サンシャイン2057 : インタビュー
ダニー・ボイル監督インタビュー
――やはりスタンリー・キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」は意識しましたか?
「本当におかしかったのが、この映画の撮影中どこにいってもキューブリックの影がつきまとっていたことなんだ。ヘルメット、スーツ、船などディテールに関するあらゆるものを選ぶとき、どこにいっても、彼の霊がいるような感じだったんだよね。これはキューブリックだけではなく、『エイリアン』だとか『惑星ソラリス』といった作品の影がずーっとついてくるような感じで、おそらくタルコフスキーやリドリー・スコットも同じような経験をしているからだと思うんだよ。『2001年宇宙の旅』『惑星ソラリス』『エイリアン』といった作品を越えようなんて口が裂けてもいえないけど、それと同レベルのものを作りたいという意識はどこかにあったよ」
――この映画に出ててくる宇宙船イカロスの声を決めるにあたって、「2001年宇宙の旅」のHALの声からの影響はありましたか?
「みんなHALを思い出してしまうと思って、今回は変えたんだよ。今回宇宙船の声を担当したのはチッポー・チャンっていうジンバブエと中国のハーフの女性で、彼女には撮影中ずっと一緒にいてもらって、撮影と同時進行で声をお願いしたんだよ。俳優たちととても親密になってたね」
――映画監督としてのキャリアをスタートさせてから10年以上たち、これからのイギリス映画を背負って立つような存在になったと思うのですが、今後はどのような作品を作るつもりですか?
「まず、次の映画はインドが舞台なんだ。日本に来る前はムンバイでロケハンをしていたんだよ。『フル・モンティ』の脚本家サイモン・ビューフォイが書いた『Slum Dog Millionaire』っていうんだ。とても面白い話だよ。あと、これは日本にいるからいうわけじゃないけど、僕が思うに我らヨーロッパの時代は終わりなんだ。今、世界は信じられないくらいのスピードでアジアの時代にシフトしているんだよ。そこで面白いと思うのが、欧米の映画作家によるアジアを舞台にした作品で、これらの作品で世界の移り変わりを感じ取れるわけだ。とっても興味深いよね。
イギリスの映画産業? わからないね。ハリウッド映画は大作を作り、イギリス映画はより小さな作品を作る傾向がある。ただ、今回の『サンシャイン2057』のような作品がより受け入れられると嬉しいよね。メインストリームのアイデアにのっかった映画ではあるんだけれどちょっと毛色の違う作品、英語を言語としながらもハリウッド大作とは異なる個性的な作品をこれからも作り続けていきたいと思っているんだ」