ブレイブ ワン : インタビュー
「モナリザ」(86)、「クライング・ゲーム」(92)、「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」(94)、「ことの終わり」(99)など多くの名作を世に送り出してきたアイルランドの鬼才ニール・ジョーダン監督が、ジョディ・フォスターの要請に応えて完成させた新作「ブレイブ ワン」のPRのために来日。ジョディ・フォスターや、76年の名作「タクシードライバー」との比較、そして自身初めての撮影となった舞台のニューヨークについて話を聞いた。(編集部)
ニール・ジョーダン監督インタビュー
「この映画は、復讐というテーマに重きを置いたストーリーなんだ」
――久しぶりの来日となりましたが、何回目の来日ですか?
「今回で3回目だね。最初が第1回東京国際映画祭に『狼の血族』(84)を持ってきたときだったかな。2回目ははっきりと思い出せないんだけど、『クライング・ゲーム』のときかもしれないね」
――ジョディ・フォスターは「クライング・ゲーム」を見た後から、あなたと一緒に映画を作ることを望んでいましたが、彼女との初めての仕事はいかがでしたか?
「ジョディは素晴らしかったよ。今まで仕事した中で一番の女優じゃないかな。世界一だよ(笑)」
――今回の作品は、ニューヨークを舞台に孤独と暴力を描いた約30年前の「タクシードライバー」を彷彿とさせますが、ジョディとあなたは、21世紀の「タクシードライバー」を作ろうとしたのですか?
「いや、それは違う。21世紀の『タクシードライバー』を作るなんて不可能だよ。この『ブレイブ ワン』はもっと復讐というテーマに重きを置いたストーリーなんだ。かつて、ドン・シーゲルやサム・ペキンパーたちが作っていたような感じのね。とても直接的に復讐を描いている。そしてパラノイアを描いた映画でもある。ニューヨークという環境が直接脅しをかけてくるのではなく、エリカが暴漢に襲われ、すべてを失ったことにより、恐怖を誘発し、その悪夢に苛まれ、それによって彼女はパラノイアを引き起こしているんだ。だから、自分では『タクシードライバー』とはちょっと違う映画だと思っているんだよ」
――でも、エリカ(ジョディ)が最初に拳銃を撃つところと、「タクシードライバー」のトラビス(デ・ニーロ)が最初に拳銃を撃つところは、コンビニで強盗を射殺するという同じシチュエーションでしたし、「タクシードライバー」でトラビスに助けられた娼婦のアイリス(当時12歳のジョディ)が今度は「ブレイブ ワン」で若い娼婦を助けるなど、かなり意識していると思わせるところがありました。
「うーん。まあ良く覚えてないけど、そうなんだね。確かに同じように見えるかも知れないよ。多分なんらかの影響を受けているんだね」
――テレンス・ハワードの刑事役は、ニール・ジョーダン映画の常連俳優スティーブン・レイでも良さそうでしたが、今回は出演していませんでした。
「確かにスティーブンを刑事役に考えたこともあったんだけど、脚本を読んで、ニューヨークの街中をロケハンで歩き回っているうちに、この映画を、俳優から小物、建物すべてに至るまでニューヨークのものでぎっしり詰め込んだ、完全なニューヨーク映画にしたくなったんだよ。狭いスペースだけど、巨大な都市で、ある意味魅了されたわけだ。それで、北アイルランド出身のスティーブンではなく、テレンスのようなニューヨークからキャリアをスタートさせた俳優をキャスティングしたわけさ」
――そういえば昨年、あなたの長年の協力者である、プロデューサーのスティーブン・ウーリーにも取材しました。また彼と仕事をすることはあるのでしょうか? そして小説は今でも書いているのですか?
「ああ、スティーブンは『ブライアン・ジョーンズ/ストーンズから消えた男』で来たんだね。彼は素晴らしいプロデューサーだから、また一緒に仕事が出来ればと思っているんだ。小説についてだけど、今まさに書き始めているところだよ。やっぱり小説はいいよね。映画はどうしたって、お金がかかりすぎるし、人も使う。本当にキツイ仕事だよ。それでも映画が好きなんだけどね(笑)。今度はダブリンを舞台にした犯罪ドラマの大作を撮りたいと思っているんだ。ダブリンは今とても暴力的な街になっていて、いいタイミングだと思う。面白い映画になると思うよ」
――キャストにはコリン・ファレルあたりを起用するんですかね?
「ハハハ。そうかもね(笑)」