エリザベス ゴールデン・エイジのレビュー・感想・評価
全38件中、1~20件目を表示
かつてのエリザベスが鍵になる、ゴールデンエイジまでの道のり。
◯作品全体
普通の少女から女王へと表情を変えた1作目。2作目では女王へ変貌したエリザベスと、それに対峙するスペインとの戦いを描くのかと思っていたが、エリザベスの心情に寄り添うような物語で驚いた。着飾った女王としての強さでなく、一女性としての感情の揺らぎにフォーカスを当てることが一作目でも作品の強みだと思っていたから、うれしい誤算だった。
女王として壮年の男性たちを従え、威厳をもって決断を下す本作のエリザベスには、前作あったような女性的な部分が少ない。髪を短く切って、威厳を示すための厚化粧をし、荘厳な衣装で肌を覆う。女王でありながら女性としてのエリザベスはほとんど存在しない。
一方で、同じ名前を持つベスはエリザベスが失った女性的な姿をもち、まるでエリザベスの理想像のように存在する。若くて髪が長く、朗らかで、男性に接近することできる。エリザベスが心に抱く、「かつての自分」のように存在しているのが面白い。ベスを寵愛するエリザベスは女王としての振る舞いをしていながら、かつての自分の残像をいまだ捨てきれていない。ベスを羨む発言からも、その感情がにじみ出ている。
ローリーが登場してからは、エリザベスの女性としての感情がどんどんと膨れ上がっていく。ローリーにキスをせがむエリザベスは、一緒にいることが不可能であることを理解していながら精一杯の願望を求めているようで、切なく、つらいシーンだった。また、女性としての独占欲と嫉妬を露わにするエリザベスは、ローリーが口にしたように「敬愛する女王」とは程遠い。自分の中にある「かつての自分」を「女王らしくない」ものとして叩き落されるエリザベスは絶望するが、「かつての自分」も絶望の淵から女王に君臨したことを思い出し、毅然とした姿でスペインへ立ち向かう。焼き討ち船で勝利をつかむアルマダ海戦は、「女性としてのエリザベス」を自ら殺して立ち向かう姿に重なって見えた。
「かつての自分」がエリザベスの弱さでもあり、強さでもある。二作目では一作目以上にエリザベスがそれを自覚するラストで、ゴールデンエイジを作る彼女の存在を説得力あるものとしていた。
〇カメラワークとか
・シーンの最初と最後のカメラ位置がすごい凝ってた。家具で登場人物が見えないところからゆっくりPANして空間の全体を見せたり。シーンの中にきちんと始まりと終わりがある感じは黒澤監督作品っぽいな…と思ったらシェカール・カプール監督は黒澤監督ファンなんだとか。内密な話をすることが多い物語だから、そういった狭いスペースを意識させようとしてたのかな。
・家具の隙間から登場人物を映すカットが多い。特にエリザベスは多くて、孤独感や閉塞感の演出になっていた。この閉塞感が世界の海を知るローリーに憧れるエリザベス、という構図に説得力を生む。
・一番かっこいいレイアウトだったのは妊娠がわかったベスとローリーに悪態をついたあとのエリザベスを映したシーンラストのカット。廊下で崩れ落ちるエリザベスを宮殿のかなり高い位置から映す。廊下だから広い空間なのに、柱と壁を使ってすごく狭い空間のように映していた。
・回り込みも多かった。ラストのエリザベスを回り込んで映すカットはちょっとギャグっぽかった。完璧な女王と化したエリザベス…みたいな演出なんだろうけど。
・衣装もすごかったけど、美術と照明が凄い良かった。荘厳な空間なんだけど輝いているわけではなくて、宮殿の壁や部屋の隅に影のあるカットが重みある空気感を作り出す。実際にはどうだかわからないけど、電灯のない16世紀の明るさなような気がしてリアリティがあった。一方で女王としてのエリザベスを映すカットは白飛びするくらいの照明で演出だったりして、照明の使い方が上手だった。
〇その他
・ラストは少し尻すぼみな感じがあった。ナレーションで歴史を語ってしまうのは一女性を描いてきた本作には少し似合わない気がする。
エリザベス女王の女性らしさ、賢さ、尊大さ。戦争という危機で得た国民を動かす力
シェカール・カプール監督による2007年製作のイギリス映画。
原題:Elizabeth: The Golden Age、配給:東宝東和
前作を見ないでの鑑賞。エリザベス女王役ケイト・ブランシェットと彼女の寵愛受けウォルター・ローリー役クライブ・オーウェン、2人の主役をどうも好きになれず、映画自体としては今一つのところもあった。ただ、それを補っても余り有る歴史的事実の面白さ、興味深さに、引き込まれてしまった。
エリザベス女王の時代になお、カトリックとプロテスタントで英国が二分化していたとは、恥ずかしながら驚き。更に、ライバルのカトリック信者スコットランドのメアリー・スチュアート女王(サマンサ・モートン)は何と斧で断首されるとは、知らなかった。
エリザベス女王のお気に入りの女官ベス・スロックモートン役アビー・コーニッシュの美貌には見入ってしまったが、彼女がウォルター・ローリーの妻になり子をもうけることが事実とは。また、スペインとの戦争の際に、エリザベス女王は兵士達の前に行き、軍を鼓舞することを言う。作り話だろうと思っていたが、これも史実らしくて驚かされた。スペインとの戦争という大きな危機が、エリザベスを女王らしくしたのだろうか?
