BRICK ブリック : 映画評論・批評
2007年4月10日更新
2007年4月14日より渋谷シネ・アミューズにてロードショー
ハードボイルド的暴力が横溢したネオ・ノワール!
排水溝に横たわる若い女子高生の死体から始まるイメージはジェームズ・エルロイの小説か、デビッド・リンチの映画を想起させる。そこから始まるクライム・ストーリーはすべての人物の行動と台詞が謎めいていて奥ゆかしいのだ。ダシール・ハメットやレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の世界を、現代の南カリフォルニアの高校に変換したアイデアの勝利である!
主人公はソフト帽とトレンチコートでなく、フード付きのパーカーを着た高校生。ティーンエージャー特有の心の揺らぎやロマンティシズムが、フィルム・ノワール的暴力と融合した新たな「ロング・グッドバイ」なのだ。どのキャラクターもリアルとは遠いところにいながらも、おふざけを排して純粋にノワール特有のスタイルを実践している姿勢がいい。
Macで編集したというライアン・ジョンソン監督は、彼が愛する“映画の記憶”を全開させ見事なフレーミングで、全編をいいシャシンの連続にしている。クールかつスタイリッシュな映像は7年間の集大成にふさわしい。ソダーバーグの「セックスと嘘とビデオテープ」、ロドリゲスの「エル・マリアッチ」同様、サンダンス映画祭観客賞受賞作である。ジョンソン監督の“次”が大いに楽しみだ。
(サトウムツオ)