「海外では非常に評価が高く、国内では大多数から酷評されている作品」機動警察パトレイバー2 the Movie 一般人さんの映画レビュー(感想・評価)
海外では非常に評価が高く、国内では大多数から酷評されている作品
それはこれだけの大作のレビュー数が100に満たないことでも良く分かる。
まあ、無理もない。
この映画では主人公の特車2課の面々はほぼ脇役以下に追いやられ、ようやく彼らが活躍し出すのは後半以降。
つまり、この作品の本題はパトレイバーの活躍ではなく、パトレイバーという基本設定の中で、日本の抱えるタブーや暗部を「真正面から斬る」ことにあり、だから観客は「何だこれ?」って話になるのだろう。
ただし、それでも制作陣からすれば「まだまだ言い足りない部分」が多くあったのだろうし、押井作品は制作段階でお蔵入りなんて事も何回かあり、今回もそういう、親会社とのギリギリのせめぎ合いの中で「作られた感」が滲み出ている。
とにかく押井作品はいつも同じで「虚構と現実」を、どの様にして作品の中に映し出すのかに終始する。
今回は柘植行人(告げゆく人)という元自衛官が起こした、自衛隊機(実態は日本で軍拡を目論む勢力の教唆による米軍機の使用)の横浜ベイブリッジ爆破がきっかけとなり、物語が進行していく。
その後は事件に驚愕しつつも、あくまで表面的な体面のみを守ろうとする警察、自衛隊、そして政府が、互いに責任を押し付け合い、キリキリ舞いさせられ「柘植の思惑通りのド壺」に落ち込んで行く様が、非常にリアルに描かれている。
国民の生命財産よりも、自分たちの体面や利益を何よりも優先する。
この辺りは昨今の統一教会騒ぎやコロナ対応などを見ると、今も全く変わっていない気がする。
劇中で特に印象的なのが日常と戦争の対比だ。
万策尽きたと考える日本政府が、何気なく警察と自衛隊をすり替え「治安出動」という名の「実質的な戒厳令」を敷いても、日本人は何事も無かったかのように満員電車に乗って出勤し、完全武装した兵士や戦車の横を、無表情で通り過ぎていく。
国がやることだから自分には関係ない。それより自分の生活が大事なの。だからそれ以外はどうでもいいの。ゴチャゴチャうるさいな。見たくない物は見なければいいじゃん。
もちろんこの状況は柘植の思惑通りであり、これで自分の息の掛かった反乱部隊を、何時でも動かせる状況になった。
こんな事は一番最初に想定しなければならないことなのに、政府は全く考慮せず、思考停止のまま事態を悪化させ、首都東京は「なし崩し的な内乱状態」へ突入してしまう。
もちろん、よくよく考えると「整合性の取れない部分」は多く、色々とアラも多いが、それでもこの作品をリアルに感じるのは、この日本という国が現実と虚構の「区別が付かないままに」何故か国家として成立してしまっているからだろう。
劇中でも言われるが「何もしない国民」が大多数である限り「彼ら」は安泰であり、いつかこの映画に描かれたことが現実化する日が「来る」のかも知れない。