ヘアスプレー : 映画評論・批評
2007年10月9日更新
2007年10月20日より丸の内プラゼールほかにてロードショー
ポジティブで無邪気な「思わず踊り出したくなっちゃう」世界
1962年のボルチモア。起床するなりハイテンション、プニプニした肥満体にハッピー感をみなぎらせつつ歌い踊るトレイシーに、たちまち心を奪われる。TVのソング&ダンスショーに夢中な彼女はおデブのコンプレックスなんてブッ飛ぶほど、ポジティブで無邪気。そのエネルギーが、画面を超えて伝染する!
舞台ミュージカルの映画化だが、元はバッド・テイストの帝王、ジョン・ウォーターズ(露出狂役で出演)の監督作。彼のファンは、あまりにスウィートな仕上がりに驚くかも。でも、これはミュージカル。差別の醜さはきっちり伝えつつ、「夢見ること」、「自分を、他人を受け入れること」の大切さがビートに乗って心を満たす。ここにあるのは登場人物のあふれる思いや会話を歌と踊りに乗せて共感を呼ぶ、ミュージカルそのものの魅力だ。
成功した理由のひとつは、愛さずにはいられないほどチャーミングな主役のブロンスキーほか、華と実力のあるキャストがぴたりとはまったこと。二枚目のエフロンはもちろん、超重量級ママ役のトラボルタ(!)も驚くほどラブリーだし、パパ役のウォーケン、意地悪なファイファー、司会者のマーズデンに迫力のラティファーまでが画面をさらう楽しさ! 舞台=ライブのもたらす興奮に決して劣らない「思わず踊り出したくなっちゃう」世界に、のめり込まずにはいられない。
(若林ゆり)