異人たちとの夏のレビュー・感想・評価
全25件中、1~20件目を表示
充実した親子の時間の優しさに感動!
アンドリュー・ヘイ監督の『異人たち』を観た後、レビューを書いたところ
複数の方から本作を推薦いただき、鑑賞しました。
風間杜夫演じる主人公英雄と、片岡鶴太郎・秋吉久美子演じる両親との
懐かしく、優しく、あたたかい時間が、12歳でお別れした英雄にとっては
何ものにも代えがたく充実しており、ずっと通うようになってしまい、
英雄本人も気づかないうちに、体調を著しく崩してしまいます。
しかしながら、その濃密な時間を亡き両親と何度も過ごしたいとの英雄の気持ちも
痛いほどよく伝わり、本サイトのレビュワーの皆さんが推奨している理由が
とてもよく理解できました。
この点は、アンドリュー・ヘイ監督の『異人たち』とは大きな差異があると感じます。
『異人たち』は、どちらかというと両親との時間もさることながら
主人公アダム(アンドリュー・スコット)とハリー(ポール・メスカル)の時間が
圧倒的に濃密に描かれていることから、この視点がアンドリュー・ヘイ監督ならでは
の切り口なのであろうと思いました。
本作では、英雄の相手は女性である桂(ケイ:名取裕子)であり、男女関係に発展していく
様が描かれていますが、桂がどうなっているかの描かれ方も含め、これはこれで良かったと感じました。
私も『異人たち』の視点/切り口よりも、大林宣彦監督による本作の方が
胸に突き刺さりました。できれば劇場で観たかったですね。
劇場鑑賞だと感動も桁違いな気がします。
1988年の作品ということで、その時代感はありますが、
物語の本質は色あせず、素晴らしい感動をおぼえました。
俳優陣の演技にも感銘を受けました。
※高橋幸宏さんの出演もうれしかったです
本当に観てよかったです。
推奨いただいた皆様へ感謝申し上げます。
ノスタルジーに浸る幸せな時間
家族との時間が、必ずしも幸せだったとは限らない人もいるだろう。けれど、誰もが、どんなにささやかでも、自分が大切にされた記憶のカケラは持っていると思う。そのノスタルジーを呼び起こし、浸りこむ幸せを思い出させてくれる映画だ。
自分にとって、この映画で一番響いてきたのは、手作りアイスクリームだった。
買ってもらったものではなく、一緒に手作りしたものというのは、記憶の深さが違う。
いつのまにか、映画の中の部屋は、母の実家と重なり、暑かった日差し、緑の匂い、そして井戸水の流れが思い出され、自然と涙がこぼれた。
初めてこの映画を観た20代の頃と違い、自分はもう還暦間近。思いは、鶴太郎や秋吉久美子の方により籠る。
子どもたちはそれぞれ独立し、元気にやっているのだけれど、いつまでたっても、子どもはやっぱり子ども。風間杜夫が、息子たちに重なって見えてしまうのも年をとったせいだろう。
やっぱり自分は大林宣彦の映画が大好きだということを再確認。
明日から公開のリメイク版は、どんな味わいなのか、そちらも楽しみにしたい。
秋吉久美子と名取裕子の姿を観るだけでも価値あり
今週末4月19日から公開されるアンドリュー・ヘイ監督の「異人たち」。同作は山田太一原作の「異人たちとの夏」を原作にしているものですが、既に1988年に大林宣彦監督が映画化しており、同じ原作を持つ2本の映画の相違点はどのようなものなのか確かめるため、本作をU-NEXTで鑑賞しました。
1988年と言えばバブル真っ盛りの時代でしたが、主人公の原田英雄(風間杜夫)は妻と離婚し、子供も妻側が育てることに。30年前、12歳の時に両親を交通事故で亡くした原田は、正真正銘の一人ぼっちになってしまう。さらに仕事でも思い通りに行かなくなり孤独感に苛まれる。そんな中、同じマンションの3階に住む妙齢の女性である藤野桂(名取裕子)が原田の部屋を訪れ、「一緒に飲もう」と誘う。しかし嫌々病に陥った原田は断る。
