ナチョ・リブレ 覆面の神様 : 映画評論・批評
2006年10月31日更新
2006年11月3日よりテアトルタイムズスクエアほかにてロードショー
Bの凶暴な身ぶりが見られるだけで、なぜか幸せな気分に
ジャック・ブラックはハイテンション・キャラばかり演じているが、同じJBでもジョン・ベルーシ(「ブルース・ブラザース」)のように根っから破天荒なのではなく、まったくの即興演技なしで、じっくり笑いをつくりこむタイプのコメディアンなのだ。
メキシコの孤児院の子どもたちに腹一杯食わせるために、夜は覆面レスラー(ルチャドール)になる神父というのが、JBの今回の役どころだ。アメリカンなプロレス、WWEのようなマッチョな筋肉マンではなく、でっぷりしたお腹で、赤と水色の気色悪いタイツとマスクをして空中殺法に挑む(笑)という“反則攻撃”スレスレの仰天コメディだ。
「バス男」のジャレッド・ヘス監督の演出は、ガリガリなタッグコンビとの“特訓”などで、ユルユルなスラップスティックな笑いをかもし出し、「スクール・オブ・ロック」のマイク・ホワイトの脚本は、子どもたちにかこまれたJBをはしゃがせている。髪がモジャモジャのJBが、だんだん本物のメヒコ(ハーフだけど)のように見えてくるからおかしい。「スクール・オブ・ロック」が傑作だったので多少の失望感もあるが、ほとんどアドリブなしで演じたJBのコメディアン精神に頭が下がるし、JBの凶暴な身ぶりが見られるだけで、なぜか幸せな気分になる!
(サトウムツオ)