エディット・ピアフ 愛の讃歌 : 映画評論・批評
2007年9月25日更新
2007年9月29日より有楽座ほかにてロードショー
愛に傷つき、歌に生きた伝説の歌姫の真実
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(C)2007 LEGENDE-TF1 INTERNATIONAL- TF1 FILMS PRODUCTION OKKO PRODUCTION s.r.o.- SONGBIRD PICTURES LIMITED
大道芸人の娘に生まれ、売春宿を営む祖母に育てられ、失った視力を奇蹟的に回復させ、街角からデビューした伝説の歌姫エディット・ピアフ。不幸な生い立ちとスキャンダル、「愛の讃歌」はじめ自身の人生を反映させたバラードで庶民に支持され、フランスの国民的歌手になったピアフの人生を描く。
ロマンス小説ばりにダイナミックなピアフの人生だが、第2次大戦中の反ナチ活動やイブ・モンタンとの恋といった有名エピソードをオリビエ・ダアン監督は大胆に割愛。飛行機事故死で幕を閉じたボクサー、マルセル・セルダンとの純愛を彼女の人生の象徴とし、ピアフの真実を探っていく。新鮮な手法から浮かび上がるのは、愛に傷つき、希望を失いながらも歌への情熱だけは決して失わなかったピアフ像。短い生涯で人一倍の不幸と幸せを体験した彼女にとって歌こそが人生の礎だったのだ。ピアフの歌声とドラマが重なり、感動もひとしお。主演のマリオン・コティヤールは、数奇な人生が生んだトラウマゆえに複雑な性格になったピアフを怪演と呼びたくなるほどに熱演。気まぐれで下品で不埒だが、愛さずにいられないマリオンのあだ花ぶりは、それ自体がフランス映画史の伝説になるに違いない。
(山縣みどり)