劇場公開日 2007年6月23日

「大林マジックが楽しめる!」転校生 さよならあなた mac-inさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0大林マジックが楽しめる!

2025年3月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

大林宣彦が82年に作った「転校生」を2007年にリメイク。ただ、前作と入れ替わる設定だけ同じで、ほとんどオリジナル。

冒頭から、大林マジックで、あれよあれよと映画の世界に入ってしまう。登場人物は皆、いつもどおり大林のバイアスがかかっていて、なんか変(登場人物がちょっと躁状態)。皆楽しそうにイキイキしている。キャスティングがいいのか皆役にうまくハマっている。うまいもんだ。今回もお馴染みの男女入れ替わりのエピソードがちょっとHに綴られる。今回は、小林聡美のように胸が見えるまでいかないが、なかなかエロチック。

結局大林は、元祖「萌え~」系だったのか~と納得(デビュー作「HOUSEハウス」も少女たちの脱ぎッぷりがよかった)。と、スケベ心をもたげながら見ていくと、今回のテーマはシリアス。一方の女の子が不治の病で余命3ヶ月。シリアスでいながらちょっと可笑しく、泣かされる。賛否両論ありそうな結末だが、私はよかった。また同じのを作ってもしかたない。これは、大林宣彦の哲学が感じられる映画。人は死んでも、物語は永遠。なるほど。

入れ替わりも以前のように単純でなく、それぞれの要素が少しづつ残っている。それがまた元に戻り、それぞれへの理解が深化する設定。結局一方が死んでも、一人のなかに二人分行き続けるということになる。なるほど。キルケ・ゴールの言葉で、死に至る病は「絶望」だそうです。なるほど。意外と哲学をする映画でした。

主人公の女の子役の蓮佛美沙子はNHKのドラマ「七瀬ふたたび」などで主演していたが、あまり華のない主人公だと思ったが、この映画では、小気味よい演技で良い。やっぱり演出で役者は変わるもんだと思った。まあ大林の演出はちょっと独特の臭さがあるけど、それが気にならなければ楽しめる映画。劇中で歌う主題歌もよかった。

でもやはり82年の「転校生」のほうが傑作だと、改めて思ったり‥。

mac-in