「【”負の暗示”幼い頃は村一番の秀才と謳われた青年が結核により一人前の男として認められず、女達に馬鹿にされた事で復讐を果たすエロティック・ホラー。】」丑三つの村 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”負の暗示”幼い頃は村一番の秀才と謳われた青年が結核により一人前の男として認められず、女達に馬鹿にされた事で復讐を果たすエロティック・ホラー。】
ー ご存じの通り、今作は1938年に岡山の寒村で起きた”津山30人殺し事件”が基になっている。-
■昭和13年。村一番の秀才と評判の犬丸継男(古尾谷雅人)は早く国のために戦いたいと思っていたが、兵役検査で結核と診断される。
村の中で、常習化していた”夜這い”で、継男と次々に関係を持って行く夫の有る女たち。
だが、病気を知った村人たちはそれまでの態度を一変させ、継男に冷たくあたり、幼馴染みで思いを寄せていたやすよ(田中美佐子)は、継男と付きあっていたことが原因で離縁されてしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・私が、”津山30人殺し事件”を知ったのは、女性漫画家山岸凉子氏の「負の暗示」を読んだ時である。
ご存じの通り、山岸凉子氏は大作「日出処の天子」や、古代神話をモチーフにした諸作品や古代エジプトを舞台にした諸作品で有名な少女漫画の大家である。
だが、その一方、物凄く怖いトラウマ級の作品も多数発表している。
・この作品と、山岸氏の「負の暗示」との決定的な違いは、この作品では犬丸継男が小さな村の中で、多少成績が良かったためにちやほやされ、増長していく所がキチンと描かれていない。起承転結の“起”の描き方が薄いのである。
更に、彼が村人たちに馬鹿にされ、心を屈託させていく様の描写が、物凄いのである。
・その一方この作品では、エロティックなシーンが序盤からドンドン描かれている。これは、私の推量なのだが、この作品の制作をした奥山和由氏の存在があると思う。
氏は、当時ヒットメーカーであったが、その独断振り、客を呼ぶためには手段を選ばない手法により松竹の専務取締役の座を追われている。
氏が上記の様な傾向を露わにしたのは「RANPO」だったと記憶する。
・この作品は確かに大量殺人を犯した継男を演じた若き古尾谷雅人氏の演技は買う。だが、実際には序盤で継男と関係を持った数名の女達は彼の異常さを事前に察し、凶行の前に村を逃げ出しているのである。
この作品は、ラストの残虐シーンのみ力を入れて描かれ、継雄が何故にあのような凶行に走ったのかが、キチンと描かれていないのである。
<可なり、キビシイ事を書いたが、若き古尾谷雅人氏の演技で評点は3.0とする。(だって、あの役は流石にやりたくないでしょう。)
本当の”津山30人殺し事件”の怖さを体験したければ、山岸凉子氏の「負の暗示」を読むことをお勧めする。怖さは今作の十倍以上であるからである。>
■個人的、山岸凉子氏の恐ろしき作品ベスト3
1.「蛭子」
2.「夜叉御前」
3.「鬼来迎」
どれも、トラウマ級の怖さですよ。