赤ちょうちん
劇場公開日:1974年3月23日
解説
都会の片隅で、ひっそりと同棲する若い二人が、さまざまな社会の障害にぶつかりながらも、ひたむきに生き続けていく姿を描いた青春映画。“かぐや姫”の同名のヒット曲を原案にしたもの。脚本は「団地妻 昼下りの誘惑」の中島丈博と、桃井章、監督は「修羅雪姫」の藤田敏八、撮影は「OL日記 濡れた札束」の萩原憲治がそれぞれ担当。
1974年製作/93分/日本
配給:日活
劇場公開日:1974年3月23日
ストーリー
有料駐車場に勤める政行と修の二人が、新宿の雑踏の中で幸枝とその友人ミキ子の二人の少女と交わした会話から、政行と幸枝の間に愛が芽生えた。その夜、二人は、政行のアパートで何気ない一夜を過した。電車の轟音に耐えきれず政行は幡ケ谷へ引っ越した。そんなある日、政行は幸枝と再会し、彼女は政行のアパートに移って来た。数日後、二人が外出から帰ってみると、部屋に小太りの中年男が寝そべっていた。男は保険屋だといい、腹痛を理由に居候をきめこんだ。奇妙な三人の同居生活が始った。政行は駐車場をやめ、修とコンビでトラックの長距離輸送を始めた。そんなある日、政行が仕事から戻ってみると、幸枝と中年男は床を並べて眠っていた。「火葬場が近く一人で寝るのがこわくて……」そんな幸枝をいとおしく思いながらも、二人の間に冷たい風が吹き抜けた。二人は修の住む、新宿のアパートへ移った。そして、ここで幸枝が妊娠していることを知った。「おろせよ」政行は冷たく突き放した。幸枝にとっては身の切られるほど切ない夫の言葉だった。家賃の問題、赤ん坊のこと、二人はむしゃくしゃを振切るべく調布に引っ越した。幸枝は妊娠九ヵ月だった。やがて、男の子が生まれ、とやかく言った政行も親馬鹿振りを発揮し、二人は幸福だった。しかし、管理人のクニ子は、いつもこの夫婦を好奇な眼で見ていた。そして、幸枝と赤ん坊に対して露骨な悪意のこもったイタズラをするのだった。さらに幸枝の最愛の田舎のおばあちゃんが死んだ、という知らせにより幸枝の心が乱れたため、気分転換のために、また引っ起すことにした。今度は下町の葛飾区で格安の家を見つけた。隣のおばさん文子はとても親切にしてくれた。実は政行たちの家は、昔一家心中があり、長く空き家になっていたのだった。首を吊った鴨居、血の海の畳。政行は恐怖に堪えながら、幸枝には知らせなかった。しかし、数日後、幸枝が分不相応なダブルベットを買ったことから、政行は幸枝も心中の事を知っているんだろうと思った。かつて血で汚れた畳の上では寝れなかったのだ。その日、隣の主人敬造が鳥の羽を剥いでいた。その羽が幸枝の鳥アレルギーを刺激し、その夜から幸枝の挙動が一変し、突如政行を殴りつけたりした。翌日、幸枝は米屋の店員をビールビンで殴って大怪我をさせ、彼女は目を異様に光らせて、トリの股に食いついていた……。幸枝は精神病院の鉄の扉の中へ保護された。数日後、政行は引っ越しをした。今度は赤ん坊と二人きりで……。