「戦争が文明を破壊する」王立宇宙軍 オネアミスの翼 tktkさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争が文明を破壊する
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1987年劇場公開当時、映画館で鑑賞しクオリティの高さとメッセージの重さに圧倒された記憶。34年後にDVDで再視聴し、カイデン将軍は偉大なキャラだったと改めて思う。
この作品世界での「人類初の人工衛星」はリアルの公共文化事業。しかし国家の最優先は国防と一部の特権階級層の利権。マスメディアの誘導する世論は「公共事業より貧困支援を優先すべきだ」と、事業の担い手(シロツグら宇宙軍)をバッシングする。本来、マスメディアと世論は特権階級層を糾弾すべきだが、無責任に騒ぎ立てるだけで「自らの行いを改めようとはしない」。
人は愚かで、歴史は繰り返される。
けれども「どうか、そんな人類の行く先に暗闇を置かないで下さい」と自らの人生を振り返って静かに祈る事は出来る。
元虐待児のマナが徐々にシロツグと距離を縮めていくのに対し、リイクニは最初に出逢った時の「敬虔な求道者」から「日々の糧を得る生活者」へとトーンダウンしている。
彼女が正論を言えたのは、叔母の遺産頼りでお金の苦労を知らなかったからだと思う。シロツグが彼女を襲ったのは(不意打ちを喰らったが)「君も世間の人々と同じ、穢れた存在だろ?自分だけが清らかに生きられると思うな、憤ってみせろ!」と挑発したのではないかと。
しかし彼女の頑なな健気さは、シロツグを軽蔑するに至らなかった。
信頼関係や文明は一足飛びに好転しない。
それを力ずくで得ようとするから争いが起きるのだろう。
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