劇場公開日 2022年10月28日

「王立宇宙軍とはガイナックスのこと そして思い出のダイコン3」王立宇宙軍 オネアミスの翼 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0王立宇宙軍とはガイナックスのこと そして思い出のダイコン3

2019年12月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

Daicon 3 も今は昔
SF小説ファンの大会が日本各地の都市で持ち回り開催されていて1981年は大阪で3回目の開催であった
森之宮ピロティホールが会場だった
多くのSF小説ファンサークルがセッションをしたり、今のコミケの様に同人誌を販売していた
漫画やイラストのあるものは当時は殆ど無かった
だからその大ホールでのオープニングセレモニーに先立って上映された短編アニメフィルムは衝撃的であった
そのクォリティ、その映像センスは、その当時のプロの作品をも凌ぐものだったからだ
なによりテイストがオタクそのものだった
オタクという言葉すら生まれてはいない時代だったのだが、今とはニュアンスの異なる意味あいで概念は生まれようとしていたとは思う

そのアニメフィルムを制作したのは、当時大学生で後にガイナックスとなる人達だった

ダイコン3のことは何もかも忘れ果ててしまったが、その通称ダイコンフィルムの幾つかのシーンは未だに目に焼き付いている

彼らは大学卒業後に普通に就職したり、その才能を活かして有名アニメスタジオや特撮ものプロダクションに入らなかった
日本のオタク文化にとってそれは幸運なことだった
既存のスタジオでも彼らの能力はもちろん発揮されただろう
だが後の爆発的な展開は彼らがオリジナルのままプロ化したことに理由がある
自分達が心からカッコ良いと思える作画を妥協せず描く、そして気持ち良いと思える動きをさせる
そのプリミティブな動機が、既存のスタジオでは希薄化されていたはずだ

大学卒業後に彼らが始めたのはコミケの同人サークルの常設店のような同人誌やグッズの販売をするゼネラルプロダクツという店だった
大阪の桃谷駅の近くの住宅街の中の2階にあり、ファミレスほどの結構広い店であった

ウルトラホークやマクロスのヴァルキリーの航空情報専門誌を模して、各機体の開発過程を解説した冊子を買い求めたものだ
フライトエンベロープのグラフまであり買わずにはいられない程のものだった

その間にもマニアックな映像作品は幾つか製作され、それがいつしかガイナックスのフレームとなり、気がつけば映画となっていたのだ

本作はその彼らがガイナックスを名乗り、2時間もの作品として既存のスタジオに対して突きつけた挑戦状なのだと思う

映像のクオリティはとんでもないものであることは誰でも一目でわかるだろう

ただ、それをもって何をなにを表現しようとしたかったのか
そこだけはこれからなのだ

彼らこそ王立宇宙軍そのものだ
王立という言葉にこそ彼らのプライドが秘められている
今彼らの宇宙戦艦は宇宙へリフトオフしたばかりなのだ

あき240