まだ発展途上というか、いつ潰れてもおかしくはなかった英国が、男の王様の時代ではなく、あの女王の時代に、スペインに勝利し、大きく発展したことに驚きを覚える。映画では偉大さよりも女性らしさ・賢さ・尊大さが強調されていたが、国民を動かす何か(国と国民を愛する熱量?)を持っていたということなのだろうか。
製作ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、ジョナサン・カベンディッシュ、製作総指揮デブラ・ヘイワード、ライザ・チェイシン、マイケル・ハースト。脚本ウィリアム・ニコルソン、マイケル・ハースト。撮影レミ・アデファラシン、美術ガイ・ヘンドリックス・ディアス、衣装アレクサンドラ・バーン、編集ジル・ビルコック、音楽
クレイグ・アームストロング、アル・ラーマン。
出演はケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライブ・オーウェン、リス・エバンス、ジョルディ・モリャ、アビー・コーニッシュ、サマンサ・モートン、エディ・レッドメイン、トム・ホランダー、アダム・ゴドリー。
「エリザベス」の続編。黄金時代へと続くスペイン無敵艦隊との戦いや女...
「エリザベス」の続編。黄金時代へと続くスペイン無敵艦隊との戦いや女王の恋が描かれている。
年月を経て、ケイト・ブランシェットのエリザベス一世としての貫禄が増している。
女王でもやはり人間、女王として女性としての孤独、寂しさ、恋、嫉妬、憤り、恐れ...
それでも女王として強い意志を持って決断する。
生涯結婚をせず、子供を持たず、民の母であるエリザベスが侍女の子供を抱くシーンは実に切なかった。
ゴージャスな歴史絵巻
相変わらず衣裳とヘアメイクが凄い。ケイト・ブランシェットによく似合って、歴史の教科書に出てくる肖像画にそっくりだった。
エリザベス一世が、敬愛される処女王になるまでの史実の叙述に重きが置かれていて、ドラマチック度では前作のほうが優っていたかも。
戦場の前線に白馬に乗って現れ兵士達を鼓舞するシーンは、惚れてしまいそうなwカッコよさだった。
前作よりグッと強さを増した
人であって人でない。
女であって女であることを許されない。
それが女王なんだろうね。
女王であるために犠牲にしなければいけなかったものの多さに、必死に踏ん張るその姿に、ちょっとグッときてしまったよ。
そして、建物とか衣装が、単純に歴史ものとして面白かった。
葛藤抱えた女王の黄金時代の幕開け
前作エリザベスより、女王の苦悩や恐れ、葛藤が描かれつつ、豪華絢爛な世界や無敵艦隊との戦いなど、スケールが格段に大きくなっていて、後半はもう終始鳥肌が止まらん。女王たる威厳と迫力が圧倒的すぎて、この役はケイトブランシェットしかできないと思わされる。これはまじで本当にすごい…
Only England stand against him. 圧倒的存在感。
ケイト・ブランシェットの圧倒的な存在感が見物だった前作より更に存在感が増した「エリザベス」の続編です。いやいや本作も面白かったです。
何はともあれケイト・ブランシェットですよね。女王としての凛々しさと女性としての弱さを見事に表現していたと思います。メアリー・スチュワートの処刑のシーンでの取り乱しっぷりや、ベスの妊娠を知った時の嫉妬っぷり等貫禄の合間に見せる女性らしさがお見事でした。
ケイト・ブランシェットはもちろんですが、メアリー・スチュワートを演じたサマンサ・モートンも良かったですね。暗殺計画がバレた時のシーン。もうどうしていいのか分からなくなってる感じが凄い伝わってきて印象的です。
クライブ・オーウェンは渋くってカッコいいですね。最近観てない気もしますがお元気なのでしょうか?前作に比べジェフリー・ラッシュがやたら老けてる!そうそう、今ではビッグ・ネームのエディ・レッドメインが出ててビックリしました!まだまだチョイ役な頃の作品ですね。
