狼の紋章
劇場公開日:1973年9月1日
解説
驚くべき強靭な肉体を持ちながらも、どこか暗い虚無の影を宿した少年に次々と怪奇な事件が巻き起こる。“人狼伝説”に材を得て書き下した平井和正のSF小説の映画化。脚本は「ときめき」の石森史郎、と「ゴジラ対メガロ」の福田純、監督は脚本も執筆している「戦争を知らない子供たち」の松本正志、撮影は上田正治がそれぞれ担当。
1973年製作/84分/日本
配給:東宝
劇場公開日:1973年9月1日
ストーリー
青鹿晶子は博徳学園高校の英語教師である。彼女が、最初にその少年に出会ったのは夜の新宿でだった。少年はチンピラに恐喝されながらも無抵抗で、ついにはナイフで腹を刺されてしまった。青鹿は悲鳴をあげ、その場に気を失った。パトカーが到着し、青鹿が気がついた時、少年の姿はなく、血のついたナイフだけがポツンと捨ててあった。三日後、青鹿の学校にその少年が転校して来た。少年・犬神明を医務室に連れていった青鹿は彼のシャツを脱がしたが、あの夜の傷跡は少しも見当らなかった。青鹿のクラスには、暴力団東明会の最高幹部を父に持つ羽黒獰が引きいる不良グループがある。羽黒の一の乾分・黒田たちは早速、犬神に凄絶なリンチを加えるが、彼は無抵抗のままだった。ある日、青鹿は犬神のマンションを尋ねた。真っ暗な部屋の中に輝く緑色の眼。そこには狼に変貌した犬神がいた。だが、ビックリ玩具の狼マスクだ、と言われた青鹿は、そのマスクをはずそうと犬神ともみ合うが、彼の肉体が燃え立つのに気ずき、あわてて部屋を出た。帰り道の青鹿を二人組の暴漢が襲った。その時、壮絶な咆哮とともに野獣が闇に躍り、彼女を救った。そして、彼女は遠のく意識の中で、それが犬神だったと知った。数日後、青鹿を神明と名乗るルポライターが訪れ、犬神の事をしつこく問い正した。一方、学園内で、委員長の木村紀子を先頭に、暴力追放の生徒集会が行われた。黒田たちは、集会に殴り込み、黒田が紀子を襲おうとした瞬間、犬神が紀子を救い、黒田は自分のナイフを自分の腹に突き刺してしまった。月は欠け、新月の頃となった。狼人間は新月の時は、その超能力が薄れてしまう。それに気ずいた羽黒は、青鹿を人質にして、犬神を東明会本部におびき出した。犬神が密室に監禁されている青鹿を救おうとした時、日本刀を持った羽黒が二人の前に立ちはだかった。二閃、三閃、青い稲妻が走る度に、犬神の血しぶきが上がり、止どめとばかり、羽黒は犬神の背後から刀を突き刺した。その瞬間、刀身を羽黒の手からもぎ取り、ゆっくりと振り向いた犬神の顔は狼に変身していた。次の瞬間、恐ろしい咆哮とともに、その野獣は猛然と羽黒に激突、彼の胸を貫ぬいていた刀で羽黒を突き刺した……。今は人間の姿に戻った犬神の身体を両腕に抱いた青鹿は、夜空に燃え上がる東明会本部を後にした。