「ガンダム大地に立つ!! すごい… 親父世代が熱中するわけだ。」機動戦士ガンダムI たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
ガンダム大地に立つ!! すごい… 親父世代が熱中するわけだ。
1979〜1980年にかけて放送されたリアルロボット・TVアニメ『機動戦士ガンダム』を再編集し、劇場用アニメーション化したもの。
全三部作のうち、本作は第一部にあたる。
宇宙世紀0079、機械いじりの好きな少年アムロ・レイは、地球連邦政府とジオン公国との戦争に否応なく巻き込まれてゆく…。
ロボットアニメの金字塔『機動戦士ガンダム』シリーズ。
40年以上の歴史を誇るこのシリーズも、始まりは全43話のテレビシリーズだった。
本作はそのうちの1〜13話(+14話の冒頭)を再編集し、130分程度にまとめたもの。
1話20分だと考えても、元の物語は260分。
それを半分程の時間に纏めているのだから、さぞしっちゃかめっちゃかな作品になっているんだろうと思いきや、意外にもこれが一つの映画としてちゃんと成立しているんですね〜。
これは偏に、『ガンダム』シリーズの生みの親、富野喜幸(由悠季)総監督の編集能力によるものでしょう(これだけの能力があるのに、なぜ『ターンA』の再編集版はあんな酷い出来だったんだろう…?)。
旧ザクの出番が全カットされている悲しさはあるものの、それ以外の取捨選択は完璧なんじゃあないですかね。
また、映画化にあたり改変している点も多々みられる。
一番「おっ!」と思うのはマチルダさんとブライトさんの会話。その後の展開を踏まえ、「ニュータイプ」という言葉が早々に登場している。
アムロが母・カマリアと再開するエピソードと、みんな大好きランバ・ラル大尉が初登場するエピソードを入れ替えることで、アムロのPTSD発症の原因は母親とのすれ違いにある、という理由付けが為されている点も、「映画」ということを意識した実にクレバーで丁寧な仕事じゃあないですか。上手い!
とはいえ、2時間ちょいの物語の中で、2回もアムロが精神的にダメになっちゃう展開があるというのは、ちょっとモッタリしているよなー、と思ってしまう。
TV版だと気にならないんだけど、映画だと「それさっきも見たよ…。」となってしまう。
あと、こんなことを言うとガンオタから怒られてしまいそうだけど、正味『1st』の前半部分ってあんまり面白くないじゃないですか…😅
たしかに第一話、永井一郎さんの「人類が、増え過ぎた人口を宇宙に移民させるようになってから、既に半世紀が過ぎていた…。」というナレーション→ザクのサイド7への侵入→パンイチの天パ主人公→ジーンの暴走→突如崩れ落ちる日常→ガンダム大地に立つ!!→ 「認めたくないものだな…。自分自身の、若さゆえの過ちというものを。」という流れは完璧だと思うのだが、その後はかなり地味〜な展開が続く。
シャアとの戦いは決着がつかないまま10話くらい続くし、新しいボスキャラのガルマ・ザビはモビルスーツのパイロットですらないし…。
ジャブロー戦あたりからは文句なしの大傑作になってゆくのだけど、それまではあまり物語にドライブ感が無い、というのが『1st』の弱点だと思っていて、それ故にそこを纏めたこの『劇場版1』もあんまり面白いと思えない。
よく考えたらこの映画中、アムロはエース級のパイロットを一人も倒してないからね。
本当に、本作は物語の立ち上がりって感じがする。
映像的な美しさに欠けるのも、本作の弱点か。
TV版を再編集したものといえども、本作は1981年に公開された作品。
本作以前に公開されている『カリオストロの城』や『銀河鉄道999』と比べるまでもなく、クオリティの低さが気になってしまう。
特にアムロが単身ジオンの前線基地を攻撃する後半の見せ場。この場面の背景美術が凄い適当で気が抜けてしまう…😅
作画さえもう少し良ければ、今の若い人にも薦めることが出来る作品だと思うのだけれど…。
まぁ言いたいことが無いでは無いが、総集編としては非常に優れた出来だと思うし、「ガンダムには興味あるけど、TV版を観るのはちょっと…」と言う人の導入編としては最適な作品。
『1st』は尻上がり的に面白くなるので、本作を乗り越えてしまえば、あとはもう面白いところしかない!
この重厚なドラマとリアリティある心理描写…、親父世代が熱中するわけだ。