「ボンド、ダニエル・ボンド」007 カジノ・ロワイヤル 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ボンド、ダニエル・ボンド
シリーズ21作目。2006年の作品。
昨年『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に合わせて、半年に渡って書いていた007レビュー。
ところが、最新作が公開延期となり、レビューも中断。ちょうど5代目ピアース・ボンドが終わったところだったので。
待望の最新作の公開が、今度こそ今度こそ今度こそ、一ヶ月後に迫ったので、レビュー再開!
現6代目、ダニエル・ボンド、デビュー!
(って言うか、『ノー・タイム・トゥ・ダイ』本当に公開するよね? コロナは分かるけど、また延期になったら、いい加減怒るよ!)
このダニエル・ボンドの最大の特徴は、歴代ボンドがすでにエリート・スパイとして活躍しているのに対し、00ナンバーを得たばかりの半人前。
まだ若く未熟なスパイが、失敗と試行錯誤を繰り返し、ボロボロに傷付き、時に命の危険に直面しながら初の大任に挑み、一人前のスパイに成長していく…。
これまでで最も感情移入し易いボンド。
感情にも揺れ、荒々しさも見せる。
それがワイルドな魅力のダニエル・クレイグにハマった。
が、しかし…
原作ではボンドは、黒髪の青灰色の目。
金髪蒼眼のダニエルは当初、大ブーイング。強面が悪役にしか見えないなんて声も…。
そんな悪評を、公開したら絶賛の声に。
強面だが、その中に魅せる強さ、弱さ、優しさ。
それから女性ファンにとっては、歴代ナンバー1と言っていい鍛え抜かれた肉体美。
全く新しい、ダニエル・ボンド!
それを告げたと言っても過言ではないのが、開幕のパルクール・アクション!
…いや、パルクール・アクションなんて本作以前にも『YAMAKASHI』などでも見ていた。
しかし、本作のパルクール・アクションには圧倒された。マジでスゲェ…!
今回の007、本当にこれまでとは違う!
さて、そんなダニエル・ボンドの初任務は…
プラハでMI6の裏切り者を処罰し、00ナンバーを得たボンド。
マダガスカルで爆弾魔を捕らえる最初の任務に挑むが、失敗。(←これがパルクール・アクション) 爆弾魔を射殺してしまうどころか大使館敷地内で大暴れ、いきなりMから大目玉…。
ボンドは爆弾魔の通話記録からディミトリオスという男に目を付け、バハマへ。マイアミ空港で計画されていた爆弾テロを防ぐ。
窮地に立たされたのは、テロの資金源となっている“死の商人”ル・シッフル。爆破テロで得る筈だった利益を失っただけではなく、多額の借金を抱えてしまった。ル・シッフルはモンテネグロの“カジノ・ロワイヤル”で行われるポーカーで儲け、損失分を得ようとする。
ボンドの次なる任務は、ル・シッフルにポーカーで勝ち破産させ、捕らえる事。
ル・シッフルはカードゲームに強い事で有名。
財務省の監視員ヴェスパー、現地の諜報員マティスと共に、“カジノ・ロワイヤル”に挑む…。
原作でも第1作目の『カジノ・ロワイヤル』。
それを新たなボンドの第1弾に据えるところに、製作陣の新シリーズへの意欲を感じる。
以前にも映画化されている『カジノ・ロワイヤル』だが、その時はパロディ・コメディ。今回はほぼ原作に沿っているとか。が、カードゲームがバカラからポーカーに変更。これは有難い。実は私、学生の時に友達とよくカードゲームしてたので、ポーカーのルールは知っていたので。(あくまで遊びで、危険なお金は賭けていませんでしたよ!)
ポーカーなんて配られてくるカードのただの運…。
そうでもあり、そうでもない。
自分の手札を読ませる。または読ませない。
相手の手札を読む。または読まない。
ちょっとした間違いで確率が大きくも小さくも狂う…。
カードだけを“見る”のではなく、相手とも“対する”。
癖。ル・シッフルが指をこめかみに当てるのは何を意味しているのか…?
単なる机上のカードゲームに非ず。
緊迫感溢れる人と人の心理戦。
このシーンは当時観た時も今見てもスリリング!
監督はマーティン・キャンベル。ピアース・ボンドのデビュー『ゴールデンアイ』以来の登板で、新ボンドのデビューはこの人がまず担当…?
そのスリリングなポーカー、ダイナミックなアクション、今後のダニエル・ボンドの作風となるシリアス&ハードで重厚なドラマ…監督にとってもキャリア最高作。
脚本に『クラッシュ』でオスカーを受賞したばかりのポール・ハギスが参加し、強力バックアップ。
また個人的にお気に入りなのが、主題歌の“YOU KNOW MY NAME”。これ、メッチャカッコ良くない!? 歴代ボンド主題歌の中でも、BEST級なくらい好き。本国イギリスではヒットしたらしいけど、アメリカではヒットしなかったとか。アメリカ人の感性疑うわ…。
ボンドガール、ヴェスパーを演じるエヴァ・グリーンの美貌!
強気な性格でありながら、シャワー室で見せた弱さ、脆さ…。
そして彼女には、ある秘密が…。
血の涙を流す男、ル・シッフル役のマッツ・ミケルセンは、さすがこの頃から存在感を放つ。物語上メインヴィランだが、彼も彼でテロリストに追い詰められ、負けられない。それ故ボンドとのポーカー対決がより白熱する。
ジャンカルロ・ジャンニーニが“名仕事屋”ぶりを見せ、新フェリックス・ライター役でジェフリー・ライトも登場。
唯一のレギュラーメンバー続投は、ジュディ・“M”・デンチのみ。
Qもマネーペニーも登場しない。
特殊兵器もナシ。
OPもお馴染みのガンバレル・シークエンスで始まらず、あの名台詞やテーマ曲も最後の最後で。
異例尽くし!
テロ、マネーロンダリング、カードゲーム…舞台も移り変わり登場人物も入り交じり、結構複雑ではあるが、テンポのいい展開と迫力のアクションで2時間半近い長尺を一気に見せる。
遂にポーカーで勝った!
が、ある裏切りでヴェスパー共々ル・シッフルに囚われてしまう…。
さあ、男性諸君地獄の拷問。あれはキツい…。
その時のボンドの「あそこがかゆい。掻いてくれ」がナイス挑発と共に、不屈の精神を感じた。
絶体絶命!…が、思わぬ急展開が。
全てが終わった。
ヴェスパーと穏やかな日々…。
まさかの信じたくもない裏切りが。
その愛の裏切りを前に、感情に流されず、一人前のスパイとして、任務を遂行出来るのか…?
誰しも最初は完璧ではない。
失敗し、苦悩し、悲しみや何かを土台に。
彼も我々と同じ。その名は…
ボンド、ジェームズ・ボンド。
わわわ!興奮のレビュー、ありがとうございます。カジノロワイヤルまた見てから、ダニエル最後の007に立ち向かいます。エヴァ・グリーンはこの映画で多分初めて知りました。ボンドと一緒に彼女に恋しました。
「アナザーラウンド」でとってもかっこいいミケルセンに出会いました。拷問者ル・シッフルも再度見なくては!