劇場公開日 1987年8月15日

「【”三船敏郎さんの圧倒的な存在感に劣らぬ渥美清さんの粋な姿、台詞。”今作は、知床の大自然の中、淡路恵子さん演じる女性に想いを告げる三船さん演じる無骨な獣医師の姿に痺れる逸品である。】」男はつらいよ 知床慕情 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【”三船敏郎さんの圧倒的な存在感に劣らぬ渥美清さんの粋な姿、台詞。”今作は、知床の大自然の中、淡路恵子さん演じる女性に想いを告げる三船さん演じる無骨な獣医師の姿に痺れる逸品である。】

2024年7月3日
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ー 今作は三船敏郎さん、淡路恵子さん、そして聡明さを漂わせる美しき竹下景子さんと言う夢の様なキャスティングに加え、前作、前前作と出番が少なかった寅さんが、夏の美しい北海道の中で、彼らが演じる人物達や北海道で生きる人たちに慕われ、交流する姿がとても良い作品である。ー

  ・三船さん演じる獣医師の元に、駆け落ち同然で東京に出て行った竹下景子さん演じる娘りん子が帰って来る。
  獣医師はその電話を受けて、渋面だが白いシャツを箪笥から引っ張り出し、部屋を掃除するのである。彼が、確執ある娘に対しても、礼を尽くす男という事が直ぐに分かるのである。

  ・偶々、獣医師に引き留められ、家にいた寅さんが”誰が来るのか?”と問うと、獣医師は”娘だ!”と短く答える。その時の寅さんの何とも言えぬ優しい表情。渥美さんって、ヤッパリ凄い役者である。

  ・三船さんと淡路さんと竹下さんにあてがきしたのではないかと思われる夫々が演じるキャラクター設定も申し分が無い。

  ■そして、今作のクライマックスは彼らとその仲間が、北海道の大草原の中バーベキューをするシーンであろう。
  そこで、獣医師は新潟に戻ると告げる獣医師の事を想っていた淡路さん演じる居酒屋を営む気風の良い女性に対し反対し、寅さんが理由をはっきりと言え!と問うた際に”俺が、俺が惚れているからだ!”と言う姿であろう。

  ・好きな女に対しては、如何に無骨でも周りに誰がいようと思いを告げる獣医師の心の強さを持つ漢を見事に三船さんが演じているし、寅さんの想いが二人を結び付けた名シーンである。

  ・そんな父を見て、寅さんの事を好いていたりん子が想いを更に寄せるのだが、相変わらず寅さんは、自分の事になるとカラッキシである。
  そのシーンが描かれないのも、いつものパターンと違って良いのである。

<りん子がとらやの人達に言う、寅さんの魅力を伝える言葉がとても良い。
 ”自由な生き方をしている人。”
 ”人生には、もっと大切な事があると思わせてくれる人。”
 寅さんは、社会的には、ナカナカ受け入れられないのかも知れないが、このような台詞を女性から言われる男は、矢張り魅力的なのである。
 寅さんが、北海道の厳しき自然の中で生きる人たちに暖かく迎えられるのも、良く分かるのである。>

NOBU