劇場公開日 1987年12月26日

「【”人間は何のために生きて居るのか。”寅さんが、深遠な命題に対し鮮やかに答えるシーンと額に汗して働く事の大切さを語るシーンが印象的な佳品。名付けた子の母を共に探すロードムービー的要素も佳き作品。】」男はつらいよ 寅次郎物語 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”人間は何のために生きて居るのか。”寅さんが、深遠な命題に対し鮮やかに答えるシーンと額に汗して働く事の大切さを語るシーンが印象的な佳品。名付けた子の母を共に探すロードムービー的要素も佳き作品。】

2024年7月4日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、VOD

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ー 今作は、寅さんシリーズでも哲学的な台詞が多く、且つ寅さんが今までは表面上、博たち職工を揶揄うシーンが多かったが、劇中額に汗して真っ黒になって働く人たちの尊崇さを認める台詞や、自身のテキヤ稼業をそれに比するシーンの数々が印象的な作品である。-

・中盤までは、且つてのテキヤ仲間の遺児、ヒデヨシがとらやに来るシーンから始まり、寅さんがヒデヨシと出奔した母(五月みどり)を探すロードムービー的な物語に魅入られる。
 特に、大阪の宿でヒデヨシが高熱を出した時に、隣の部屋に泊まっていたタカコ(秋吉久美子)が、懸命に看病するシーンは沁みる。
 夜中に医者(松村達雄)を呼び、医者の的確な処置により、明け方ヒデヨシの熱が下がり、峠を越えた事を喜びながら、タカコが言った言葉。”アタシにも、子供がいたのよ。これくらいの。おろしちゃったけど・・。”
 タカコのどこか影がある風情を、秋吉さんが見事に演じている。

・終盤、漸くヒデヨシの母を見つけた寅さん。
 ヒデヨシが”一緒にオジサンと行く。”と言いながらを舟に乗って柴又に帰る寅さんを追い掛けるシーンは切ない。
 だが、寅さんはヒデヨシのために敢えて別れを告げたのである。ヒデヨシに言った台詞が何とも深い。寅さんはテキヤ稼業の儚さ、額に汗して働く尊崇さをヒデヨシに告げるのである。

<今作は、全編に亙り、哀調を帯びたトーンで綴られて行く。
 そして、ヒデヨシが母と寅さんを送ってくれた船長と3人で仲良さそうに歩く姿を、テキヤ稼業の仲間達と、物陰からコッソリと見ながら言う言葉。
 寅さんも、50代半ばを越えて人生の意味を知って来たのだな、劇中の数々の台詞から分かる作品である。
 今作でも、山田洋次監督の脚本が冴えわたり、名言が数々詰まっている作品なのである。>

NOBU