「怪獣どうするんでしょう。 前作の弱点は補われているものの、リアル感とファンタジー性の齟齬は変わらず…。」ガメラ2 レギオン襲来 たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
怪獣どうするんでしょう。 前作の弱点は補われているものの、リアル感とファンタジー性の齟齬は変わらず…。
人類を守護する巨大生物「ガメラ」の戦いを描く怪獣映画『ガメラ』シリーズを、設定も新たに描き直した平成『ガメラ』3部作の第2作。
北海道に隕石が落下。調査の為、自衛官の渡良瀬が現地に向かうが、何故か落下物を発見する事は出来なかった。
隕石落下から5日目。札幌の地下鉄を未確認生物の大群が襲撃、同時にすすきののデパートに巨大な植物が出現する。さらに、それらに引きつけられる様にガメラが再び人類の前に姿を現す…。
自衛官のひとりを演じるのは、当時は北海道のローカルタレントだった安田顕。
地下鉄の乗客を演じるのは、安田と同様に北海道でローカルタレントとして活動していた大泉洋。
前作から1年4ヶ月という非常に短いスパンで制作された本作(もっとも怪獣特撮においてこのくらいのショートスパンは通常営業な訳だが…)。メインキャストこそ交代となったが、監督・金子修介、特技監督・樋口真嗣、脚本・伊藤和典、怪獣デザイン・前田真宏、特撮美術・三池敏夫など、主要スタッフはそのまま引き継がれている。
本シリーズは元々3部作の構想では無かったらしいので、実際の制作期間はかなり短かったはず。その時間的制約があったにも拘らず、本作の画に手抜かりは一切見られない。それどころか、大挙して襲い掛かるチビレギオン、どうやって操演しているのかわからない程複雑なデザインをした親レギオン、『ウルトラQ』(1966)のマンモスフラワーの様な草体と、バラエティに富む登場怪獣の造詣は前作を遥かに上回る手の込みようである。
火薬の量もアップしている印象を受けた。とにかく景気良く爆発してくれるので、観客のフラストレーションも一緒に吹っ飛ぶ。特にレギオンのビームで陸自の戦車が爆破されるシーンの爆炎は素晴らしいっ🔥『ナウシカ』(1984)の巨神兵が王蟲を焼き払うシーンを彷彿とさせる、まさに現実離れした鬼気迫る爆発でした。
脚本面でも、前作の経験を活かしたブラッシュアップが見て取れる。
前作では「ギャオスよりもガメラの方が人殺してねーか?」という疑問が頭をよぎったが、今回ガメラが上陸するのは住民の避難が終了した後なので、人的被害は無し。これによりガメラのヒーロー性が担保されています。
そして今回、特に変化が著しいと思ったのは自衛隊の描き方。
怪獣映画では噛ませ犬として扱われがちの自衛隊。前作でも、ギャオスを取り逃すわガメラを攻撃するわ東京タワーをへし折るわ、碌な見せ場がなかった。しかし、本作の自衛隊は特撮の歴史上No.1なんじゃないかという程の活躍をみせてくれる。
自衛隊全面協力の下制作されているだけあり、兵器や装備は実在のものが使用されており、むせかえるほどの漢のロマンが蔓延している。地下鉄での殲滅戦から足利市での防衛戦まで、プロフェッショナルな男たちが命を張ってレギオンに立ち向かう。これにはどうしたって血潮が熱くたぎります❤️🔥
これが純粋な戦争映画だとプロパガンダっぽくなってしまう事だろうが、怪獣映画ならそういう現実の政治思想とは切り離して軍人のカッコ良さを描ける。ジャンル映画というのは実に便利なフォーマットなのです。