そんなやり取りがあった後、実家があった浅草に行くと、なんと30年前に亡くなったはずの父親(片岡鶴太郎)に出会う。父親に誘われるままに実家に行ってみると、母親(秋吉久美子)の姿も。あまりの懐かしさに、実家に通い詰める原田。一度は断った桂の誘いにも乗るようになり、2人は男女の関係になっていくが、桂は自分の胸は見ないで欲しいと言う。やがて原田はやつれ始め、周囲の人は心配する。
要するに両親も桂もこの世のものではなく、そんな「異人たち」と過ごした「夏の物語」なのですが、実家で両親と団欒するシーンは、中々泣けました。幸いにして私の両親はいまだ健在ですが、原田と同じ境遇であれば、自分の健康を削ってでも両親に会いたいと思うのは自然ですし、しかも両親ともに自分があの世の存在であることを知って息子に会っているというところも切なすぎるお話でした。
桂の方は、原田が誘いを断った日に自殺したことになっていた訳ですが、こちらはちょっと微妙な気も。何せ同じマンションで自殺を図った訳で、そのことを原田が知らないというのは不自然極まりないところ。この辺りはもう一工夫あっても良かったように思いました。
また、終盤になり原田の体調がどんどん悪化していき、顔が怪物のようになってしまいますが、このメイクが安っぽい感じで、こちらももう少し上手にやって欲しかったなと思わないでもありませんでした。
とはいえ、主演の風間杜夫以下、30年以上前の若かりし頃の姿を観ることができ、中々感激しました。特に母親役の秋吉久美子と、恋人役の名取裕子は、超絶に美しく、色気溢れる姿で登場し、この2人を観られただけでも本作を観た甲斐がありました。また片岡鶴太郎は、本作での演技が評価されて、それまでのコメディアン路線から役者路線に転換していくきっかけになったそうです。ボクシングからヨガをやるようになった鶴ちゃんですが、昔のふっくらした感じの姿に、懐かしさを覚えました。
そんな訳で、「異人たち」の”予習”で鑑賞した本作の評価は、★4とします。
舞台をイギリスに移し、桂役を男性に替えたという同作が楽しみです。
飛ぶ夢をしばらく見ない
なんと!もうすぐ上映されるLGBTっぽい異人たちが、異人たちとの夏の再映画化だとか。
その昔、飛ぶ夢をしばらく見ないを観て衝撃を受けて山田太一の小説を読みまくった。
TVで観てた不揃いのりんごや男たちの旅路は苦手だ。正攻法すぎて若い私には拒否反応のが強かった。
だから飛ぶ夢を観た時、こういうお話も書くんだと衝撃だった。その頃は珍しかったと思う不思議ファンタジー。
生涯の一作の一つになった。ただし、今観たらそれほどでもないかもしれない。でも当時の私にはこの世ではないような話にすごく引き込まれた。
出だしの暗い画面。何が起こってるんだろ?ざわざわする感じ。
異人たちとの夏はTVで観た記憶がある。
これも不思議でさらに山田太一のファンになった。
今回こちらは観ることができたので見直した。
歳をとった私には全てが懐かしかった。
そうそう。なぜか母親ってノースリーブ着てたんだよね。
作った!アイスクリーム。
家から離れたら多分消えちゃう。でも覚悟の上だったんだよね。
名取裕子と関わることで異世界への扉が開いて会いに来れた。
でも取り憑かれるのを阻止するため、その扉を閉じた?
私は子供たちの心の故郷みたいな親になれているかな?
このお話で山田太一は何が書きたかったんだろう?
大林さんや市川さんは?
