守護神のレビュー・感想・評価
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So others may live
ベタで商業的だが感動した記憶がある。
話はAn Officer and a Gentlemanやマーベリックのような定番構造で青年が厳しい訓練に鍛えられながら色恋もしつつ一人前に成長していく感じ。バーで一人でいるヒロインをくどけるかの賭とか酒場の乱闘騒ぎとかロートルで仲良くなる感じとか危険な任に就く夫に気が気でない妻とか、この手の話の定型シークエンス目白押しながらしっかりした演出でもっていく。
現役だったベン(コスナー)は負傷して教官になって若手をビシビシしごくんだがそのしごきが苛烈なこと。新米役はアシュトンカッチャーだが、だいたいどこでもふざけたおしている俳優なのでまじなカッチャーは珍しくもあった。
胸のすくシーンは乱闘騒ぎのあとベンとジェイクで再度バーに行って海兵隊をたたきのめすところ。ようするに沿岸警備隊なんてものはマリーンとちがって「必要とするまで誰も評価してくれない」。そうやって軽んじられていることにベンが男気をみせてイキった海兵隊員を伸ばしてしまうのが痛快だった。この師弟関係が維持されラストへ向かっていく。
米国沿岸警備ヘリコプター救助水泳隊の広報のような映画になっていてラストにはSo others may liveというかれらのモットーがでてくる。So others may liveとは無私無欲と他者の利益のために、自らを危険にさらす決意と意志を強調している。
モットーにしたがい、ラストでケーブルが切れそうになったとき、ケビンコスナーが自己犠牲精神を発揮する。演出とはいえ、ここで切れるか、なにやってんだ器具管理係。フックをはずして落ちるコスナーをカッチャーがつかむ。ぜったい放すもんかと言うのを、手袋を外して落ちていく。劇的なシーンで率直に感動した。
自己犠牲は日本的なことのような気がするがそうでもないのかもしれない。日本では山でも川でも遭難などの報道があると(とくにヤフコメに)自己責任論があふれるがアメリカはどうなんだろうか。
コスナーが単純にかっこよかったのとClancy Brownというよく見る強面バイプレーヤーがいぶし銀な魅力を発揮していた。
団体の存在意義をしめすことは重要であると思う。日本で言うなら消防団である。じぶんは断わりたかったが地域で商売をやっていて消防団は度々顔をあわせる連中でもあったので入らざるをえず結局11年やった。やっている間じゅうやめたかったしとりわけ朝練の時期はいやでいやでしかたなかった。消防団に入ったことで衝突しなくていい人と衝突したし、仲たがいしたくない人と仲たがいした。じぶんはUターンなのである程度年食って入ったから先輩がみんな若かった。それで意固地にもなった。田舎者どもが、と思っていた。総じて、入らなければ経験することのなかった、みじめなつらい思いをした。が、団体で生きているとじぶんがわかる。職場とは別の意味でじぶんという人間の小ささがわかる、と同時に火事を消す大任をあずかる。火事は消防署が消すもんだと思っていたが、出動した火事で消防署の消防車がきたことは一度もない。日本では火事は消防団が消すのだ。近い分団から順番に来て、規模に応じて拡がる。さほど大きくない火事だとまずとびぐちを持っていってためらいもなく火の周りをぶちこわす。平時で人様の家をぶちこわせますか。じぶんとは逆に消防に夢中になってしまう人は大勢いるがとびぐちで他人様の団居をたたき壊しているとき、それがちょっと解った。
消防団はじぶんとはまったく違う環境で生きてきた人と協力しあって、ひとつのことをなしとげるという大義がある。それはひとりで生きていると解らないし解らないままだと人間形成に欠損が生じると思われる。いや、むろん、操法がコンペティションと化しているなど消防団の弊害だって幾多あるが、消防団は地域社会で生きる人間形成に一役買うのはまちがいないのだ。
なにがいいたいのかというと優れた団体活動映画は、その団体で働きたいと思う人を産み出す。消防団のいい映画をつくることが消防団員確保に効果的なのだ。ハヤブサ消防団というドラマを見たことがあるが消防団に入りたいと思わせる内容じゃなかった。この映画のように消防団を雄々しく描いた映画が、目減りしていく消防団員人口の歯止めになる。
問題はそういうベタで商業的ないい映画をつくる人材や素地が日本にはないこと。日本映画界は監督ってのはゲージツ家なんだぜという太古の考えがまかりとおっていて商業的であることが減点とイコールでつながっているような旬報系の左翼たちが日本映画界を牛耳っているわけで、なんども言っているがこのばかどもは2023年のベスト&ワーストで花腐しがベストでゴジラ-1.0がワーストだとのたまった。それって、どう考えたって商業的人気作を貶めることで「おれたちは孤高なんだぜ」と気どっているスノビストどもだろうが。こんな業界に未来はないからはやく滅びやがれ。
