眉山のレビュー・感想・評価
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母の秘密の箱
母と娘、女同士の二人家族。
お互い何も不自由がないときは、他愛もないことで喧嘩もできたが・・・
母が癌の病に倒れ、突然目の前の景色が変わっていく。
母は潔く、強く、堂々と小料理屋で働き、娘を育て上げた。
友人の計らいで母の秘密の箱を手にする。
何通かの古い手紙があり、それは母と父のものだった。
若かった二人はお互いを思う気持ちを躊躇なく書き綴った。
手紙の中が、何も気にせず愛し合える唯一の場所だった。
父には既に家族がおり、親の病院を継ぐ手筈も整っていた。
ある人にとって母は、殺したいほど虫唾が走る、嫌な女なのだ。
母は父について、本当に本当に大好きで心底愛し合った人よ。と語った。
結局父は何も捨てず、責任の重さに苦しみ、母に別れを告げた。。
母は眉山を眺め、ある時は怒り、ある時は泣き、ある時は笑った。父を想い・・
娘の尽力により、母は衝撃と共にある確信を得る。
私たちは正真正銘、神が認めた二人なのだと。
出会ってから、死んだ後のあり方まで・・・
母の人生は、父への想いで満たされていた。
女としては、最上の生き方ではないだろうか。
結ばれずとも、心底貫き通して生きていく。
母がこんな女性だったら、同じ女として嫉妬せずにはいられない。
献体がなければ医者は育たない。
映画「眉山」(犬童一心監督)から。
観ようと思った動機が、物語の主人公である母役と娘役が、
宮本信子さんと松嶋菜々子さんだったので、不純ではあったが、
観終わると、さだまさしさんの原作らしい「爽やかさ」が残った。
特に、末期がんに冒された母、龍子さんが
献体支援組織「夢草会」に登録をしていたことが印象的である。
インターネットによると「献体」とは「医学および歯学の発展のため、
また、力量の高い医師・歯科医師を社会へ送りだすために、
死後に自分の肉体(遺体)を解剖学の実習用教材となる事を約し、
遺族が故人の意思に沿って医学部・歯学部の解剖学教室などに
提供することである」
いくら医療技術が進もうと、医師が扱うのは「生身の人間」であり、
それは、どれくらい多くの解剖(手術)を経験してきたかにより、
医師として自信がついてくるものではないか、と思う。
家族(遺族)としては遺体が長い期間戻らず、ヤキモキするだろうが、
「献体がなければ医者は育たない。お母さんはそういう深いところで
医学を理解しているんじゃないですか」という台詞が示す通り、
死んでも、社会の役に立とうとする献身的な心構えがあるからこそ
生きている時も、悪いものは悪い、ダメなものはダメと、
誰彼とはなく、叱ることが出来るのだろう、と羨ましくもあった。
「生き様」だけでなく「死に様」をも考えさせられた作品として、
私の今後の生き方の参考にしたい。
P.S
親子(母娘)をテーマにした映画で「また親子丼か」という台詞、
意味もなく可笑しくなりメモしてしまったが、考え過ぎだろうか?
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