劇場公開日 1960年12月11日

「ウルトラQ の原形は本作で完成した」ガス人間第一号 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ウルトラQ の原形は本作で完成した

2019年12月23日
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本作の白眉は、なんと言っても、宮内國郎の音楽だろう
東宝マークがでていきなり例の音楽が鳴り渡る
そう、6年後にウルトラQ に使われる音楽だ
もちろんウルトラマンにも使われるそれだ
特撮ファンなら、もうその瞬間でノックアウト間違いなしだ
劇中にもウルトラQ で使われる事になる劇伴が数多く使用される
爆発状のギザギザのワイプアウト、ワイプインもウルトラQ に引き継がれていくスタイルだ

透明人間からはじまった怪人のシリーズは本作にてようやく完成をみたといえよう
独特の雰囲気、世界観が確立されたのだ
事実、怪人映画シリーズは本作をもって終了となる
怪人シリーズが復活するのは、今度はテレビを舞台をしてのことになるのだ
本作からウルトラQ に直接バトンが渡されたといえる
つまり、本作はウルトラQ の原形なのだ
その意味で本作は重要な作品といえる

脚本はいろいろ突っ込み所はあれど、液体人間のように雑な物語でなく、伝送人間のように感情移入しづらいものでもない
その反省がよくいきていて、興味が尽きることなく、ぐいぐいラストシーンまで引っ張ってくれるほど極めて面白い

それだけでなく八千草薫の美貌と、彼女の宝塚出身を活かした舞踊をもって、この物語を悲しくも美しい格調高いものに仕上げているのだ

八千草薫29歳、彼女の起用は見事につきる
台詞にあるまま、この世のものでないほどの美しさだ

その美しい彼女が舞い踊り、衣に隠れて顔を上げた時、般若の面をつけている
美の化身が鬼に化身するのだ
情の為に鬼に化す
それは藤千代の行動であり、ガス人間に変わる水野の姿でもあるのだ

左卜膳もまたいい味だった
黒澤明監督のどん底は本作の3年前1957年の作品だった
それを思い出すほど

主人である藤千代と運命を共にする事に一切の疑問を持たない滅びの美学がそこにある

藤千代もまた、水野と抱き合って恍惚の表情を浮かべており、そのまま二人で死に行く陶酔に浸ってそのまま着火しようとするのだが、その刹那、爺のことを思いだす
次の一瞬、彼女は爺が従容として運命を受け入れようとしている佇まいを感じとり、涙が一筋流れてそれで良いのだと言う表情にかわるのだ

この演技は特撮映画にはその後60年を経ても、これを超えるようなものは未だにない
それほどの名演技だった

というか、これが本作を日本映画オールタイムベストのリスト入りにまで押し上げている理由だろう

犯人が煙の如く消え去る訳が無かろうという常套句からここまでの映画に仕上げた腕前は見事につきる
ガス化シーンも液体人間からは格段の進歩を見せている

あき240