劇場公開日 2007年3月10日

絶対の愛 : 映画評論・批評

2007年3月6日更新

2007年3月10日よりユーロスペースにてロードショー

キム・キドクによる痛烈でグロテスクな愛の寓話

恋人に飽きられることを恐れて、女は美容整形で別人に変身し、名前まで少し変えて別人になる。すると、男も美容整形して顔も名前も変えてしまう。なんたる意趣返し。原題の「Time」に込められたのは、循環性のあるパラドックスだ。永久不変の愛などない、とキム・キドク監督の高笑いが聞こえるようなグロテスクな寓話だ。“絶対の愛”を求め過ぎた男女は、互いに愛を見失ってしまう!

ヒッチコック監督の「めまい」で、愛する女を失った男は街で彼女とそっくりな女(実は同一人物)と出会い、髪型や衣装を外見上過去の女と同じように変えさせる場面があるが。この映画も悲痛さにおいて同じに感じる。

愛において外見はまぼろしでしかない。まるで洋服でも変えるように、美容整形外科へと走る、外見を着飾る人たちへのキドク監督らしいシニカルな苦笑が見てとれる。

セックスをモチーフにした彫刻や女の仮面(ゾッとする)など、シンボリックな“記号”を随所に配した、いつもながらの小気味いい話術に舌を巻く。映画では性器を整形していないので、セックスすれば相手が分かろうというものだが、ロアルド・ダールの短編小説のような超一級のブラックユーモアを味わえるだけに、突っ込まないでおこう。

(佐藤睦雄)

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