すごく贅沢な一作であると思う。
すき焼き食べて〜
食べないでよそってくれるお母さん。照れてるのか卵かき混ぜてるお父さん。食べてほしいのにね。
アイスとビールときゅうり。お母さんのよく似合う花柄のワンピース、よそゆきの浴衣。大きな花の髪飾り。
秋吉久美子も鶴太郎も言葉のリズムがいい。
親を亡くした人なら言ってほしいことをストレートに言ってくれる。がんばったね、誇りに思うよ。てらいがない。湿っぽくない。
日暮れとともに薄れていくお父さんお母さん。外から差し込む光の移り変わり。黄昏。
再会も、お父さんだよ!とかはなくて、「親に苗字聞くやつあるか」と自然な流れで受け入れていく。お母さんの艶かしさにちょっとドキッとしながら。タクシーでご機嫌に再現する。
少し前の、観光客で溢れていないお盆の浅草。遠く聞こえる金魚売り、寄席、うなぎやの八目の串、今半。
急にホラーになってこのでたらめさが良いなと思った。
ケイはかわいそうだけど、そんなこと言われてもというものだ。大林宣彦でベッドシーンあるの意外だった。
助けてくれる仕事仲間いいやつ。
蓋をしていた両親の愛情を思い出し、息子との関係も結び直す。説明が多いようにみえて、肝心なところはさらりと表現している。「それはおじいちゃんとおばあちゃんだよ」と初めて紹介する。
環八のあのマンションまだあるのかな。
ビールは常にロング缶。
市川森一ってワイドショーのコメンテーターのイメージしかなかったので初めて作品に触れた。
郷愁・・・タイムスリップのファンタジー・ロマン
妻と離婚して古びたビルに住むシナリオライターの原田(風間杜夫)は、
ある日の夕刻トンネルをくぐると魔界のように子供の頃を過ごした
浅草界隈の小路に出る。
小路の奥に原田が12歳まで暮らした生家があり、暖簾をくぐると懐かしい
死に別れた両親が30年前と同じ姿で暮らしていた。
言いようもない嬉しさと喜び。
原田は父親(今の自分と同年齢の40代の片岡鶴太郎)と
もう少し若い美しい母親(秋吉久美子)にビールを注がれている。
「立派になったねー、シナリオライターかい?」
「暑いだろ、ランニングにおなりよ!!」
パタパタと団扇で仰ぐ母は痒いところに手が届くほど優しい。
慣れた手つきで縁側に張ったロープにワイシャツを干す。
暖簾をくぐると日に焼けた畳の6畳間、
卓袱台に縁側に小さな庭、
何もかもが懐かしい。
べらんめい口調の寿司職人の父親の片岡鶴太郎。
すぐ店を辞める我儘な夫に文句ひとつ言わず付いていく
艶っぽい秋吉久美子。
2人の醸し出す雰囲気は途轍もなく和やかで優しい。
そんな雰囲気に抗えず何度も何度も足を運ぶうちに
原田は健康を損ねて行く。
そして並行して廃墟のようなマンションの3階に住む妖艶な女
(名取優子)が、突然ノックしてくる。
「開けたシャンパンが飲み切れなくて・・・」
美しく魅力的な女と恋仲になる原田。
その女もどこか訳あり風である。
「胸に大きなケロイドがあるの、だから見ちゃダメ」
12歳のとき交通事故で死別した両親に会う。
幽霊とビールを飲むのですから怪談ですよね。
でも片岡鶴太郎の父親と秋吉久美子の母親の優しさ。
多分原田は祖父母や叔父との生活で、何処か無理をして来て、
笑いたいときに笑えず、泣きたいときに泣けなかったんだと思う。
泣くことも笑うことも封印してきた男には地のまま、
素のままでいられる、なんとも心地よい両親との時間。
失った幸せな時間を取り戻している。
画質は荒いです。
名取裕子とのCG映像も今の技術を思うと
とても見えにくいし、なんとも粗雑ですが、
それを補って余りある詩情と情感。
秋吉久美子の美しさとあどけなさ悪意のない笑顔、
本当に秋吉の最高傑作。
母親役の素晴らしさでは「とんび」の常盤貴子と双璧です。
