「揉み消し仲介人?」フィクサー(2007) odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
揉み消し仲介人?
原題Michael Claytonは主人公の名前なので邦題は彼の職業のFixerからフィクサーにしたのだろうが日本でフィクサーというと陰で糸弾く黒幕の意味で使われるので字幕で”揉み消し屋”といわれてもピンとこなかった。
実際には仲介業、その道のプロを手配するだけで自身では手は下さない、実行役、証拠隠滅などはクリーナーという別のプロ集団がいるようだ。
劇中でもひき逃げの揉み消し役と思った依頼主が弁護士手配と聞いて怒り出すシーンがあったから本国でも表の存在として知られているわけではないのだろう。
弁護士事務所のボスからの評価が高く、ダンディなジョージ・クルーニーが演じているのだから、さぞや切れ者との期待は高まるがギャンブル狂で借金まみれ、うだつもあがらない様子ばかり描くのだから戸惑うばかり。重宝されるのは弟が警察関係者だからかと邪推してしまいます。
派手な爆破シーンを先に見せて四日前に話が戻る設定なのだが、テンポが悪く数週間以上かかっている気にさせられた。除草薬の公害訴訟に関わる陰謀というプロットは早々に見えてしまうので謎解きの魅力もない、殺し屋もわざわざ足の指に毒薬注射で事故死に見せかける手の込んだ偽装工作をした一方で主人公にはマフィア映画モドキのど派手な車爆破というぶれ方は脚本ミスとしか思えない。
したがって狙いとしては犯罪者も含めて生々しい人間描写を見てくださいと言うことなのだろう、ヒール役が悪人になりきれないキャリアウーマンだったり、良心の呵責で原告側に寝返る老弁護士、主人公も一時、金に負けたものの消される恐怖を味わったことで目が覚めるなど人間の醜さの反面、弱さも提示してリアリティあるヒューマン・ドラマに仕立てたかったのでしょう。
当初のキャスティングはデンゼルワシントンだったらしいがトニー・ギルロイ初監督作品と言うことで二の足を踏んだらしい、ジョージ・クルーニーはトニー・ギルロイのオファーに根負けしたようだが自身、ダンディ・イメージの脱却に惹かれたのかもしれない、ただ、ご本人には失礼ながら何をやってもジョージ・クルーニー、しょぼくれ役は不釣り合いに思えてしまいます。
大きな賞にも絡んだ話題作ですが観終わってみれば良くある話でテンポの悪さもあり、タイトルから王道のサスペンスものを期待したのが裏目にでた感が拭えませんでした。