雨月物語のレビュー・感想・評価
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男は一旦の過ちで済むが、女はそうはいかない。
・『何だ。瀬戸物か!』って?『曜変天目茶碗!』
・夢殿の横でロケしているね。
・途中、京マチ子さんが踊る音楽は黒田節の編曲だと思う。
・小沢さんが槍で刺し殺す相手は右胸を刺されて絶命している。
・お金に執着しているが、この時期は米だったんじゃないかなぁ?
とまぁ、色々なおかしな部分はあるが、テーマは赤線地帯と同じ。また、戦後の日本社会に対するアンチテーゼだと思う。
最後 『大変な過ちをした。俺の心は歪んでしまった。』
『なにをいいます。さぞ、お疲れでしょう。』
『良い酒だ、戻った、戻った。』
しかし、酒の用意が出来ていて、酒のお燗まで用意されていれば、この時点分かるはずだ。この奥さんはそれを憂いている。つまり、戦後の平和な日本のようだが、まだ空気が読めているとは思えない。ここで終わっていれば、一等賞だったろう。同時に奥さんは着物を繕っているが、その着物が高価な着物と心を揺らしている。
「もう乱暴な兵隊もいません』小津監督も同じ事を語っている。
最後は要らない。とは感じるが、まだ、大和民族は絶滅していない必要あるのかなぁ。
よくよく、考えるとここに登場するすべての女性は不幸だよね。それは今も続いているって言う事を最初のテロップに書かれていた。「これは現代の話』って。傑作だと思う。
欲と功名心を戒める
溝口健二監督の作品は初視聴。いくつかレビューを読んだが、なるほどって思わされた。金と立身出世のチャンスに目が眩んで、陶器を大量に焼いて都へ売りにでる兄弟。兄は、朽木屋敷の死霊に憑りつかれているうちに、女房は落ち武者に殺され子どもが残される。弟は、大将首をずる賢く挙げ、馬と家来を手に入れるも、娼婦となった女房とばったり会う。
冒頭、「分をわきまえて暮らさないと」という宮木のセリフが、最後まで効いている。太平洋戦争が終了して5年後位の作品。確かに、戦争の影響を受けているのだろう。「お前さんだけ無事で帰ってくれば、何もいらない」「お前さんは出世している間に、・・・毎晩違う女と寝ているよ」「人が偉くなるためには、誰かが犠牲にならなければ」辺りに、監督の思いが込められているのだろう。いつの世も戦争は、いつも男が始める。それに群がる数多の人々。現代だって同様。
溝口監督の画像は、構図、白黒のバランス、俯瞰と焦点化、風景や小道具を上手く使っていて、美と内面的なものを表現しているようだった。朽木屋敷のセットや若狭と右近の所作や歩き方、能の世界の幽玄を演出していた。それと、最後、宮木の亡霊の姿の部分が、現実と幽玄の世界の境界線を曖昧にしているストーリーだった。
自分は、この時代の作品、初見で溝口の作品を見慣れないこと、能的な幽玄の美をあまりわからないので、本当のよさがまだわかっていないかもしれない。
悩ましい
・妻のため、子供のため、自分のために貧しさから抜け出そうとお金への執着心が強まった夫と今のように貧しくても平穏でいたいという主人公の妻との葛藤が、とても悩ましい。もう一人は武士になって出世して暮らしを楽にしたいという夫と身の丈に合ってないことをやめなさいと止める妻(主人公の妹?)、こちらは武士になるのはやめた方が絶対いいじゃんと思うが、夢(と転換して解釈してしまう)を追おうとしているという意味で悩ましい。どちらも、現状から抜け出そうという前向きな理由だけど、観ている分にはとても不安な気持ちになる。成功しても失敗しても何だか不幸になるような予感が凄くて、映画としては面白かった。実際にその暮らしになったらストレスで耐え難そう。
・正確な歴史の流れはわからないけど、柴田藩?が攻め込んできて村へ襲いかかってきたのに一度大金を手にしたことによる夫の豹変ぶりが命より金っていう感じで怖かった。諦めたかと思った武士への憧れが残っていたのも怖かった。前向きな感情が不安の原因っていうのが凄いなぁと思った。
・既に廃墟と化していた貴族?の幽霊が夫と共に暮らそうとせがんでいたところで、流されてしまう感じや、着物を買うシーンでその前には妻のため、その次には幽霊の女のため、と演出が良かった。
・家族のためにと危険を承知で出た街で、商売は成功するも妻は殺されるし武士としての出世が叶うも妻は身を落としていて皮肉な結果となって切なさが凄かった。全体を通して、とにかく悩ましい。主人公たちは何をしたら幸せになれたのか、全然わからない決められた運命というものの引力というのか重力というのか、抜け出せない迫力を感じられた凄い作品だった。
・幽霊に憑りつかれてる人あるあるで除霊してくれる坊さんが必ず現れるけど、頭に茣蓙をほっかむりの上に乗せてて面白かった。体に梵字?の呪文が書いてあったけど、おばあさんはそんなに苦しくなさそうに触れたのが地味に謎だった。
・最後の主人公のナレーションに集約されているけど、人間、やってみての失敗がないと納得、変わる事ができない業を背負っているもので、都合よくうまくいかないのがとても面白かった。子供が母親の墓に昼食?を手を付けずにおいたのが泣きそうになった。
