「偏向的」いのちの食べかた いもりりさんの映画レビュー(感想・評価)
偏向的
食糧生産の機械的、無機的な部分を映したドキュメンタリー。
映像に対する説明は一切ない。
しかしそれは「ありのまま」を見せているわけではない。
つまり映像という視覚情報を選別しており、中立的な映画ではない。
この手の問題を考えるにあたっては、
問題視されている事実(例えば機械化、無機化)のデメリットだけでなく、
メリットや必要性なども紹介したうえで、正しく理解することが必要である。
もちろんメリット等がないなら描写のしようがないが、
この手の話は、社会がそういう選択をしているという事実があるわけで、
何らかのメリット等があることが当然の前提になっている。
しかしこの映画は、およそ人が違和感を覚えるような絵だけを抽出して描写し、
逆にメリットや必要性、一般性を感じさせる絵を、
ないわけがないのに描写しないから、偏向的である。
にもかかわらず、中立を装っているところが質が悪く、
また、当然あるべき会話などのコミュニケーション部分のみを
排除して映像化しているため当然に違和感のある無機的な絵が出来上がるが、
その違和感を本件の問題点と錯覚させようとしているところも質が悪い。
この映画は、
典型的な印象操作の一例という意味で、
情報リテラシーの勉強にはなるかもしれないが、
命の食べ方を考えさせるには全く足りない。
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