お母さんってこんなに唯一無二の存在。
母の無い子はそれだけで悲しい・・・。
アンドリュー・スコット監督でリメイクされて「異人たち」の題名で
この春公開されるそうです。
死んだ父親をジェイミー・ベルが母親をクレア・フォイが
演じるそうです。
ジェイミー・ベルと片岡鶴太郎がすこしも結びつかないけれど、
ベルが大好きなのでとても楽しみです。
原作が脚本家の山田太一なのにこの映画の脚本は市川森一、
なのも不思議ですね。
監督は大林宣彦さん。
今から35年も前の1988年作品。
この作品が30年の時を経てイギリス人監督アンドリュー・ヘイの
心に届くなんて。
山田太一さんが生きていたらどんなにお喜びだったでしょうね。
この映画の一番の魅力は、40代の息子が、自分と同じ位の40代の
父親と同じ時代に出会う。
この軌跡が、なんの不自然さも感じさせない不思議に、
あるのでしょうね。
現代浅草奇譚‼️
わが敬愛する大林信彦監督作の中でも「青春デンデケデケデケ」と並んで、最も好きな作品です‼️中年シナリオライターの原田はある日、幼い頃住んでいた浅草に出かけ、死んだはずの両親に出会う‼️原田が小さい頃に死んだ両親は、なぜか死んだ時の年齢のままだった‼️原田は懐かしさのあまり、たびたび両親の元へ通い、交流を持つようになる‼️一方、原田は同じマンションに住む桂という女性と愛し合うようになるが、彼女は幽霊だった・・・「牡丹燈籠」を思わせる物語に、古き良き下町情緒と人情、親子愛、恋愛(ちょっと情念)をブレンドした名作ですね‼️もうホント全編に大林監督の器の大きさというか、優しさが満ち溢れています‼️冒頭の原田が制作したTVドラマ‼️竹内力さんが出産に立ち会うドラマなんですが、これがまず観る者の心を癒してくれる‼️そしておそらく映画が描いた最高のユーレイ、片岡鶴太郎の父と秋吉久美子の母‼️父子がキャッチボールするシーンなんて名場面すぎる‼️並んで親子がすき焼き鍋を囲みながら別れるシーンなんて、涙が出ない人がいるのでしょうか❓そして妖艶な美しさの名取裕子さんの桂‼️前部を隠しながらの風間杜夫さんとのラブシーンも美しすぎて興奮しちゃいます‼️そしてユーレイとなった桂の悲しみと情念が爆発するクライマックスの特撮シーンも、ちょっとしたスペクタクルで見応えアリ‼️全編に流れる音楽も、プッチーニのオペラのアリアが効果的に使われていて、ノスタルジックな昭和の風景と相まって、忘れられない余韻を残してくれる‼️じいんときます‼️好きだなアこういう味‼️
「異人たちとの夏」といえばタイトルは知ってたが見たことはなかった。 見てみて思ったのは異人たちといえば普通は外国人のことだが、この映画では違った。
動画配信で映画「異人たちとの夏」を見た。
1988年製作/108分/日本
原題:The Disincarnates
配給:松竹
風間杜夫
秋吉久美子
片岡鶴太郎
永島敏行
名取裕子
大林宣彦監督といえばオレらの世代は「時をかける少女(1983)」を想像するのかな。
山田太一原作で想像するのは「ふぞろいの林檎たち」だと思う。
「異人たちとの夏」といえばタイトルは知ってたが見たことはなかった。
見てみて思ったのは異人たちといえば普通は外国人のことだが、この映画では違った。
風間杜夫は脚本家。
たまたま行った浅草で自分が子供のころ死んだはずの父(片岡鶴太郎)を見かけた。
父が声をかけてきた。
「うちに来るか?」
行ってみるとこれまた亡くなったはずの母(秋吉久美子)がいた。
とても居心地がよく愉快だった。
風間杜夫は何度も父母の家を訪ねる。
自宅マンションでは階下に住む女性(名取裕子)と仲良くなっていた。
しかし、父母や名取裕子と楽しいひと夏を過ごしているうちに、なぜだか風間杜夫は衰弱して行くのだった。
