「海底軍艦今も沈没せず」海底軍艦 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
海底軍艦今も沈没せず
東宝特撮1963年の作品。
一連の作品群の中でも、特に好きな一作。
特撮SFもしくはSFアドベンチャーと言うより、“空想冒険活劇”と言うに相応しい、その醍醐味がたっぷり!
謎の蒸気人間が頻繁に目撃。
正体は、ムウ帝国工作員。
1万2千年前、大繁栄を誇りながらも、一夜にして太平洋に沈没したムウ帝国が、かつての栄光を取り戻そうと侵略を進めていた。
そんなムウ帝国が恐れるのは、ただ一つ。
旧日本海軍・神宮司大佐が建造したとされる“海底軍艦”の存在だった…。
東宝メカの中でも今も尚不滅の人気を誇る海底軍艦こと“轟天号”。
潜水艦に巨大なドリルを付け、ブリキのおもちゃみたいなデザインながら、海中は勿論空も飛び、カッコ良さは色褪せない。その後派生作品や新デザイン、「ゴジラ FINAL WARS」でも再登場したほど。
海竜マンダとの闘いは名シーンの一つ。
伊福部昭の重厚なマーチ曲がこれまた素晴らしい。
世界を脅かすムウ帝国の侵略の魔の手。
対する事が出来るのは、海底軍艦だけ。
海底軍艦出撃の説得の為、かつての上官は神宮司大佐が居る太平洋上の島に赴くが…。
かつての上官と死んだとされていた部下の再会は、涙を誘うものではなかった。
時が止まったままの神宮司。海底軍艦建造も、大日本帝国再建の為。
「戦争は終わり、世界は変わったんだ」
元上官の説得に対する神宮司の叫びが虚しい。
「だからまた海底軍艦で変えてやります!」
涙を流した人物は居た。
神宮司の娘、真琴。
夢にまで見た父との再会。
しかし…
父は娘との再会に優しい言葉の一つも掛けず、ただの戦争キチ○イ。
「夢で見てた方が幸せでした」
が、父も娘の写真を肌身離さずずっと持っていた。
本当は心底、娘を想っていた。
それを伝えられぬ不器用な父…。
最愛の娘の悲痛な言葉は、父の錆び付いた心を動かす…。
半世紀以上も前の作品なので、いつもながらツッコミ所は多々、好き嫌いも分かれる。
ヒロイン藤山陽子は正統派の美人だが、高島忠夫演じる主人公とのロマンスがいつの間にか進んでてびっくり。
ムウ帝国人も皇帝陛下も、キャラ描写やら設定やらまあチープ。(何で日本人が演じる?…なんてのは愚問)
また、一部では右翼的とも言われているが、決してそうじゃないと思う。
神宮司も自分の考えは間違っていたと改めるし、失われた栄光にしがみつくムウ帝国人や皇帝の姿は悲壮感を駆り立てる。
田中友幸Pのペンネームでもある“神宮司”。東宝特撮の名脇役、田崎潤にとっても最大の当たり役。
掻き立てる冒険とロマンと設定…。
超久し振りに見てもやっぱり面白い、東宝特撮指折りの娯楽活劇だ!