歌麿をめぐる五人の女(1946)
劇場公開日:1946年12月17日
解説
「女性の勝利」に次ぐ溝口健二の監督作品で、原作は邦枝完二、脚本は依田義賢撮影は「待ちぼうけの女」の三木滋人。
1946年製作/74分/日本
配給:松竹
劇場公開日:1946年12月17日
ストーリー
幕府の御用絵師狩野瑩川院の門弟小出勢之助は許婚の雪江を連れて版画屋に立ち寄り、歌麿の自賛入りの絵を見て、傲慢も甚だしいと立腹し、歌麿に対して絵の勝負を申し込むが、歌麿の力倆に頭を下げ、千石の扶持と刀を放棄して民衆画家歌麿の門下に降りることを誓った。浅草観音前の水茶屋難波屋の娘おきたは歌麿に描いてもらった一枚の絵のおかげで、その名がたちまち江戸中に知れ渡った。彼女は紙問屋、仙香堂の息子庄三郎に対して激しい恋慕の情を抱いていた。ちょうど勢之助と歌麿が家で談じ合っている矢先、庄三郎が多賀袖花魁と駈落ちして行方不明になったという事が瓦版で報道される。勝気で独占欲の強いおきたはくやしがり、勢之助を追いかけて来た雪江に対しても嫉妬して邪魔をはじめ勢之助と雪江との間を円満解決しようと骨折っている歌麿にあたかも狂った如く邪慳にからみついた。これがため歌麿は憔悴し切って、絵も荒れすさみ昔の面影はすっかりなくなってしまった。その頃松平周防守が自邸の泉水で腰元達を裸体で、水中に飛び込ませて鯉の捕みどり競争をやらせるという噂を聞きこんできた万屋重三郎は十返舎一九、山東京伝と計って歌麿を松平邸に案内させ、水中に飛沫をあげて躍る美女の肉体美を満喫させる。じっとみつめていた歌麿は裸体の美女群中最もふくよかな肉体の持ち主お蘭に目をつけ霊感の湧き上がるままにお蘭をモデルに「美人鯉取りの図」を書き上げたところが以前歌麿の書いた太閤記の絵が、公方様に皮肉を飛ばしたものだという理由で歌麿は奉行所から差紙を受け手錠三十日の刑をいい渡された。民衆画家歌麿に対する幕府の弾圧である。一方、庄三郎と多賀袖が佐原にいることをききこんだおきたは早速現場へかけつけ庄三郎を駕篭にのせて連れ戻るが庄三郎の態度に業を煮やしそれは恋敵への憎悪となって遂に多賀袖を殺してしまう。またお蘭をモデルに画筆を握っていた勢之助は、お蘭の肉体に魅せられて二人は恋に陥り、小田原へ駈落ちする。雪江は歌麿の弟子竹麿に励まされながら小田原まで辿りつくが、勢之助とお蘭の抱き合っている姿を見て淋しく江戸へ帰った。今日は歌麿がお上の刑も解け、手錠のとかれる日である。門弟達の歓びの中に傷心の雪江を胸の中にしっかり抱きしめる。大文字屋の新造おしんと竹麿の結ばれる日も近い。