これはファンタジーではあるが見ていて居心地がよく優しい気持ちになれる、
だが怖い一面もあるそんな映画だ。
満足度は5点満点で4点☆☆☆☆です。
本作はホラー映画としての価値ではなく、1950年、昭和30年頃の生活への郷愁こそに価値があると思います
異人たちというのは、外国人のことではなく幽霊のことを指しています
確かに幽霊たちの夏ではあまりに陳腐です
1988年公開
原作はその前年に発表された同名の山田太一の小説
山田太一といえば、泣く子も黙る超有名な名脚本家
映画はそう数はないですが、テレビドラマとなれば、彼の作品はそれこそ無数にあります
一時期は視るテレビドラマは、大袈裟でなくどれもこれもほとんどすべて脚本山田太一とクレジットされていたほどです
木下恵介アワー、ポーラテレビ小説、金曜劇場、東芝日曜劇場などでの現代にまで知られる名作と呼ばれる作品に彼の物が沢山あるくらいそのレベルもとても高いものでした
泣いてたまるか
男たちの旅路
岸部のアルバム
ふぞろいの林檎たち
すぐに思い出せるものでもこれなのですから、どれほどの才能にあふれた脚本家であるかお分かりになるとおもいます
1934年生まれ、2022年現在87歳でご存命です
6年前の2016年には2時間ドラマを手がけ、数々の賞に輝いたほどお元気で才能も現役のままでいらっしゃるようです
本作はその売れっ子脚本家としての自身を投影したかのような主人公がある夏に体験するホラー物語です
それをハウスの大林宣彦監督が映画化したものです
といっても、ハウスのようなキッチュでポップな世界観ではなく、2004年の「理由」のような少し陰影の濃い肌触りの作品になっています
脚本は山田太一ではなく市川森一
この人は特撮界では良く知られる人で、快獣ブースカ、ウルトラセブン、怪奇大作戦、帰ってきたウルトラマン、仮面ライダー、シルバー仮面など錚々たる作品に数多く参加しています
その後は山田太一の後継者のように沢山のテレビドラマの脚本を書いた人物です
1941年生まれですから山田太一の7歳下ですが、残念なことに2011年に70歳で他界なされています
物語はケイという魔女と、主人公の死別したはずの両親と二つのお話で展開されます
両親との思い出の世界は、1950年昭和30年頃の浅草です
それを大林宣彦監督がとても情感たっぷりに撮っています
片岡鶴太郎と秋吉久美子の両親の言葉づかい、立ち振る舞い、衣装、当時の生活ぶりに心が奪われます
特に片岡鶴太郎の東京弁はスーッと耳に馴染むもので、もうそれだけで昔に連れていかれます
終盤になって思い出したかのようにホラー映画として締めくくられます
本作はホラー映画としての価値ではなく、1950年、昭和30年頃の生活への郷愁こそに価値があると思います
もちろん私達は生まれてもいません
郷愁を感じるわけがないのに何故か懐かしい
「三丁目の夕日」が好きなら、きっとあなたも本作の世界の虜になるでしょう
幽霊に取り憑かれた主人公のように
キャッチボールの球筋がよい
懐かしがるわけではなく、鶴太郎が当たり前のように声をかけてくるのが良い。母、秋吉久美子はやたらと色っぽい。ラジコンやアイスクリーマーに興じる設定が良い空気を作る。大人の階段を登りきった男の心象風景か?
違う。これが主人公の内なる対話や妄想ではなく、本当に主人公の危険を察知した守護霊からのアプローチであることは、最後になって知らされる。出血大サービス。純粋な怪談エンターテイメント。シナリオはよく出来ている。しかし、見たいものとはちと違う。
小さいけど、本当に小さいけど、そこには確かに幸せがあった。
主人公がやつれてしまったのは桂に取り憑かれていたからで、それを助けるために父母がやってきたんではないだろうか?
