劇場公開日 2025年7月11日

「容赦のないダメ男映画としても出色」ONCE ダブリンの街角で 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 容赦のないダメ男映画としても出色

2025年7月31日
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名作の多い音楽映画の中でも指折りに大好きな作品を、日本最終上映ということでスクリーンで再見。次作『はじまりのうた』以降は商業映画である責任を背負った感のあるジョン・カーニーだが、本作は低予算で作られたというだけでなく、インディペンデントならではの粗さが目立つが、むしろ磨かれすぎてない宝石に直接触れられるような手作り感になっているのが良い。本職のミュージシャン2人を主演に迎え、楽曲制作を任せたのも素晴らしく、音楽絡みのシーンはすべて生もののような説得力が宿っているし、音が重なることによって音楽が生み出されていく興奮を伝えてくれる楽器屋と録音スタジオの名シーンは凡百の音楽映画からも抜きん出ている。あと、主人公の男のダメさ、情けなさ、ヘボさ、あわよくばを狙うしつこさを、これでもかと曝け出すように描いていて、容赦ないダメ男映画としても一級品だと思う。

村山章
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