「欲と功名心を戒める」雨月物語 parsifalさんの映画レビュー(感想・評価)
欲と功名心を戒める
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溝口健二監督の作品は初視聴。いくつかレビューを読んだが、なるほどって思わされた。金と立身出世のチャンスに目が眩んで、陶器を大量に焼いて都へ売りにでる兄弟。兄は、朽木屋敷の死霊に憑りつかれているうちに、女房は落ち武者に殺され子どもが残される。弟は、大将首をずる賢く挙げ、馬と家来を手に入れるも、娼婦となった女房とばったり会う。
冒頭、「分をわきまえて暮らさないと」という宮木のセリフが、最後まで効いている。太平洋戦争が終了して5年後位の作品。確かに、戦争の影響を受けているのだろう。「お前さんだけ無事で帰ってくれば、何もいらない」「お前さんは出世している間に、・・・毎晩違う女と寝ているよ」「人が偉くなるためには、誰かが犠牲にならなければ」辺りに、監督の思いが込められているのだろう。いつの世も戦争は、いつも男が始める。それに群がる数多の人々。現代だって同様。
溝口監督の画像は、構図、白黒のバランス、俯瞰と焦点化、風景や小道具を上手く使っていて、美と内面的なものを表現しているようだった。朽木屋敷のセットや若狭と右近の所作や歩き方、能の世界の幽玄を演出していた。それと、最後、宮木の亡霊の姿の部分が、現実と幽玄の世界の境界線を曖昧にしているストーリーだった。
自分は、この時代の作品、初見で溝口の作品を見慣れないこと、能的な幽玄の美をあまりわからないので、本当のよさがまだわかっていないかもしれない。
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