牡丹燈籠にならなかったのは父母のお陰だと思いました。
あの小さなアパートにはお金や科学では買えない幸せがあったんだよね。
わたしも子供の頃思い出して、胸が熱くありました。うちの死んだ親父も主人公の父親みたいで...
【セピア色の”すき焼きのシーン”は何度観ても、涙が込み上げてくる作品。親とは”どのような状況”でも子供が心配なのだ・・。】
ー 大林宣彦監督、素晴らしき多くの作品を届けて頂き、本当に有難うございました。ご冥福をお祈りいたします。-
作品の内容は、人口に膾炙しているので、敢えて記さない。
<鑑賞当時の感想>
・”親子の関係”とはどのような状況でも永遠に繋がり続けるという事。
・山田太一さんの小説自体が素晴らしいのだが、その作品の”独特の世界観”を崩さずに映像化した大林監督の力量と市川森一の脚本の凄さ。
ー書いているだけでも、凄い布陣である。-
■想い出のちょっと恥ずかしいシーン
・名取裕子さん演じる妖しくも哀しき女ケイ(凄い、色気であった・・・)と原田とのベッドシーン。初見時は学生で、TVで友人と観ていたので、かなり気まずくもドキドキしながら観たなあ。
■白眉のシーン
・浅草の誰もいないお盆の時の道路で、原田(風間杜夫)と鯔背な寿司屋職人の父(片岡鶴太郎)とのキャッチボールのシーン。そして、二人が交わす会話。
・今半別館の二階で、三人がすき焼きの鍋を囲んでの会話の素晴らしさ。
特に、原田の父の台詞に涙が滲む。
”こいつは12で両親を失って・・・・、良く頑張った・・。”
・原田の両親(母は、秋吉久美子・・そりゃ、美しいですよ。)が後ろの襖窓から夕陽が差してくる中、徐々に姿が消えていくシーン。そして、暗くなった間に独りで座り込む原田の背中・・。
ー個人的に邦画の名シーンの一つだと思っている。-
<初見時から数十年振りに観ると、ケイの本当の姿が露わになるシーンなどは正直厳しいものがあるが、それでもこの作品は私にとっては忘れ難き名作なのである。>
牡丹灯籠
浅草のアパートに家族3人で住んでいた原田が12歳のとき、両親はダンプにはねられて亡くなってしまう。両親の記憶はわずかなもの。ずいぶんと忘れてしまっていた中年男にとって家族のぬくもりは幸せそのものだった。藤野がやつれた原田を見て「会いに行くな」と忠告するが、ついつい浅草へ・・・
現代版「牡丹灯籠」のような内容だが、相手は死んだ両親。と、思わせておいて実は藤田が幽霊で彼の衰弱もそれが原因(予想通り)。やっぱり牡丹灯籠だった。胸の火傷を隠し続けた意味もよーくわかった。
音楽はプッチーニの歌劇ジャンニ・スキッキの「私のお父さん」。すし職人、きゅうり、アイスクリーム、花札などなど、心温まる映画だな。
緑色のアイスの皿
"ホラー二本立て“になってしまったのは残念(笑)
どうもおかしい構成だと思ったら、Cape Godさんのお調べでは「亡き両親が悪霊《KEI》に取りつかれた息子を正気に戻すために現れた」というのが物語の骨格なのだそうだ。
それならば、ラストシーンで、雑草の更地でアイスの皿が再登場するのだが、名取裕子に向けてどこからかあの皿が投げつけられるとか、の演出が加わっていたならもうちょっと違ったかも。
そんなわけで作りは「?」だったけれど、
すき焼きの場では不覚にも声を出して泣いてしまった。
大人になっても、子ども時代にも、僕らはさまざまな幽霊に脅かされ苦しめられてるよね・・・
でも「お前を誇りに思うよ」とあの世から聞こえる声が
疲れた心にこんなにも嬉しい。
うんと泣いて、元気になった映画でした。
全25件中、1~20件目を表示