「家族の形はいろいろ」リトル・ミス・サンシャイン KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
家族の形はいろいろ
率直な感想としてとにかく笑わせてもらうシーンが多く面白かった。これに尽きる。
父親は頑固で精神論が強いくせ者。
長男は口を開くことなく言葉を文字として相手に伝え一切喋る事をしない、いわゆる厨二病を拗らせたようなくせ者。
祖父は女遊びもクスリ遊びも現役で行う遊び人。
叔父は鬱病持ちのゲイ。
母と娘は比較的まともだが、このくせ者がそろう一家が娘のコンテストの為に一緒に会場まで向かうただそれだけだ。
くせ者がそろうとやはり小さな事も無駄に大きな事に繋がりエネルギーを使う。
そんなトラブルを常に笑える描写として描かれている為終始笑って鑑賞ができる。
終盤にはあっさり祖父が死んでしまう。あまりにも呆気なく死んでしまう為笑っていい場面なのか一瞬迷いは生まれたが、祖父の死体を大会まで持っていく描写や、途中で警官に止められ車内をチェックしようとし、死体の存在がバレかけるのだが、生前に買ったポルノ誌と叔父のゲイ雑誌が警察の車内チェックを阻む。祖父の死そして祖父の死体をきちんと笑いに変えてくれるわけだから天晴れだ。
その直後長男が車中で色盲である事が呆気なく発覚し、色盲であるが故にパイロットになる夢を断念せざるを得ない事実を知る。
もちろん長男はパイロットになる為に口を閉ざすことをした訳だし、強い夢だったから発狂する。
ただものの数分で事実を受け止めてあっさり口を閉ざす事をやめる。この辺のストーリー展開の荒々しさは本当に笑わせて貰った。
最後はコンテスト場でも一波乱。祖父から教わったダンスを娘は披露するのだが年齢に相応しくないいやらしいダンスを披露し会場にいる他の客や関係者を不快にさせる。
それでも娘、亡くなった祖父を思い家族は共に踊り最後は要約みんなが同じ笑顔をして話は終わる。
この作品の良い点は変にくさいシーンなどなく、常に笑わせてくれる作品の為とにかく面白く楽しい。
ただ最後の場面のように所々心に優しく響くシーンもあり緩急があって見やすい。
理想の家族ってどういう家庭環境なのか分からないけど、少なくとも誰しもがまずは世間体を気にする事は大切だと考えると思う。
もちろん人様に大きな迷惑をかけてまで得る幸せは理想とは言えないが、例え世間では変わってると見られる個性豊かな者が集まった家庭でも、この作品のように家族みんなが一つに向かってなにかに取り組み、そしてみんなが同じ笑顔を作れる事は理想の家庭の姿の一つであろう。
どんなに世間体がよくてもバラバラであっては序盤のこの一家となんら変わらない事であろう。
バカな事を家族みんなでバカをし、そして最後は一つになり、みんなで笑う。こんな姿を観ていると日本の作品だと野原一家なんかを思い出した。
笑いながら心が温まるとても面白い作品であった。