そして本作でも衣装といいセットといい、豪華絢爛です。戦闘シーンがあっさりしているのは前作と一緒なのですが、本作が重きを置いてるのはそんな所ではないですしね。あくまでも本作はヒューマン・ドラマ。エリザベスの苦悩と決断、そして人間らしさが十二分に伝わってくる大作でした。
しかし、1500年代後半の頃ってスペインが覇権を握ってたんですね。今となってはヨーロッパの中でも影が薄い印象ですが。まぁ、そういったらイングランドも最早大国のイメージがないので盛者必衰を感じます。現在はアメリカも勢いが衰え、日本も衰退している真っ最中ですしね。特に日本は超高齢化し過ぎててホントに未来がない。ヤバいです。そんな事を歴史上の大国の移り変わりを観ながら考えてしまいました。
クイーンたる美しさに魅力される
個人評価:3.9
ケイト・ブランシェットの神々しさを最も感じられる作品。
前作から約8年後にでた2作目。
前作からさらに気品や貫禄が増し、エリザベス1世を演じるに足る女優だと感じる。他の女優ではこの女王の内なる気品や気丈さは表現できなかったろう。
歴史映画としても楽しめるが、ケイト・ブランシェットの透明感ある美しさを最も表現できている映画だ。
わたしの名前はエリザベスよ!と言ったのは山田花子
16世紀のイギリス史はややこしい。なにしろメアリー女王が他にもいるからなのです。この映画に登場するのはスコットランド女王メアリー(サマンサ・モートン)であって、エリザベス1世のの先王ではない。プロテスタントの指導者を次々と処刑した性格は“血まみれのメアリー”とも呼ばれ、カクテルのブラッディ・マリーの語源ともなったほど。
そしてこの時期の歴史は宗教上の対立なくして語れない。イギリスにおいては、エリザベスの父であるヘンリー8世の離婚問題を機に、法王から独立してイギリス国教会を作ったのが最初であり、ルター派やカルビン派のような庶民に受け入れられる新派ではなく絶対王政を確立するためのキリスト教だった(エリザベス時代にカルビン派の儀式を取り入れたようです)。トマス・モアの処刑にまで発展した王の離婚。そして新しく迎え入れられた王妃こそエリザベスの母親アン・ブーリンだったのだ。この辺りは映画『わが命つきるとも』を観るとよくわかる。
とにかく国内にも国外にも敵が多いイングランド。しかし絶対王政を築きあげるためには「イギリスと結婚する」と宣言して、ヴァージン・クイーンを名乗らなければならなかった。求婚相手にも動ぜぬ態度をみせつつも、家臣の頭をポカンと殴ったりするところに、彼女の焦りさえ見えるところが面白い。格調高く、威厳を保つ姿。そして華やかな衣装や腹にまで響くような演説をするケイト・ブランシェットは魅力的に映るのですが、ヴァージン・クイーンは嘘だろ・・・などと、前作でジョセフ・ファインズが演じたロバード・ダドリーを思い出す。
全体的にエリザベス1世が美化されすぎてるような気もするけど、常に暗殺の危険に晒されてるところには感情移入してしまう。ウォルター・ローリー(クライヴ・オーウェン)に惹かれたのも、殺伐とした宮廷で彼ならば守ってくれるんじゃないかと本能的に感じ取っていたのだろうか。ネットで調べてみると、このローリーは探検家として有名な実在の人物ですが、スペイン無敵艦隊で活躍したわけじゃないし、海賊としてスペイン船から略奪を繰り返していたのもドレークという人物。ややこしくなりすぎるので、一緒にしてしまったかもしれません。
期待していた無敵艦隊との壮大な海戦スペクタクルはいつのまにか終わっていたました。実はエリザベスが魔女で、嵐を呼び寄せたのか?などと想像する暇もなく、エピローグでおしまい。もしかするとトマスによる暗殺シーンが最もスリリングだったのかも・・・