「水曜どうでしょう」(1996-)放送開始前の大泉くん、ミスター、onちゃんがエキストラとして参加していたり、解剖学者が養老孟司さんだったり、「ズームイン‼︎」(1979-2001)の福留さんが出てきたり、両津勘吉がNTTの職員やってたり、挙げ句の果てには官房長官として徳間康快が出演していたりと、奇妙なキャスティングも見どころ。「ウォーリーをさがせ!」的な楽しみ方もありかも知れません。
今作は怪獣シミュレーションというよりほとんど戦争シミュレーション。90年代当時より、世界情勢がキナ臭くなってきた現代の方が、よりこの作品を身近なものとして鑑賞する事が出来るだろう。
ただ、前作を凌ぐクオリティだとは思うのだが、軍事関係の描写がリアルになった分、「子供の味方」的なファンタジー要素との食い合わせの悪さもより際立っている。
子供達の願いがパワーとなってガメラが復活!胸から凄いビームが出てレギオン粉砕!!…この後半の超展開が、あまりにもそれまでのリアルでシリアスなトーンとかけ離れており、一体どういう感情でガメラの勝利を受け止めれば良いかよくわからない。脚本の伊藤さん、後半のファンタジー部分は嫌々書いたんじゃないかな、と邪推してしまうほど温度感に差が表れている。ガメラ=子供の味方、というお約束がシリーズの足を引っ張っている様に思えてならない…。
ちなみに今回、ガメラと心を通わせる少女・浅黄ちゃんの出番は少なめ。流石に演技が棒すぎると制作陣も気付いたのだろうか。なお、浅黄を演じる藤谷文子の演技力は1㎜も成長していない。「ガマラ…」じゃねーんだよ!!伊原剛士と中山忍が消え、彼女だけが続投された事に大人の事情を感じる。偶然浅黄が仙台に遊びに来ていた、という展開の強引さには笑うしかない😅
中山忍に代わりヒロインを務めた水野美妃。雪の降り積もる北海道でもミニスカートで生活する猛者である。「ロケハンをした結果、北海道のOLは雪でもミニスカを履いている事が判明した!」とか監督がインタビューで言ってたけど、絶対水野美紀の美脚を撮りたかっただけだと思う。それ、正解だよ👍
という訳で、この映画の水野美紀は非常に美しく、視覚的には大変満足したのだが、冷静に考えるとなぜ彼女が一権威の様に扱われていたのかはかなり謎。一応前作の中山忍はギャオスに接触した唯一の鳥類学者という事で物語の中心に居ても違和感は無かったのだが、水野美紀はただの科学館の学芸員さんなんですよね。相棒の吹越満もいつの間にか中心人物になっていたけどそもそもはNTTに勤務する普通のサラリーマンだし、正直今回のパーティ編成はかなり無理やり感があるぞ。
このシリーズ、力の入っているところはめちゃくちゃ凄いことになっている一方、作り手の興味がないところは結構スカスカという特徴がある事が今回の鑑賞で判明した。まぁ1から10まで全力投球するわけにもいかんのだからその姿勢は正しいのだが、出来れば全編にわたって自衛隊vsレギオンを観ていたかった。こんなん言ったら怒られるかもしれんが、ぶっちゃけガメラ出てこなくても良いかも…。
常々『ガメラ』の新作が観たいと思っていたが、実は自分が観たいのは『渡良瀬』シリーズの新作だったのかも知れない。
このレビュー、共感度、かなり高いです! ああ、自衛隊と怪獣の闘いを、一生観ていたい‼️
俺は映画に飲み込まれるタイプなので、後半の違和感(子ども騙し感)にもきづかぬままですが(笑)
藤谷さん(文子)の変わらぬ平坦ぶりに感動。たなかなかなかさんは前作レビューのコメントで「中山さんも藤谷さんも "この頃はまだ" 大根」とコメントくださいましたが、その後脱したでしょうか?
共感ありがとうございます。
この位なら浅黄ショックは小さいと思ったんでしょうか。
レギオンはアカミミガメと言うより、セアカゴケグモかヒアリなので共存の可能性は0!ですね。


