「とってもこころ温まる映画です。」幸せのレシピ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
とってもこころ温まる映画です。
「幸せのレシピ」を見つけたくなったことは、ありませんか。
小地蔵の元には、時々そんなオーダーが舞い込んできます。
仕事に生き甲斐を見つけることは素敵なことです。
ただそれだけで幸せでしょうか。
休日はひとりで過ごし、
デートに出かけることもない。
知人に食事に誘われても、
どうしても自分の殻を出ることができない。
飲み会でも、人にお酒を勧めるばかりで、
話の輪には入らず、
他人との時間を共有できない。
人に自分の不器用さを何とか認めてもらおうと、
主張すればするほどに、
ドツボにはまってゆくご自身を嘆いていませんか。
逆にコンプレックスから、
些細なことで人を見下したり、
きつい言葉をはき出してしまってはいませんか。
どんなに仕事で才能を振るっていても、
スタンドプレーの壁に当たるたびに、
その壁が意味することに思い至らず、
どこかで得られる
「幸せのレシピ」を探されてはいないでしょうか。
申し訳ございません。
実は、小地蔵の元にも、
「幸せのレシピ」はありません。
そしてそんなレシピを作るシェフは、
この世もあの世も通して、
どこにも存在しないのです。
それは皆さんのこころに存在します。
閉ざしていたこころが開けば、ほら!
見えるでしょう(^.^)
そしてね、「幸せのレシピ」とは、
皆さんご自身が、
幸せになるためのレシピではないのです。
本当の意味は、
誰かを「幸せにするためのレシピ」なのです。
料理って、本来そういうものでしょ(^.^)
皆さんご自身が作られた極上のレシピで、
誰かが微笑んだとき、
こころを通わせたとき、
ホラ!
皆さんのこころも幸せになりませんか。
これはそんな気持ちにさせてくれる、
とってもこころ温まる映画です。
自分の料理を認めないお客に対しては乱暴な言葉を投げつける職人肌でストイックな女シェフである主人公のケイト。
そのケイトの姪で、母親を事故でなくして叔母であるケイトに預かられる利発な少女ゾーイ。
当初シェフである自分のポジションを奪いかねないと敵視するものの恋に落ちる相手が、自由奔放なニック。
面白いのは、ケイトはそのストイックさで他人にこころを閉ざして、カウンセラーにかかっています。
そんなケイトが手を焼くことになる姪のゾーンも、母親を失った悲しみからこころを閉ざしています。
こころを閉ざしている人が突然こころを閉ざしている子供の面倒を見なくてはいけなくなって生み出すエピソードがこの物語の悲しみと可笑しさを醸し出します。
母親を失ったゾーイの悲しみは深く、何度も試写会に参加した女性の涙を誘っていました。でも次のシーン、食事もしないゾーンに、悪戦苦闘するケイトの仕草に笑いも絶えず起こっていました
そこにケイトとは正反対の性格の陽気で奔放なニックが絡むことで、二人にも転機が訪れます。ニックのゾーンに対する子供目線の接し方を見て、ケイトは自分がいかに他人に無関心であったか思い知らせるわけなんですね。
だからこの物語は、たった2時間で誰もが求めている「幸せのレシピ」を、観客にもコーチングする内容になっているなと小地蔵は思いました。
それぞれ個性あるキャラに時々やらかせるボケた演技と絶妙なつっこみで、暗くなりがちなこの作品に笑いを誘ってくれます。それはまるで寅さんを見ているような軽妙さでした。けれどもアメリカ映画にありがちな大味なギャグは一切なく、悲しみも笑いも演出に一定の抑制がきいています。だからすごく自然にストーリーに感情移入できることでしょう。
ヒューマンでハートウォームな作品がお好きな方でしたら、絶対に期待を裏切らないいい作品でした。ラストシーンでは思わず微笑んでしまうことでしょう。
天才子役アビゲイル・ブレスリンちゃんはとてもかわいかったです(^.^)
プロの指導の下で、緊迫した調理現場を再現しているだけに、次々と見せつけられる絶品料理には、きっとこの映画を見た後おいしいイタリア料理とワインが欲しくなります。実写だけに、そのインパクトは「レミーのおいしいレストラン」以上でしょう。客席でお腹が“グゥ”と鳴るのが嫌な方は、きっちり食事をとられてから見ることをお薦めしますよ!