長江哀歌(エレジー)

劇場公開日:2007年8月18日

解説・あらすじ

06年のベネチア国際映画祭で金獅子賞に輝いた、中国の若き名匠ジャ・ジャンクー監督による人間ドラマ。ダム建設によって水没することが決まっている三峡の街。16年前に別れた妻子を探しにこの街を訪れた炭鉱夫サンミンは、かつて妻が住んでいた場所がすでに水没してしまったことを知る。一方、音信不通の夫を探しにやって来たシェン・ホンは、夫が働いていた工場を訪れるが、そこに彼の姿はなく……。

2006年製作/113分/中国
原題または英題:Still Life
配給:ビターズ・エンド、オフィス北野
劇場公開日:2007年8月18日

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映画レビュー

4.0 中国版ノマドランド──資本の論理に翻弄される普遍的な痛み

2025年8月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

20年前の中国をリアルに記録している。検閲をどうにかくぐり抜けた作品だと思う。そこに二人の主人公を据えて、変わりゆく社会を生きる人の姿を象徴的に描いている。

社会や経済の変化によって地域社会は崩壊し、家族も離散する。先の見えない未来を抱えつつ「何とかなるさ」と漂うように生きていく。クロエ・ジャオの『ノマドランド』と共通の構図であると思った。本作の方が20年近く先行しているのだけれど。

映画には当時の中国の社会状況が見事に刻み込まれている。
舞台は清朝以来の国家的悲願とも言われた三峡ダム建設で、数年かけて水底に沈んだ地域だ。
主人公の炭鉱夫は、おそらく一人っ子政策の影響で女性が少なく結婚が困難な時代に、高額の持参金を工面して結婚した。しかし妻子とは16年も離れ離れだ。
それは農村の労働者が出稼ぎに出なければ生きられない時代になりながら、家族そろっての移動は制限されていたという、経済は資本主義的に回しつつ強力な共産党体制で管理するという社会の矛盾の産物でもある。

思えば日本でも似たことはあった。高度成長期の出稼ぎ労働や都市移住で、地縁や血縁が大きく崩れた。私自身も地方の本家の長男だが、親戚関係の継続はもう無理で、私の代で終わるだろうと感じている。

この映画から見えてくるのは、経済と資本に支配された社会での人間関係の脆さと儚さだ。その点で、現代の私たちとも共通する課題を生きている。

そして今、西側世界では、資本の論理や自由主義的な能力主義からこぼれ落ちた人々が「反乱」とも言える動きを見せている。
『長江哀歌』に映し出された人々のように、社会構造の変化に翻弄され、孤立しながらも生き抜いている。何かを奪われてしまったような痛みを感じるのは当然なのだけれど、痛みはゆっくりやってくるから、気がつけない。私たちはゆでガエルなのだ。いつのまにか辛いことになっている。

だからこそ、この映画を観ることは「対岸の国の出来事」ではなく、私たち自身の社会にも潜んでいる普遍的な痛みを感じ取る経験となるのだと思った。
近現代中国の実像を見る機会も少ないから、その意味でも貴重な作品。この機会に見れて良かった。

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nonta

5.0 長江沿いの三峽。 巨大ダム建設で、誰もが立ち退きを余儀なくされた街...

2025年8月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

驚く

長江沿いの三峽。
巨大ダム建設で、誰もが立ち退きを余儀なくされた街が、大河沿いにいくつも。

街ごと水没なので、大勢が立ち退きになり。
皆が中国各地に散り散りになった一方で、
生き別れた人に再会したいと、尋ね人が遠くから来て、
古い住所を書いた紙を持ってきたり、古い記憶で訪問してくるものの
ある街は既に沈み、他の街はこれから沈むと。

古くからの街の人々、建物を取り壊す労働者、ダム建設の業者、人探し・・・様々な人の機微。
大河沿いの眺めが、詩的で美しくも切なく。
静かな傑作でした。

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woodstock

4.0 中国では

2025年8月15日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

中国では何時の時代も最下層(農民戸籍若しくは無戸籍?)の人達が繁栄の陰にいる事を見せてくれる。2025年『青春』シリーズ3部作は、比較的最近の中国の青年達の実相を切り取っているし『盲山』に至っては中国国内では上映禁止になる"農村部、山間部では未だにある人身売買(若い女性)"の実態を目の当たりにした。本作は、その意味で、所謂、現実を見せられた作品と言える。

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Cabe

3.0 絶世の美女の悲恋。題名見て勝手にそう思っていた(笑) ?やさぐれた...

2023年8月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

絶世の美女の悲恋。題名見て勝手にそう思っていた(笑)
?やさぐれたおっさんが金で買った嫁探してるだけやん。子どもに会いたいらしい。
いつのまにやら主役交代。今度は水パクリ女だ(笑)こっちも旦那を探してる。こちらはめでたく…
またおっさんに戻る。

ところでこれ何がいいの?UFOとロケットビルは何?どういうこと?賞を受賞したらしいが私には全く面白くなかった。こういう作品に深みと意味を見い出せるようにならねば評論家にはなれないのでしょうね。賞とか取ってる作品ほど私的には面白くない作品が多い。

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はむひろみ