犯人に告ぐのレビュー・感想・評価
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普通の刑事ドラマだったけど面白かった
刑事を主人公にした、ミステリー、サスペンス、要は刑事ドラマだ。
この手の作品でよくある、過去の事件、警察内部の権力争いも漏れなく付いてくるが、他の作品と本作が違うのは現在のBADMAN事件捜査にちゃんと絡んでくることにある。
もちろん劇場型捜査も見所の一つだ。
あまり効果を発揮しなかったがミスリードを誘う仕掛けもしっかりしていたし、ストーリーはかなり練り込まれて良くできている。
アクションはもちろん、スピード感があるシーンもないので少々パンチに欠け、地味でねっとりしているのが弱点と言えば弱点だろう。しかし変にドンパチし過ぎる刑事モノよりは地味目な、派手なフルーツケーキより豆大福が好きな私のようなものにはこれでいい。
ラストシーンについて、あれは違和感を出したかったと監督が言っているが、ちょっと失敗したのではないかと思う。
その直前までの感覚が鈍るし、そもそも意味不明で本編と関係無さすぎなことも問題だ。
せっかくの豆大福にシシャモのせたみたいになった。シシャモは美味しいけど、豆大福にのせてはダメよ。
なにか、こう。
割と好き。
いいか、よく聞け、BADMAN
いいか、よく聞け、BADMAN。小澤征悦はニュースキャスターの色香に迷い、悪徳警官の道へと一気呵成に沈んでいくんだ!・・・って、関係ないやん・・・でも震えてるぞ!
コメディもシリアスドラマもこなしてみせる豊川悦司は日本のジム・キャリーか?とも思える説得力のある演技。ヤクザ映画でもないのに、「今夜は震えて眠れ!」という捨て台詞が妙に決まってしまう男なのです。『理由』と同じくWOWOWでテレビ先行放映していたなんて気付かずにもったいないことをしたものだと、こちらも震えてしまいますよ・・・
さすがに先行放映するだけあって全体的にTV向けの映像でしたが、ストーリーや演技重視の作品なのでスクリーンに釘付けとなってしまいました。サスペンスではあるけれど、主人公巻島を中心とした刑事物語。6年前に犯人を取り逃がした上、誘拐された少年を殺されてしまうという失態の名誉挽回の含みもあり、捜査責任者がテレビに直接出演するという前代未聞の“劇場型捜査”にて犯人を追いつめていくストーリーです。
難事件を捜査するという単純な本線に、主人公にも犯人に狙われる対象となる息子がいたり、6年前の未解決事件や、ボンボンの二世刑事(小澤征悦)の嫌味な行動や、巻島を信頼していると見えて実は保身のためだけに行動する上司(石橋凌)の存在という、警察の恥部とも思える伏線が効いている。そして、マスコミと警察の互いの自己利益のための取引というのも見どころの一つと言えるかもしれません。また、マニアックな映画ファンならば、片桐礼子の白い胸元によって『北京原人 Who are you?』を思い出す方もいるのかもしれない・・・いや、小澤征悦ならば思い出していたに違いない・・・
映画そのものも面白かったし、原作もかなり面白いのでしょう。特に6年前の事件の被疑者をずっと張り込みしていたという刑事の執念には驚かされたし、部下からの篤い信頼を受けていることや津田(笹野高史)という見事な人選にも巻島の魅力を感じてしまいます。残念だったのは6年前に難産だった妻(松田美由紀)が助かったのかどうか(てっきり妹だと思っていた)が不鮮明だったし、一部フィルムの順番が間違っているんじゃないかと錯覚してしまったこと(自分の勘違い)。
小澤征悦はこの後石橋凌をどう陥れていくのだろうか?放っておいたら自分は足柄署に左遷されるのだから、全く何もしないなどとは考えられない・・・
タイトルなし
原作に忠実で分かりやすい
後半の緊迫感が、すごい!!
豊川悦司のトーンを殺した渋い語りの中に、どれだけの巻島の挫折した過去の悔しさと犯人逮捕への情熱を秘めていたことでしょう。
『犯人に告ぐ!・・・今夜は震えて眠れ!』
異例のテレビ局のニュース番組から、連続児童殺人犯「BADMAN」へ主人公の警視・巻島は、挑戦状をたたきつけたこのワンシーンに痺れました。
豊川悦司のトーンを殺した渋い語りの中に、どれだけの巻島の挫折した過去の悔しさと犯人逮捕への情熱を秘めていたことでしょう。
本作は、前代未聞の“劇場型捜査”をテーマにしつつ、その伏線として冒頭に、6年前に犯人を取り逃がしてしまった起こった児童誘拐殺人事件を描きます。
この伏線は重要です。6年前の捜査当時に置かれた巻島の状況は、その後の警察上層部の無責任さや巻島の「BADMAN」に逮捕に対する執念を強調する意味で効果的でした。
また当時巻島の妻が臨月を迎えていて、母体の危機に面していたのに、誘拐事件の専従となっていけなかったという夫としての罪悪感も伏線となっています。
捜査を通じて、いつも犠牲にされる巻島の家族との関係。しかし、彼の家族愛の深さはラストで感動を呼ぶストーリーを醸し出すのです。
さらに6年前とその後をつなぐシーンの演出もよかったです。
臨月で死にかけていた妻の膝枕の上で、ゆっくり目を覚ます巻島の姿に、思わず6年前屈辱は夢幻のごとく感じられました。
その後山奥の警察署で悠々自適に暮らしていた巻島であったのですが、田舎に飛んでも優秀な検挙率を残す巻島に目をつけたのが県警本部。またしてもしくじったらトカゲのしっぽ切り要員として、巻島を「BADMAN」捜査の責任者に祭り上げました。
何かあったらまた責任を取らされることは分かっていつつも、責任者のポストを受ける巻島の信念には惚れ惚れしましたね。
あと、「BADMAN」捜査をあたかも進展しているかのように自作自演で、「BADMAN」を名乗った手紙を捜査本部に送りつける県警本部長に、「これは俺の事件だ、余計な手出しをしないでくれ」と詰め寄る巻島が格好良かったです。
ちょっと結末が時間切れであっけなかったものの、最後のシーンまで、とことん豊川悦司はトヨエツ臭く決めてくれております。
刑事物と言うよりも、一人の男の生き様を綴った作品といえるでしょう。ちゃらちゃらした刑事物に飽き飽きしている人なら、ぜひ本作でハードボイルドに痺れてほしいと思います。
『映画ファンに告げる! 今夜は震えて眠れ!』
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