モンスター・ハウス : 映画評論・批評
2007年1月9日更新
2007年1月13日よりみゆき座ほか全国東宝系にてロードショー
正攻法のファンタジーだが、“愛の歪み”の物語にも読める
誰もが子供時代に遭遇したことがある“なんだか怖い家”が、もしも本当に邪悪な意思を持った生き物だったとしたら?――と、子供時代の「もしも」を映像化する正攻法のファンタジー。「子供の目に映る物体が擬人化された世界」という古典的設定に、「動かないはずのモノが動く」というアニメの原初的快楽を掛け合わせて、基本は王道。まるで生き物のように自在に動き回る家屋の映像表現は、子供の目にも大人の目にも楽しい。
加えて、大人には“愛の歪み”の物語にも読めるのが本作のユニークさ。映画の後半で判明するこの家がモンスターになった原因は、家主とその亡き妻それぞれの愛。なのだが、その愛は極端すぎて歪んでいる。その歪みが年月を経て変貌したのが、この邪悪なモンスターなのだ。そこで気づけば、作中の愛はみな機能不全。主人公もその両親も子守もうまくいかない愛を抱えている。そもそも声優陣がクセモノで、家主はスティーブ・ブシェーミ、子守はマギー・ギレンホール、その恋人はケビン・スミス作常連のジェイソン・リー、恋敵は「バス男」ジョン・へダー。この顔ぶれが、普通のよい子向けのお話に収まるはずがない。機能不全の愛は放っておくと怪物になる。そんな恐怖譚でもあるのだ。
(平沢薫)