ライラの冒険 黄金の羅針盤 : 特集
第1回:「ライラの冒険」の原作はココがスゴイ!~5つのポイント
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【その4】物語のテーマも大人向き! 米キリスト教団体がボイコット!
フィリップ・プルマンが7年の歳月をかけて書いたこの物語のテーマは、単純な勧善懲悪ではない。

プルマンが意識したのは、ミルトンの「失楽園」や、聖書の「創世記」のイブが禁断の木の実を食べて楽園エデンの園を追放される部分。プルマンは、イブが知恵の木の実を食べたことは、堕落ではなく、神による抑圧からの解放を意味するのではないかと考えて、この物語を構想したという。知識を追い求める無神論者のアスリエル卿、愚民には彼らを指導する権威が必要だと考えるコールター夫人、彼らとは別の道を模索するライラ――それぞれの冒険の背後には、壮大なテーマが秘められているのだ。
ちなみに、米キリスト教団体のカトリック連盟は、原作でカトリック教会を彷彿とさせる教会組織が否定的に描かれていたり、人間による神や天国への反乱が重要なテーマとなっていることから、信者に同作のボイコットを求める運動も起きた。
【その5】ファンタジーのお約束も踏襲! 楽しいギミックがいっぱい

とは言え、原作には幅広い年代に愛される親しみやすいファンタジー的要素も多数。その中でユニークなのが、守護精霊“ダイモン”の存在。動物のかたちをしてひとりにつき1キャラクターが設定されている。その人間の性質を現した動物をかたどっており、劇中には猿、豹、うさぎなど様々なダイモンが登場。「ポケモン」的な楽しさもある(ちなみに公式サイトには“ダイモンジェネレーター”なるものがあり、質問に答えると自分のダイモンが判定されるので、試してみては?)。また、“鎧熊”族のイオレクは、鎧をまとった白熊族の放浪の王子。「ナルニア」のアスラン+「指輪物語」のアラゴルン的キャラクターで、主人公ライラを助ける。
その他、魔女、気球を操る冒険家、ジプシャン族など様々な種族・職業が登場するものファンタジーのお約束といえるだろうし、タイトルにもなっているキーアイテム“黄金の羅針盤”といった辺りの要素は、映画でも忠実に映像化されているので、原作を読みながらイメージを膨らませると面白い。
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このようにフィリップ・プルマンの「ライラの冒険」3部作は、ファンタジーの枠を超え、文学作品としても高く評価されている。映画の予習のために原作を読んでみることをオススメするが、映画のことを抜きにしても、面白さにハマること請け合い。見逃していてはもったいない!?
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