、知恵を駆使するようになり、そして、また新たな価値に気付いたからこそ、自分はノン・バイナリーも普通のバイナリー(身体の性も性自認も一致している)と人間としては同じで差別されたりするようなものではないと思えるようになったと信じているし、本来の人間の成長とは、代を重ねることで学ぶことも多いのではないかと思う。
僕は、キャプテン・ハーロックやエメラルダスが登場する、この「999」が大好きだが、こうした科学の発展で「機械の身体」が実現するかもしれないという現実を考えると、格差が新たな争いの火種になるのかと、ちょっと心配にもなる。
だが、トチローとハーロックの友情、トチローとエメラルダスの愛はもとより、トチローがアルカディアに自分の記憶を残すところは、まさにネオ・ヒューマンみたいなものだと考えると、やはりテクノロジーは人間の使い方ひとつによるのだと、つまり知恵次第で異なる、まあ、正しく使いましょうという倫理観に落ち着くことになる。
僕が「999」で一番しびれる場面は、終盤の、機械化母星メーテルからアルカディアに砲撃を受けながらも、ハーロックが不敵な笑いを浮かべるところだ。
とにかくかっこいい。
何十年ぶりかで観て、また、ハーロックの不敵な笑いにしびれてしまった。