劇場公開日 2006年12月9日

「戦争に英雄はいない。」硫黄島からの手紙 勝手な評論家さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0戦争に英雄はいない。

2006年12月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『父親たちの星条旗』に続く、クリント・イーストウッド監督硫黄島二部作の第二段。今度は日本側からの視点での硫黄島です。アメリカ人の監督が、日本人俳優を使って撮影したアメリカ映画という珍しい作品でもあります。
『父親たちの星条旗』と同様、映画は色をかなり押さえ気味。うっかりすると、モノトーンかとも思ってしまうかも。また、映像もリアル。銃撃されるシーンのみならず、手榴弾で自決するシーンは、爆発するところもかなりリアルに描いています。これまでの映画には、あまりなかったかと思いますね。
渡辺謙以外は、映像オーディションで選ばれたそうですが、二宮和成が良いですね。ただのジャニーズとは思えません。イーストウッドをして”天才”だそうですが、天才は言い過ぎだとしても、かなり良い演技をしていました。ちょっと彼の実年齢と、想定されている役柄の年齢との差がありそうなところが気になりますが。それと、加瀬亮演じる清水との関係もちょっと変かなと。彼(清水)の階級は上等兵(星三つ)で、二宮の西郷は一等兵(星二つ)のような気がしましたが、なぜにタメ口? 階級は上等兵のほうが上のはずなんですが。ちょっとそのあたりのことが変な気がしました。
西中佐(バロン西)を演じた伊原剛志も良いです。ただ、西中佐の最後はわかっておらず、また遺体も発見されていないので、映画のような最後であったとは確認されていません。
あとは主演の渡辺謙。やっぱり良いです。彼だけは、イーストウッドから直接依頼が来たそうです。さすがハリウッド俳優ですね。知米派のすばらしい人柄であったと伝えられる栗林中将を見事に演じきっています。インタビューで「天皇陛下万歳というシーンでは、戦争に英雄はいないと言う事を伝えるため、押さえ気味に、無念の感情を込めて演じた」と言っていましたが、その演技の意図は十分通じたと思います。劇中で読まれた手紙は、実際に栗林中将が家族に送ったものです。ちなみに、栗林中将の最後もわかっていません。映画のように階級章を外して突撃を行って戦死したと伝えられていますが、階級章がないため遺体も発見されていません。
日本公開前に、全米批評家協会賞最優秀作品賞を受賞したとのニュースが入りました。英語以外での映画での受賞はかなり稀だと思います。これは、アカデミーも期待できますね。見れば、いい映画であることはわかります。

勝手な評論家