ヘンダーソン夫人の贈り物のレビュー・感想・評価
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裸天国!
ヘンダーソン夫人を演ずるジュディ・デンチがとにかくいい。夫を亡くし、人生の目的さえも失ったかのような老貴婦人。同じく金持ち夫人の友人からの「どんどんモノを買っちゃえばいいのよ」という忠告にしたがって劇場を買ってしまう・・・「宝石とかの身につけるものの類よ!」と言われてももう遅い。彼女にとっては生きがいをみつけることが必要だったのだから・・・
せっかく劇場オーナーになったのだから、成功しなくてはならない。まずは手始めに、有能な支配人・演出家としてボブ・ホスキンスを雇うことにして、ミュージカルを中心に1日に5公演も行う作戦に打って出た。そして、他の劇場との差別化を計るためフランスのようにヌードレビューを登場させるのです。しかもヌードダンサーではなく、あくまでもオブジェのような扱い。自由の女神像や絵画モデルのようなポーズでずっと静止させられる彼女たちは踊るよりも過酷な舞台だったのかもしれません。
ヌードレビューはショッキングでありながら、殿方たちで大盛況ぶり。経営的にも大成功かと思った矢先に第一次世界大戦勃発なのでした。若い兵士たちに女性のヌードで元気付けたいというヘンダーソン夫人の真意もよくわかるし、ドイツ軍が攻めてきても営業を続けるスタッフや役者の団結心も熱く伝わってくる。戦争によって失う家族の悲しみ。戦時下であっても人間らしい生活を願う気持ち。舞台ミュージカルの音楽によって戦争への小さな抵抗が心地よく感じられる、バランスのいい映画でした。
心に秘めた想い
愛する夫を亡くし未亡人となってしまったヘンダーソン夫人。夫の死を悲しんではいるけど、いつまでも悲しんでばかりいられない。未亡人ライフを謳歌すべく劇場をご購入。
口が悪く遠慮を知らないヘンダーソン夫人だけど、ホントに憎めない。とても生き生きしている。
マネジャーに奥さんがいると知った時の八つ当たり具合とか可愛らしい。親友との会話も女はいくつになっても話す内容はあまり変わらないらしい。
最後劇場前での演説、彼女の想いを語るシーンはもう涙が止まらない。
大好きな映画を見つけた。
人生って、素晴らしい!!
『イギリスに初めてストリップ劇場を作った、夫人の物語』←こんな、とてつもなくエエ加減な予備知識をもったまま、この映画を観てしまいました…。これがなかなかどうして、素晴しい“人生賛歌”でございました。
冒頭のような軽い気持ちで観に行っちゃったんですよ。で、途中までは結構ホノボノとしてまして、“古き良き時代のヨーロッパ・ホームコメディ”てな感じで、時折“クスッ”と心温まる笑いも惹き出されておりました。ところが中盤以降…即ち、戦争(この場合、第2時世界大戦=対独戦争)が烈しくなり、ロンドンが空襲にさらされるようになるあたりから作風がガラリと一変。戦争が生み出す悲劇を描きながら、“生きることの素晴らしさ”を映画の中で説いていきます。特に安全性を考え、劇場の閉鎖を通告に来た政府の長官と、劇場前で順番を待って並ぶ兵隊たちに向けて、ヘンダーソン夫人が何故劇場を買取り、ヌードレビューを見せようと思ったかを語るシーンには、思わず涙してしまいました。夫人の言葉は、純粋な男たちの想いを見事に言い当て、なお且つ母親のような愛情で包み込んでくれています。このシーンは、ホントに素晴らしい!!
男(兵士)は、女性につかの間の安らぎを求め、女性はそれを優しく受け止める。やがて男は、戦地へと旅立つ…。現代のような殺伐とした時代に生きる我々に、“純粋に生きていく人生”が如何に素晴らしいかを、この映画は教えてくれます。
映画の中で、劇場のシーンとして描かれる数々のレビューのシーンは、見ていてとても心が躍らされます。そして互いに憎まれ口をタタキながらも、それぞれを“パートナー”として認め合い“劇場”という舞台で“人生”という芝居を演じたヘンダーソン夫人と、支配人・ヴァンダム。この主役を演じた2人の“大御所”ベテラン俳優、ジュディ・デンチとボブ・ホスキンスの骨のある演技合戦も、この映画の見所です。
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