飢餓海峡のレビュー・感想・評価
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迫力があり驚いた。
この物語は真ん中で休憩を撮った方がいい。なぜならば、主人公が変わるからだ。ある意味、違う物語が始まるといってよい。初めて見た時は、それがわからず非常に戸惑った。さらにこの映画は非常に長い。だから、それを予め知っていたほうがよいであろう。そして、この物語は前半の後半あたりから良くなってくる。そして。真ん中辺りからグーっと盛り上がった。
高倉健が良かった。
訴えてくるものがある。
この映画は、戦争の後のもう一つの戦争を描いている。それは、サバイバルという戦争だ。仕事がなく、法律も無いようなもんで、人々は必死に、生きた。朝鮮戦争が始まって軍需需要好景気がくるまでの数年間は、そういう時代だったのだ。海外の人はあまり知らないと思うし。日本人でももう、知ってるのは高齢者だけだ。これは、そういう時代を描いたのだということを知っていないと、凄さが分からないかもしれない。また、この映画一本でそれを知るのは不可能だ。日本には戦後のサバイバルをえがいた映画がいくつもあり、それらの映画を見ることによって、戦後がどういう時代だったか分かり、そしてこの映画の凄さが分かるのである。戦後のサバイバルを描いた映画で有名なのは。「仁義なき戦い」シリーズ。黒澤明の「酔いどれ天使」 鈴木清順番「肉体の門」「拳銃は俺のパスポート」などがある
人の愛憎と業渦巻く飢餓海峡
“日本のタイタニック”と言われる1954年に起きた洞爺丸号沈没事件に着想を得た水上勉の小説を内田吐夢監督が映画化した1965年の作品。
日本映画オールタイムベストが選出される時、必ずと言っていいほど挙がる日本映画史上に残る名作中の名作であり、自分も好きでもう何度も見ている。
戦後の混乱時期、津軽海峡を巨大台風が襲い、青函連絡船が沈没、多くの犠牲者を出した。だが、犠牲者の数が乗客名簿より2名多かった。実は、混乱の最中、殺人事件が起きていた。北海道の老刑事・弓坂は執念で事件を追うも、迷宮入りになってしまう。が、10年後、東京である殺人事件が起き、二つの事件が結び付く…。
大まかに三幕に分けられる。
前半は、事の発端である放火事件~沈没事故~犯人とある娼婦の出会い。後々の伏線になる。
中盤は、その娼婦・八重の顛末。彼女の存在が二つの事件を結び付ける事になる。
後半は、事件の解決と真実。
元は推理小説で映画もミステリーとしての醍醐味も充分だが、最初から犯人は分かっている。
三國連太郎演じる犬飼だ。
どん底から這い上がったこの男が背負った罪、事件によって人生を壊されながらも事件を追う弓坂、犬飼を愛した為に哀しき末路を辿る八重…数奇な運命、人の善悪を重層的に描く。
警察の捜査は今見ると強引な点もあるし、あんなものが物的証拠になるのかと思う。
一端糸口が見つかったら、スルスルと紐解かれる。
元々、単純な事件であったのだ。
自らボロを出し、さらに罪を重ねる男。
ここで弓坂のクライマックスの台詞が響く。
「私はあなたが憎い。憎みますぞ!」
三國連太郎は自身の出演作で最も好きな作品に本作を挙げている。それも頷ける名演、そして三國連太郎は真の名優だ。
弓坂役の伴淳三郎は喜劇役者として知られるが、本作では哀愁を滲ませる絶品の演技。この人の存在で、映画にメリハリが付いた。
八重役の左幸子は数少ない海外映画祭受賞経験のある名女優。キチ○イ的でもあり一途に男を想い続ける哀しき女を熱演。
東京の刑事役で高倉健も出演。先の三人の名演を前に、まるで高倉健が若造に見える。
“日本人全体を覆う飢餓状況を象徴”した映像処理も印象的。
本作製作~完成後にも起きた監督と会社の“事件”も有名。
名作には必ず逸話が残る。
全てはあの海峡で始まり、また終焉も。
人の愛憎と業渦巻く飢餓海峡。
三國連太郎と左幸子と伴淳三郎
昔の映画って役者が作ってるなと唸らせる作品。高倉健がその他大勢になってしまうほど3人が世界を作ってる。
ストーリーとしては、実際にあった岩内大火と洞爺丸事故が出てくるほか、当時売春が違法になった事が絡むなど、より現実味を帯びる構成が素晴らしかった。
骨太だが、緩い戦後昭和
人の弱さ、社会の矛盾、人間の本質に迫る芝居が怖い
「飢餓海峡」は今から50年以上前に連載された人気小説だ。この作品の映画化は65年作である。その後この作品は、TVで68年78年88年と10年毎に3度もドラマ化されている。そして、舞台劇にも2度もなっているようだ。
しかし、映画化は65作の本作1度だけと言う事を考えると、いかに、この作品が良作で、この作品を越える作品を制作する事が出来る人達が、その後現れる事が無かったと言う事だと思う。
今観ても見応えの有る、大変に面白い作品である事は確かだ。
しかし、原作のこの小説は、サスペンスとしてのトリック性について無理があったと、その後指摘されていた様だ。
だが、ドラマとして多少の設定の不自然さが、ミステリーや、サスペンスものには付きもので、その点を指摘しても余り意味は無いと私はこの作品を観て感じた。
むしろ、この作品に出演した、強盗殺人容疑者犬飼という男を演じた三国連太郎の芝居の巧い事には圧倒される。改めて俳優、三国連太郎の偉大さを感じ、心から冥福を祈りたい。
そして彼を追う執念の老刑事、弓坂刑事を演じた伴淳三郎の素晴らしい芝居は、その後の刑事ドラマでの、刑事役の理想の原型になる。その渋い演技は今でも観ものの一つです。
そして、その2人の脇を固めるのが、今や邦画界の重鎮の一人である高倉健さん、そして昭和の名母役として名高い、沢村貞子など豪華なキャスティングだ。
この映画を観ていると、高倉健さんが演じる味村刑事は、まるで子供の様に見えてしまうくらいだ。
この作品を監督していた内田吐夢は、「大菩薩峠」「宮本武蔵」などの時代劇を晩年監督した事でも有名な名監督だ。
昭和初期の御姫様女優として、名高い入江たか子と言う、邦画界きっての大スターをスカウトしたのも、この内田監督だと言う。
3時間とこの作品は、かなりの長尺であるけれども、私は全然長さを感じる事も無く、あっと言う間に観終えてしまった。
それは、三国連太郎演じる樽見京一郎というキャラクター性と、彼を想い続けるヒロイン杉戸八重を演じた、左幸子がまた、素晴らしく巧い役者である事がこの映画を飽きさせずに観客の目を惹きつける所以だ。左幸子は、社会派大監督である今村昌平監督の代表作「にっぽん昆虫記」で日本人として初めての主演女優賞をベルリン国際映画祭に於いて受賞するなど、国際的にも評価を得る我が国の昭和期の演技派女優だ。
水上勉のベストセラー小説が原作であり、この昭和期に日本の映画界・演劇界を牽引する程の実力派俳優を多数キャスティングして生れた本作は、邦画の歴史に残る名作として、是非観ておきたい作品だ。今、再びこの作品をリメイクするとしたら、一体どんな俳優を選ぶ事が出来るのかと考える、想い浮かばないのが現状だ。
平成時代に入ってからは、こう言う芝居で魅せる社会派ドラマが無くなって、それに代わり、コメディー色が濃いが、今一度こう言う作品が出来る事を期待したい。
貧しさについて考えさせられる映画。
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