鬼婆のレビュー・感想・評価
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「生」と「性」と「嫉妬」
「生」と「性」と「嫉妬」……人間の本能をあぶり出した新藤兼人監督による傑作!
戦乱の時代、男たちは戦場に駆り出されて、うねるような葦の湿原に住む中年女(乙羽信子)とその嫁=若い女(吉村実子)は落武者狩りをして生活していた。…「生」の描写。
そこに倅の友人の若い男(佐藤慶)が戦場から戻って来て、若い女を誘惑する。それに応える若い女。…「性」の描写。
若い二人の男女の仲に「嫉妬」する中年女が取った行動から、恐ろしい結末が……という若干ホラーっぽい展開を見せる映画。
しかし、新藤兼人のオリジナル脚本であるが、よくこんな物語を描こうと思ったものだ……と感心するしかない。
また、葦の湿原のうねりを捉えたリ、その湿原を疾走する若い女を捉えたり……と撮影も見事!
本当に、日本が世界に誇ってよい傑作の1つを観ることができて嬉しい。
<映倫No.13629>
救いのない世界の救い
・状況に何一つとして救いがなくて驚いた。男手を戦争にとられた中年の女と若い嫁が追い剥ぎで生計を立てるという状況がすごい。また、死体を穴に落としている2人の顔の救いのなさで、どうしようもない世界に心底驚いた。そこへ、戦争から生きて帰ってきた男に嫁を取られたら生活できないからと、どうしたら男のとこへ行かなくなるようにできるか?がまさかこの話の中心になるとは想像もしてなかったので驚いた。嫁は夫がすでに死んでいると聞いて、20歳前だし、姑といてもつまらないしと男の家へ夜な夜な行くのも人間らしくて良かった。また、姑もそれを見て身悶えするシーンがあり何とも苦しいし、男に私を抱いてみないかと迫って断られる所が切ない。そして、ある日般若の面を被った侍が現れるのもすごく良かった。それを穴に落として殺して般若の面で嫁をビビらせるのが面白かったし、あの雰囲気のとこだとめちゃくちゃ怖いだろうなと思った。そして、最終的に姑が面が取れないと弱っているところへ嫁が追い込んでいくシーンも何だか良かった。その前に逢引をしに行く男が殺されているのが、なんとも言えない気持ちになった。
・ラスト、爛れた姑の顔の寄りで終わって、頭から離れない
若き日の吉村実子の野性味溢れるヌードが衝撃的な作品
若き日の野性味溢れる吉村実子のヌードと、その義理の母親役・乙羽信子の上半身ヌードで眠るシーンがある。
同じ女性のヌードでも、若い娘のヌードは美しく、見応えがあるが、(笑)オバサンのヌードを、無理矢理みさせられるのは、苦痛でしかない。
そうか、女性が下半身露出する痴漢のオジサンを嫌悪するのと同じことだ。(笑)
後半、鬼の面を付けた武士が出現する。
鬼の面に纏わるエピソードは、この後、月刊『ガロ』(青林堂)に発表された水木しげる先生の短篇や、楳図かずお先生の少女マンガ「鬼姫」などの作品のアイディアに多大な影響を与えていると考えられる。
映画と漫画の関係を考える上でも重要な作品だと言えるだろう。
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