王立宇宙軍 オネアミスの翼のレビュー・感想・評価
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おそらく山賀の最高傑作。
話は若者がロケットを飛ばすというだけのストーリー。 直線的な話だが、この時代にあってはありえない位のクオリティで作られたと言っていいと思う。 庵野のやったロケットが飛ぶシーンに700枚だか使ったというのも素晴らしいクオリティだ。 そして今思えば、これはガイナックスの誕生劇なのだと感じる。 アニメを描くという事のめんどくささ、難しさ、そしてそれが完成するというその一部始終をロケットを飛ばすという形でメタ的に描いた。 途中で出てくるグノーム博士という人物は、宮崎駿だという話があるが、実際のところはよくわからない。 将軍は宮崎駿に見えないこともない。 色々考えると面白い作品だと思う。 最初に何も知らずビデオを買った。 私のアニメーションの入口と言っても過言ではない作品。 1988年ごろだろうか。
主人公の魅力と物語の素晴らしさと映像の良さ
総合:95点
ストーリー: 90
キャスト: 95
演出: 90
ビジュアル: 95
音楽: 80
けっこうネタバレしているので、まだ映画を見ていない人は注意してください。
本来宇宙飛行士といえば、頭脳・体力・精神力の全てが高次元で要求される最優秀中の最優秀隊員、のはず。ところがこの世界で王立宇宙軍といえば、水軍に入れない二流どころが生活のために仕方なく選ぶ職業。一般市民からは「宇宙軍?宇宙人でも攻めてくるのかしら?」と嘲笑の対象でしかなく、制服を着ていることで自分の所属を行きかう人に知られるのも恥ずかしいほどの組織でしかない。
だからそこに集まった隊員が、首脳部以外はどいつもこいつも見事なまでに無気力でその日暮らしで自堕落な人間たち。不平を言いながら仕事をサボり、仕事が終われば町で賭博を楽しんで飲んで騒ぐだけ。有人宇宙船を打ち上げると聞いても、最初から墜落して失敗する以外の結果を想定すらしていなくて、「目障りにならないところまでは飛んでいってくれないだろうな」などという、その組織の状態を端的に表す素晴らしい名科白が登場する。彼らは既に仲間を前回の打ち上げの事故で失い、すっかり目標を見失ってその日暮らしをしている。よくもこれだけ駄目組織に駄目人間だけを選んで揃えられたなというのがなんとも可笑しい。
主人公シロツグもそのような隊員の一人でしかなかった。だが偶然知り合った疑うことを知らない女の前で、何か一生懸命やっている男を演じて格好付けたいというだけというくだらないきっかけで物語は動きはじめる。だがこんなにくだらない理由でも、きっかけはどうあれ取り組むのはとてつもなく大きな目標。だからそれにむかって本気で動き出す。そして宇宙に行く以上はやはり高い能力が必要とされ、駄目人間なりにだんだんとみんなと一緒に本気になっていく姿が実に頼もしい。彼はもう落ちこぼれの無気力な隊員ではない。
表面上は相変わらずの普段の生活や女相手の宇宙軍の隊員としての話があるが、その一方で裏では政治的な事情や国際的な陰謀が動いている。それがそれまでシロツグをはじめとする個人的の話でしかなった物語に大きな影響を与えていく。やはり宇宙船の打ち上げというのは、巨大な費用やたくさんの思惑の絡んだ国家計画なのだ。それが個人の話を邪魔することなく、自然に上手に本筋に絡んでいく脚本も見事である。
数々の困難を乗り越え、遂に発射の日が迫る。しかし陰謀による情報操作のため隣国が侵攻してきて発射台の近くで空中戦が始まって、宇宙船発射には危険極まりない状況の中で、「命を懸けてまでやるほどのことではない」と諦めの雰囲気が漂う。だが「これは教科書に載るくらいすごいことなんだ、俺は飛ぶんだ、飛ぶんだ」と叫び続けるシロツグの、命を懸けて大きなことを成し遂げようとする意気込みが全ての宇宙軍の関係者にも視聴者にも重く響いてくる。いったいどうなるのか。宇宙船打ち上げの決断はされるのか中止になるのか、打ち上げならば失敗するのか、それとも敵国に撃ち落されるのか。思わず手に汗握る緊迫の瞬間だった。
そして発射台近くの戦闘を置き去りにして地球を離れて、国家の思惑・自分の生活や見栄などの全てのしがらみから解放され、人類として初めて宇宙から地球の姿を見て宇宙の神秘に触れた彼の、それまで用意していた取るに足らない原稿など思い出すことすらなく、心の底から自然に出てきた言葉がしんみりと染みた。また最後の、子供の泣き声、鍛冶屋の鉄を打つ音、そのような一見関係のない色々な事柄が流れる場面は、人類の歴史と営みを象徴し、新たな世界が切り開かれたことを示唆しているように思えた。
登場人物もいい。一人で有人宇宙船に情熱を燃やして組織で浮いている将軍、シロツグと接点を持つものの、元々違う価値観の世界に生きる女性リイクニ、シロツグのやる気の無い同僚たちがみんないい味だしている。そしてもちろん、屈折しているけれども、紆余曲折を経て徐々に変わっていく主人公シロツグが非常に魅力的。彼の声を担当する森本レオの喋りが本当にはまり役で素晴らしく、彼の存在感を一層高めている。
必見なものの一つは映像の良さ。風景など一つ一つの映像がかなり絵画的に綺麗に描かれている。また美しさだけでなく動画の動きも素晴らしい。特に飛行機の動画映像には相当にこだわっていて、かなり事前調査をしているのが見て取れる。重力の訓練のために海軍の飛行機に乗り、初めて大空を体験して雲の切れ間から青空が覗く爽快感。空中戦でGの影響を受けて曲線を描きながら飛んでいく銃弾や戦闘機。打ち落とされて慣性エネルギーのために水面に接触して吹き飛んでばらばらになっていく描写。相当に質感と現実感が高くて、従来のアニメとは一線を画す。
落ちこぼれ軍団の青春群像劇
地球と似たような環境の星にある架空の国「オネアミス王国」。
その王国には【王立宇宙軍】という落ちこぼれ集団がありました。
その隊員の一人であるシロツグは、ある日、街中で神の教えを説く少女リイクニと出会います。この出会いによって、シロツグの中で変化が起こり、それが周りの人々に広がっていき・・・最後には国家をも巻き込んだ大事件へと発展していきます。
物語の舞台は架空の世界ではあるんですが、凄くリアリティがあって設定が本当に細かいです。
そして、描かれる物語はシロツグをはじめとする王立宇宙軍のメンバー達の青春群像劇。
シロツグとリイクニの関係は、最後まですれ違ったままで結末を迎えます。でも、シロツグは人類で初めて宇宙に行くことで、何か大切な物を見つけたんだと思います。
クライマックスのロケット打ち上げの場面以降の展開と映像は本当に素晴らしいです。
ただのアニメの枠に収まらない、名作だと思います。
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