けっこう面白い
名作映画と構えてみたのだけど分かりやすくて面白い。お化けが振られてかわいそうでもある。お化けだから当然付き合っていられないのだけど、それでもかわいそうだ。奥さんもお化けが相手では浮気が成立するのか微妙な感じもするが、それでも本人は完全に浮気のつもりでいっていたので怒られても仕方がない。散々だ。
普遍的主題と日本的美しさの見事な調和
傑作です。
世界中誰もが理解できるテーマを伝統的な日本文化の中に描いていて、日本映画を代表する作品だと思います。本作のテーマはイソップ寓話にも似て子供でも理解できるものであり、この映画を楽しむのに何の苦労もありません。しかしそれは日本の古典を題材として、日本の美術や音楽の中に溶け込んでおり、日本文化の粋を集めたものと言えると思います。幽玄の世界が描かれた若狭のシーンも物語の中にうまく溶け込んでいます。
京マチ子さんは子供の頃にたまにテレビで拝見して、失礼ながら普通のおばさんとしか見ていませんでした。しかし羅生門でその演技の凄さを知り、この作品でもそれを再認識しました。女の持つさまざまな側面をものの見事に演じられる女優です。
若狭の魔性、宮木の聖女、おはまのノーマルな女性像と、三者三様の女性像も見事に描かれ、演じられています。黒澤明は羅生門の主演女優を田中絹代にしたかったそうですが、京マチ子で正解だったと思います。
個人的に一番胸に染みたのは、源十郎夫婦や藤兵衛夫婦に対してではなく、女の幸せを知らずに無念の死を遂げて怨霊になって現れた若狭の悲しみでした。私の感性は少しゆがんでいるのでしょうか。
子供のセリフが一切ないのは意図されたものなのかたまたまなのかわかりませんが、喋るよりも遥かにこの物語の悲しさが伝わってきました。達者な子役ばかり見せられる現代日本ではとても新鮮でした(笑)。
人生で大切なものは何かを教えてくれる
物語は「牡丹灯籠」に似ていると思います。 人生にとって何が大切なのかを思い起こさせてくれます。 ただ、この映画で私の一番好きなのは、主人公と京マチ子が出てくる屋敷のシーンです。 この部分だけ録画して何度を繰り返して見ています。 ロウソクの光に映るシーンのライティングがすばらしい。実際には、この映画作成の頃は、 ロウソクの光で映画を撮ることは不可能なのだが、いかにもそれらしく表現されている。 京マチ子の衣装やしぐさ、歌(吹き替えか?)もすばらしい。 これとは正反対の妻の存在(田中絹代)もすばらしい。特に最後のシーンは感動します。
映像のクオリティと物語の面白さに凄み
溝口作品は初見。最初の方の町の賑わいを俯瞰で見事に捉える映像から全ての映像に圧倒されてしまった。京マチ子演ずるもののけの姫さまのエロチックと不気味さが同居する様もお見事。田中絹代の幽霊も健気で可愛いい。
2人の男が望みのものをやっと手に入れたと思ったら大切な妻が・・・というどんでん返しストーリーも実に面白い。一方は金、もう一方は武力を高望みということで、二人は野望を描いて破滅した大日本帝国の姿そのものか。最後せっせと働く二人は良き日本国民の姿?で、そこは少し超優等生的で少しだけマイナスポイント。
全編に渡り本当に魅せられてしまった。70年弱前に、こんなレベルの高い映画が日本で作られていたことに驚きと誇りを感じさせられた。
美しい
欲にまみれても、結局最後はハッピーエンド。
人は改心する。
ということなのでしょう
雨月物語という「素材」を使ってオリジナルの物語を作る監督(脚本)はさすがのひとこと。
女性たちの気持ちを良く表しているということが書かれていたけど、
本当そんな感じ。
繊細で綺麗です。
戦国に生きる庶民の難しさ
総合:80点 ( ストーリー:90点|キャスト:75点|演出:65点|ビジュアル:60点|音楽:65点 )
原作は読んでいないが、よく出来た話だった。戦国の時代に生きた名も無き庶民の悲劇がしんみりと染み入る。
貧しい村に生きるものが、より良い生活を求めてその職人技を生かして商売をして何が悪いのか。現代的視点からするとそうなる。だが戦国時代は商売なんてそう簡単にはいかない命懸けのことなのだという現実を見せ付けられた。また、才能も実力も無いのに武士に憧れる男もいた。
そしてたったそれだけのことでこれだけの悲劇が起き、戦国時代の厳しさと世の無情を見せ付けられた。現代ならば自分の力を試しより良い生活を夢見て失敗しても、これほどのことにはならない。昔の時代の厳しさと、それと比較して現代社会の有難さを痛感した。そのような話の中にとってつけられたような朽木の家の話もあったが、これもまた哀れな話で、姫にも乳母にも男にもそれぞれの立場があり気持ちがわかっていたたまれなかった。
古い作品なので白黒の映像は良くないし、戦いの場面を中心に演出も迫力に欠ける部分がある。それでも面白い作品だった。『山椒大夫』もそうだが、溝口健二監督は世の無情や哀れを描かせたら上手なようだ。
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