作業しながらながら見。
荒波に飲まれた命を守る
ラストシーンに到っては、憎いのひと言です。
日本で大ヒットした『海猿』がハリウッドでリメイクされるという噂があったようです。でも、それとは関係なく『守護神』はハリウッドのオリジナル企画のようです。
沿岸警備隊の鬼教官に鍛えられる若き訓練生の訓練風景となるとどうしてもかぶってくるものを感じますね。『海猿2』もなかなかの迫力で、最後のどんでん返しもあり日本映画としては頑張っている作品でした。けれどもそこはハリウッド。海難シーンのド迫力は比べものにはなりません。決死の救出シーンでは、命がけの撮影と思いきや、大型プールを使って、大時化のアラスカの海を再現しているそうで、それでもリアルティがすごいのです。
この映画は、なんと言っても52歳を迎えるケヴィン・コスナーの男臭い演技に尽きますね。JFKを始め、アメリカンヒーローを演じる役柄が多かったですが、若い隊員に闘志を露わにしていく鬼教官役にまさに体当たりで演じています。
彼に対峙するのが、アシュトン・カッチャー演じる天才スイマー。その圧倒的な自信と若さを前に、教官と激しく対立するのですが、単に反目し合うのでなく、ふたりの人生のエピソードを明かしながら、次第にその距離を縮めていくところがグッときますね。
その二人の会話の部分を、丁寧に描いているので分かりやすく、ラストの感動まで思い入れタップリ感傷に浸れました。
アシュトン・カッチャーについては、私生活でバツ2熟女と添い遂げたり、弟の学費のために芸能界に入ったりと、ハンサムな上に役柄の天才スイマーの過去に似て、結構苦労人なんですね。そういうことを知っていると、彼にもチョット感情移入できるかもしれません。
とにかくこの映画では、52歳のケヴィン・コスナーを起用しても、訓練シーンや救助シーンで嘘っぽさが全然感じませんでした。ボロを出していないのは、監督の演出がいいのかもしれませんね。ただ惜しむらくは、訓練シーンが、ちょっと長いような気がしました。
ラストシーンに到っては、憎いのひと言です。チョット書くとネタバレになってしまいますので、アバウトに言いますが、見返りを求めないこころこそ「守護神」なんだなぁと思いました。ラストのラストで「守護神」のタイトルの意味が解って、感激ひとしおでありました。ハリウッド映画の厚みをタップリと堪能できる作品です。
名優ケビン・コスナーの本領発揮
アメリカ沿岸警備隊の救難士の活躍を描く映画。ケビン・コスナーが伝説のベテラン救難士を演じています。
沿岸警備隊の救難士と言えば『海猿』を思い出すところですが、若い男女の恋模様も描き出した『海猿』とは異なり、こちらの『守護神』はベテラン救難士とその後継者にならんとする若い救難士の交流のあたりが描かれている男臭い物語になっています。ネタばれになるので詳しくは記しませんが、そんな男臭いというところから想像付くように、ベテラン救難士と若手救難士の衝突と和解、迫る世代交代、そして、予想通りの結末と進んでいきます。そう言う意味では、ストーリーに予想が付く安心してみることが出来る映画です。
この『守護神』は、2005年のハリケーン・カトリーナの際の沿岸警備隊の活躍からインスパイアされたと言うことで、『海猿』との関連は否定されているわけですが、それでも、海中から海面を見上げてのカメラアングルなんかは、その類似性を指摘したくなったりもします。まぁ、それ以外の類似点は、それほど感じなかったですけどね。むしろエンディングは『アルマゲドン』のストーリーとの類似性を指摘したくなりますね。まぁ、こう言う内容では、似てしまうのは仕方ないのかもしれませんが。
ところで、ケビン・コスナーって、こう言うベテランの役が多いですね。まぁ、実際、ベテランの俳優でもあるわけですが、かつて活躍したが、何らかの理由で苦悩しているベテランと言う役どころにはぴったりです。アシュトン・カッチャーも、若干陰のある自信過剰の若手を良く演じています。まぁ、ベテランに鍛えられて、いい救難士になって行くわけですけどね。
この映画を見て改めて思い出されるのは、アメリカの沿岸警備隊は準軍事組織だということ。平時は警察機関というか、国境警備隊というか、軍隊ではない活動を中心に行っているわけですが、戦時には第一艦隊としてアメリカ海軍に組み込まれることになっているんですよね。階級も海軍と同じだし。その辺が、完全に海上警察組織である海上保安庁とは大きく違うところです。まぁ、そんな事を知らなくても楽しめる映画なので、男臭い物語が見たいときは、非常にいいと思います。
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