「キャサリンさんの後姿」幸せのレシピ とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
キャサリンさんの後姿
前から見ると、キャリア女性として一部の隙もない完璧な女性。
でも、後ろ姿をみると、年齢を考えると抜群のプロポーションだが、ちょっとお肉のついたしっかりとした背中・ヒップ。疲れがにじみ出ていて…。
いかにも肩肘張って頑張っているキャリアシェフ。
そんな対比が、妙に現実ぽくって、絵空事の恋愛コメディを一気にワーキングウーマンにとって身近な物語に変えたなあと親近感がでました。
これって演技?だとしたら凄すぎます。
なんですが、展開が早すぎて、あれよあれよという間に、一気にハッピーエンドになっていく。
ご都合主義?
取り残された気分で、主人公やゾーイに思い入れができませんでした。
シーンシーンは見応えあるものだっただけに残念です。
『シャイン』の監督。そういえば、『シャイン』も、ラッシュ氏の演技に圧倒されて食い入るように鑑賞したけれど、映画としては上辺をさらったかんじで物足りなかったです。監督の作風なのかしら?
ニックを演じたエッカート氏は『ハドソン川の奇跡』でも、いいポジションで映画を支えていました。料理でいえば、存在を大きく主張はしないけれど、あることによって満足度が変わる付け合わせ的。
ゾーイ役のアビゲイルちゃんは『私の中のあなた』でも、ものすごく複雑な役を演じていた実力ある女優。そちらと比べると今作は中途半端。演技はさすがと賞賛したいです。けれども、演出がゾーイの心情を深めていないようでもったいない。拒食だって、母を亡くして、突然生活が変わってしまって、食べられなくなったのと、仕事人間で、ゾーイに気を使っているけれど、理解しようとせずに自分のやり方押し付けてくるケイトへの反発とか、いろいろあると思うけれど、そのあたりが、子ども目線で描かれるのではなく、ケイトと同じ目線でゾーイを観ています。だから、薄っぺらいものになってしまっています。
仕事一辺倒の女性が、仕事にもすてきなことがあるって気づかされるっていう映画。食べているシーンとかは楽しそうなんだけれども、遊園地等のハレの日のシーンをビデオで見ている感じ。日常=ケの日や、日々の暗い場面=曇りや雨の日をもっと丁寧に描いて欲しかったです。
ドイツ映画のリメイク版。オリジナルは未鑑賞。オリジナルは人物描写がもっと細やかだと聞きます。
オリジナルとの違いを出すために、あえて人物描写は踏み込まなかったのかしら。でも、これだけの役者を集めてもったいないと思ってしまいます。