「日曜日の昼間に見たい」サイドカーに犬 きのこの日さんの映画レビュー(感想・評価)
日曜日の昼間に見たい
タイトルに惹かれてみてみた。
とある薫という女性(ミムラ)の少女時代の夏の思い出がテーマの映画。
弟から、結婚の報告を受け、離婚した両親が参加することを聞かされた薫が、昔のことを回想する形で物語はすすむ。
おとん(古田新太)に愛想を尽かしたおかん(鈴木砂羽)が出ていってしまって、刺激的な夏が始まる。
かっこいい自転車に乗った洋子さん(竹内結子)という女性がご飯を作りに現れる。おとんも「今日から飯を作ってくれるから」としか説明なし。
自由奔放な洋子さんとの初めてばかりの夏。禁止されていたコーラ、乗れなかった自転車。薫の世界がかわっていく。
竹内結子さんがすごく魅力的な作品。ちょっと演技が臭いというか、気に入らない人もいるかもしれないけれど、どうにもならない思いが溢れてパンケーキを食べながら薫の前で泣いてるシーンがとてもかわいかった。洋子さんというある意味アンバランスな女性を見事に表現してた。
でも実は一番素晴らしかったのは、薫役の女の子!!
芦田まなちゃんなんて目じゃないくらい上手だった。
てか、薫っていう役柄に彼女がピッタリだった。
薫は、口数は少なくてでもすごく芯の強い女の子。洋子さんの「ハードボイルドな女」、おとんの「お前はブレないね」の言葉に象徴される。
印象的なシーンが何個かあって、このお話を象徴してるようなシーン。
1.薫と洋子さんがならんであるく
洋子さんが「薫はいっつもそっち側なんだね」っていう。
薫は、いつも左側をあるこうとする。
洋子さんが、「わたしもそうだったけどいつの間にかどうでもよくなっちゃった」っていう。
薫が、「わたしもそうなるのかな」
洋子さんが、「薫は大丈夫だよ」
っていう。
そうなんだな。薫は大丈夫なんだよな。
映画のラスト近く、現在のシーンで、弟から薫に連絡が入る。
昼間にひどいことを言ってすまなかった、姉ちゃんがあまりに昔から変わってないからイラっとした。と。
あぁ、と思った。
誰だって、ブレずに真っ直ぐに大人になりたい。自分のままで、ずっと左側を歩くこだわりを持ち続けるように。
弟の感覚がすごく繊細で普通で。
それに対するミムラの反応がいい。
それをいいと思って無さそうななんともいえない感覚。
そんな弟は結婚をして、薫は独身。
2.やりきれない思いに悶える洋子さんのセリフ
嫌いなものを好きになるより、
好きなものを嫌いになる方がずっと難しい。
好きなものを嫌いにならないといけない場面に直面した人だけが言えるセリフだなとおもった。
何気ない夏の思いでのお話のようで、いろんな思いのつまった作品でした。
俳優陣も非常によいです。
ラストシーンもたまらない。
詳しくは書きませんが、そっか、そうだよな、振り返らないよな。ってなりました。
誰にでも忘れられないひとがいて、でも何十年かたってすれ違う事ができたならわたしは振り返るのかな。
日曜日の昼間にみたくなるような、あったかく切ないお話でした。