ブレイブ ワン : 映画評論・批評
2007年10月22日更新
2007年10月27日よりサロンパス・ルーブル丸の内ほかにてロードショー
リベンジは心の均衡を保ってこそ成り立つ?
結婚式を前に幸せな日々を送るDJエリカだったが、婚約者と散歩中にチンピラに襲われる。昏睡から目覚め、婚約者が殺害されたと知った彼女は、消えない恐怖を克服するために銃を入手。ある夜、コンビニで暴漢に遭遇した彼女は……。
「狼よさらば」あたりからジャンルとして確立した復讐映画だが、バイオレンス主体のアクション映画がほとんど。が、ニール・ジョーダン監督の本作は、理由なき暴力の被害者と彼女と友情を培う刑事の情感に重きを置く心理ドラマの様相を帯びている。精神的安心のために手にした銃で偶発的に身を守ったエリカはやがて“正義”のために銃を使い始める。ここで、彼女が得るのは満足感ではなく葛藤だ。社会悪を排除しても、暴力に耽溺することはない。精神的な強さを感じさせるが小柄&知的なジョディ・フォスターがヒロインを演じるせいか、モラルの崩壊直前で踏み止まろうと悩む姿が非常にリアル。
我々は日常生活を送りながらモラルを確立していくが、善悪の基準はかなり曖昧だ。その不安定なラインを超えて「復讐するは我にあり」となることを野蛮と感じる人もいるだろう。とはいえ、善と暴力に葛藤する登場人物を見るとモラルのバランスが保てれば正義のための暴力もありと思えてくる。さらに言うと、法が機能しない場合は私怨による私刑もありなのかも、と。見る人のポリティカル・コレクト度が自己判断できる踏み絵のような作品だ。
(山縣みどり)