劇場公開日 1952年10月1日

「兎と亀や浦島太郎のようなおとぎ話」お茶漬の味 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0兎と亀や浦島太郎のようなおとぎ話

2019年12月5日
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鑑賞方法:DVD/BD

なかなかに身につまされた方も多いのではないでしょうか?
夫婦も長くやってますとあるあるネタのオンパレードかと思います
恋愛結婚でも見合い結婚でも同じです

ホテルのランチブッフエは言うに及ばず、やれイタリアン、やれフレンチだ、お昼時のおしゃれなレストランはマダムの皆さんでどこも一杯です
観光地にはマダムのグループも良く見かけます
現代では本作のように遊びまわっているマダムの姿はもはや上流の奥様方だけの世界ではなくて一般的なことです

それも亭主の甲斐性のうち
まあそう割り切らないと夫婦なんて持ちゃしません

クライマックスのお茶漬けシーンで夫人の変化を性急気味に監督が描いているのも、いまならその意味が分かります
自分もそれなりの歳になったからこそ、本当の意味合いが分かるようになりました
若い時には読み解けなかったです

つまり、おとぎ話のような美しいファンタジーなのです
それを描いているのです
だから、兎と亀とか、浦島太郎とか引き合いにするのです
めでたし、めでたし
こういうことだったのです

節子と初々しい鶴田浩二が演じているノン君は、ラストシーンでこれから恋を育んでいくようです
パチンコ屋、ラーメン屋、果ては競輪まで
二人は価値観をすりあわせているようです
それが見合いより恋愛結婚が優れているように思えるかもしれません
ノン君は夫人の請け売りのような都合の良いことをいいます
でもそんなことじゃあないんです
男と女の価値観の違いなのです
育ちによる価値観の差違なんて小さいことなのです
お茶漬けをするかしないかという価値観ではなく、素のままのだらしのない本当の自分の姿を互いにさらけ出しあっても、それでもなお二人で暮らしていけるのか?
それを許せるのか、許せないのかという価値観なのです
それを語るラストシーンだったと思いました
若い二人には、まだまだ難しいようです

男女の永遠の課題なのです

あき240