劇場公開日 2008年4月12日

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フィクサー(2007) : インタビュー

2008年4月9日更新

演技派と言われて久しいティルダ・スウィントンが、先の第80回アカデミー賞において最優秀助演女優賞を受賞した。意外にもオスカー初受賞。そして意外にも出番が少ない! しかしそんなことも忘れさせてしまうほどの圧倒的な存在感を見せつける。(取材・文:木村満里子)

ティルダ・スウィントン インタビュー
「この映画は、非人間的決定の一つ一つを、人間的観点から描いているのよ」

アカデミー賞では初ノミネートで助演女優賞を受賞
アカデミー賞では初ノミネートで助演女優賞を受賞

──今回は珍しく悪役で、しかもジョージ・クルーニー演じる主人公の敵役です。出演を決めた理由と、この役を演じた醍醐味を教えて下さい。

人間くさい“社畜”を熱演
人間くさい“社畜”を熱演

「理由は、脚本・監督のトニー・ギルロイね。彼に会ってみただけで十分だった。それと脚本を読んだ時、悪役に対する考え方が私の考え方と同じだとわかったのも大きいわね。人間を非人間的な行為に走らせるものは何だろうと以前からずっと考えていたのだけれど、これはその問いを説明する脚本の一つだったの。非人間的決定の一つ一つを、人間的観点から描いているのよ。それにこの悪役を男性に置き換えることは簡単だけれども、『フィクサー』では女性で、トニーは私にその役を演じる機会を与えてくれた。興味深かったのは彼女が本当に良い子だという点ね。良い子になることに一生懸命で、ガラスの天井に突き当たることに意味を見出さない。ボスが望む通りの人物になろうとするのよ。それは間違っているんだけれどね」

──彼女が鏡の前で強い女、出来る女のセルフイメージを作っていくシーンが印象的ですが、このプロセスはある意味女優的でもありますね。

ルックスと役柄をミックスさせるのが 楽しいと語るティルダ
ルックスと役柄をミックスさせるのが 楽しいと語るティルダ

「そう、似合わないメイクをしたかわいそうな女優みたいね。この女性は常に仮面をつけているのよ。だから体型に合っていない服を着て、顔立ちに似合わない化粧をしているの。彼女にとってオフィスは戦場で、自分はユニフォームを着た兵士なのよ。本来の自分自身と会社での自分との間の差異を、衣装やメイクから見てとることができるわ。それとバスルームのシーンで、彼女が鏡に映る自分に話しかけながら、汗をかき、必死に仕事用のアイデンティティをまとっていくプロセスは、演じるにあたってエキサイティングなシーンだったというだけでなく、この映画の姿勢自体を表していると思うわ」

──ご自身の肉体についてはどんな考えをお持ちですか? 中世の宗教画のような個性的な顔立ちによって、天使の役や中性的な役を演じることも多いですが。

「キャスティングする際には、俳優の肉体のマテリアルは重要な要素だと思う。私がどんな風に見えるか、どんな風に見ることができるか。でもたとえ同じようにルックスが選定理由になっていたとしても、その選定ポイントは作品毎に異なるはず。だから俳優側としてはただベストを尽くして演じるしかない。ただ一つ言えることは、自分のルックスと役柄をミックスさせて化学反応を起こさせることを、仕事の一部として楽しんでいるってこと。だってそれって、後ろに隠れているものを見つけだす探偵の仕事のようで面白いじゃない(笑)」

>>トニー・ギルロイ

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