む、、、
難しい…私がバカなのでしょうか…説明が足りないと言うか、全然、誰が誰なのかわからなくて…
暗殺や拷問シーンがなんでそうなったのか物語だけではわからない…学生でちょうど昨日授業で習ったのであらすじは分かりますが、これだけ観てもわからないと思います。事前知識は必須。私はこの作品だけ人に借りたので観てないのですが前作もたぶん先に観た方がいいと思います。
ケイト様がお美しいのが救いというか(ケイト様が出てるから観たのだけれど)、ケイト様だからなんとか最後まで見れました。
冗長な上に説明不足で意味不明
エリザベスというイギリス王女のはなしです。 処女王と呼ばれた中年女性のおばさんが活躍します。
非常に退屈でした。 前半は結婚、 後半は裏切りと戦争、 などのはなしでした。 冗長な上に説明不足で意味不明でした。 後半の戦争のみ、 多少の見ごたえがありましたが、 それも平凡な範囲に留まりました。 もう少しテンポの良いこうせいにして、 人物や世界情勢などの解説を入れなければ、 誰も理解できません。
ブランシェットを見る映画
イギリスって激しい!モンティ・パイソンやビートルズが居て、とても上手くて素晴らしい役者が多くて、嵐が丘、レベッカなど、キリリとしたエッジの効いた女性作家が沢山いる国。ついでに大好きなケイト・ブッシュがいる国。
それとこの映画は関係ないと言われればそうかも知れません。でも、大変な役割を女が担う(担わざるを得ない)国の面白さをブランシェットは素晴らしく演じていたと思いました。男性社会で女王、あり得るんだ、変、おもしろい。とにかく、イギリスだけでなく、ヨーロッパのその他の国のことも知りたくなる映画でした。
イングランドの歴史ここにあり
女性としての戸惑い、喜び、悲しさ、嫉妬、王としての誇り、強さ、恐怖、迷い、すべてここにある。二時間のなかによくこれだけぎっしり詰めて、息苦しさを感じさせない流れが作れるものだ。
わずかな表情のなかに、微妙な変化があらわれて、ケイトブランシェットはこの役で輝いている。何度見ても感情が揺さぶられる。こういう正統派の歴史映画を日本の歴史でもつくってほしい。
わたくしにだって・・・
「わたくしにだって嵐は起こせます!」
あのシーンに痺れてしまった。
黄金時代を築いた女王。
スペインの無敵艦隊を破った偉業。
ケイト・ブランシェットはまさにはまり役だね。
恋愛を求める人には物足りないだろうけど、懸命に女王としての責務を果たそうとするエリザベス、かっこよかったよ。
強い女として自分の中に深く刻まれています。
国家元首と一人の女という立場の描き方のバランスがうまい
総合:75点
ストーリー: 70
キャスト: 70
演出: 70
ビジュアル: 80
音楽: 75
女王は国に責任があると同時に一人の人間でもある。国家の命運を描けば女王としての人間性に日が当たらず、ただの政治・歴史の映画になる。一人の人間として描けば、女王としての立場・義務が無視されてただの人の人生の話になり作品が安っぽくなる。政治的対立・宗教的対立・国際政治・政略結婚・軍事行動・陰謀といったものから、個人的親愛・恋愛・裏切りと心の傷といったものまで、この作品では両方の立場がバランスよく描かれていたと感じた。
衣装・建物といったものの本物感はかなりのもの。撮影はこだわりが感じられる。映画なのだから当然のことながら動画なのであるが、油絵絵画の紙芝居を見ているようにも思えるようなちょっと重々しい雰囲気やちょっとした芸術性が全体として画面にある。それに合わせ背後で奏でられる音楽は、その画面の雰囲気をでしゃばりすぎないようにうまく盛り上げており、作曲者のバランス感覚に優れているセンスが感じられる。
全38件中、1~20件目を表示