暗黒の旅券
劇場公開日:1959年5月19日
解説
鷲尾三郎の原作を「絞首台の下」の高岩肇が脚色、「らぶれたあ」の鈴木清順が監督したスリラー活劇。撮影は「傷つける野獣」の永塚一栄。
1959年製作/88分/日本
配給:日活
劇場公開日:1959年5月19日
ストーリー
昼下りの東京駅で、オーロラ座のトロンボーン奏者・伊吹の花嫁・弘美が新婚旅行の直前、突如姿を消した。弘美の足どりを追い疲労の余り酒を飲んで帰宅した伊吹の前に、弘美の絞殺死体があった。警察では弘美が麻薬患者だったと云った。証拠はハンドバッグに入っていた麻薬。そんなことはあり得ない。伊吹は見えぬ犯人へ挑戦を決意した。あの日、駅へ来ると云いながら来なかったマネージャの森脇、ドラムの勝根--二人の姿が伊吹の頭に浮んだ。森脇は正体不明の芸能プロモーター・石丸と親しくしていた。ある日、伊吹は新橋のバー“壺”の前に森脇の自動車があるのを見て中へ入った。そこは弘美の足どり調査の帰途、寄ったバーだった。が、マダムのミツは何故か伊吹を初めての客として扱った。しかし、それはちょうど入ってきた花売娘の「おじさん、この間はファッションモデルの大月香代子に凄く飲まされていたね」という言葉に打消された。そうだ、弘美を殺すために香代子を俺につき合せたのだ。香代子と森脇の関係は?そんな一日伊吹は勝根から紙片を受取った。「壺に出入りするな、K」--脅迫状だった。送ったのは、勝根自身か、香代子か、それとも弘美の弟で行方不明の康治か。偶然、伊吹はケニーというゲイボーイが弘美の友達だったことを知った。ケニーも行方不明だという。やがて伊吹は香代子を石丸のアパートに突きとめ乗込んだが、何者かに消音拳銃で射たれ負傷した。折も折、彼は、森脇と香代子が殺害されたことを聞いた。警察は、二人は兄弟で、麻薬患者になった香代子を森脇が救おうとしていたのだと語った。伊吹は二度目の脅迫状を受取った。そして一夜彼は見知らぬ男たちに車に乗せられ郊外へ連行された。車にはケニーが乗っていた。ケニーは弘美の弟・康治だった。弘美はゲイボーイで麻薬患者の弟を幸福の門出に伊吹に紹介することができなかった。そして弟を救おうと麻薬を取上げ、彼のボスに抗議した。そのためボスは怒って弘美を殺害させた。その一切を知った伊吹は、ボスの山荘に入るや、いつの間にか現れた麻薬取締官・笠松の応援で一味を倒した。一味の中には石丸と勝根がいた。が、ボスのフランクとケニーは逃れた。フランクが羽田から香港へ出発する日、張込んでいた伊吹らの耳に銃声がひびいた。フランクは倒れた。ケニーが射ったのだ。間もなく伊吹のトロンボーンの音が、弘美の魂を追って流れ出した。