悪い奴ほどよく眠るのレビュー・感想・評価
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肩にチカラの入った作品〜「まあ、一杯いこう」
1960年公開、配給・東宝、製作・黒澤プロダクション。
【監督】:黒澤明
【脚本】:小國英雄、久板栄二郎、黒澤明、菊島隆三、橋本忍
【製作】:田中友幸、黒澤明
主な配役
【西幸一】:三船敏郎
【岩淵副総裁】:森雅之
【岩淵佳子】:香川京子
【岩淵辰夫】:三橋達也
【守山部長】:志村喬
【白井課長】:西村晃
【板倉】 : 加藤武
【和田課長補佐】:藤原釜足
【殺し屋】:田中邦衛
1.黒澤プロダクションの処女作
黒澤明 50歳
三船敏郎 40歳
三橋達也 37歳
香川京子 29歳
田中邦衛 28歳 ※辛うじてセリフのある端役
披露宴会場の場面から始まる本作。
非常に凝った演出が随所に見られる。
一時釈放された重役・三浦が自殺するシーン。
絶望に打ちひしがれ拘置所の壁に寄りかかった三浦の耳に疾走するクルマのエンジン音が聞こえる。
観客は三浦になったように感じるだろう。
西が、自殺を思い留まらせた和田課長補佐を連れて、
和田の葬式を見せに行くシーン。
読経の声をバックに、クラブの賑やかな音楽と共に「悪い奴ら」の会話がテープから流れてくる。
これを境に和田は西に協力するようになる。
凝った脚本だ。
肩にチカラが入っています、というのが伝わる。
2.てんこ盛りの内容〜「まあ、一杯いこう」
◆汚職(大竜建設と公団)甲乙つけがたい悪党たち
◆悪党たちの命懸けの結束と疑心暗鬼
◆復讐
◆友情(戸籍を入れ替えるほどの友情)
◆兄妹愛(障がいを持った妹、原因を作った兄)
◆男女の愛
◆人間の弱さ
『モンテ・クリスト伯』に着想を得たというが、
まさにそれを感じるのが、上述した「てんこ盛り感」だ。
「まあ、一杯いこう」
このセリフに西村晃演じる白井課長が強く反応する。
油断させるときの決まり文句だからだ。
「悪い奴ら」のバッグには、「さらに悪い奴」がいることが何度か暗示される。
3.まとめ
みずからの利益、あるいは立身出世のためなら、
殺し屋を雇うことや、自殺教唆も厭わない。
エリートたちの悪事は、やくざよりたちが悪い。
私生児が親の仇を討つ、、、
よく出来た私生児だな。まあ良いのだが、
スンナリ感情移入できなかったりもする。
興行的には失敗した本作。
映画は、わかりやすくないとダメだと思う。
☆3.0
画面に登場しない、よく眠る“もっと”悪い奴に、現代に続く金権政治も想起され…
TV放映を機に再鑑賞。
1960年キネマ旬報での第3位選出作品。
市川崑の「おとうと」が第1位のこの年、
小津の「秋日和」、
新藤兼人の「裸の島」、
今村昌平の「豚と軍艦」、
大島渚の「日本の夜と霧」
がベストテン入り。
また、橋本忍は、第2位に選出された
「黒い画集 あるサラリーマンの証言」と、
この「悪い…」で脚本賞を受賞して
いるので、黒澤を含めた5人の脚本家が
名前を連ねるこの作品での中心的な立場で
あったことが想像されたのだが、
ある解説本によると、
実際は久坂栄二郎+黒澤が中心だった
ようなので、キネ旬での橋本忍選出は
「黒い画集…」が主なる選考対象だった
のかも知れない。
さて、
現代映画では台詞での説明を極力廃して、
映像や登場人物の所作で真相を伝え、
場合によっては結論場面を全く省いて
観客にその解釈を委ねる作品も
多いと思うのだが、
この作品のように、徹底して台詞によって
経緯や真相の説明が行われる手法は
分かり易くて良いのだが、
多少の違和感と共に、大変驚かされた。
黒澤映画って、
他の作品でもそうだったのか、
改めて確認したくなった。
この作品で一点疑問に思ったのは、
自殺するつもりでの
巨悪の政治家?に提供された薬物を入れた
お酒を娘に飲ませた副総裁は、
どこまで深くそれを認識して
その行為に及んだのか、
また何故娘は眠っただけで助かったのか、
私には分からなかった。
そして、
全く姿の見せない副総裁の電話の相手が
「“もっと”悪い奴ほどよく眠る」
との構図は、今にも繋がる金権政治と、
加えて、そこに群がる業者の姿は、
弱含みになりつつある現代の日本の国力低下
の源のようでもあり、そんな意味では、
まだまだ現状の日本に警鐘を鳴らすべく
価値のある作品のように思えた。
実直なサラリーマンが追い込まれていく姿
絶望と怒り
これでいいのか
現代も悪い奴ほどよく眠る‼️
不可解な死…
先日、裁判で判決の出た森友文書改ざんによる職員自殺。
裁判で自殺と文書改ざんの問題に、因果関係は認められず…
豊田商事の永野会長殺害事件、ライブドアの幹部の謎の自殺に続く、不可解な死に
よって、また事件がうやむやになる…
これらの人の死によって、どれだけの政治家や権力者が救われたか…
巨匠・黒澤明監督の「悪い奴ほどよく眠る」によって、日本の闇部が描かれた。
それから50年以上経っても、この国の闇世界の構造は、何も変わらない…1歩どころか
1ミリも進歩しない。
最後に、若い物が「こんな事が許されて、いい物かっ!!!」と絶叫する者が、今も
多くいる事を願う………
存分に堪能できるサスペンスの傑作です
長すぎてだれる!!
長尺の上どのシーンも長くテンポが悪いです。冒頭の結婚式のシーンも長すぎます。黒澤作品はいつもタイトルは熱いのですが、中身はひたすら起伏に乏しい気がします。夜道に切り替わると、おっ暗殺パート来たかとなりますが、重要人物が誰もいない夜道を一人歩きしたり、官庁で一人居残っていたりするのでネタ映画になっています。10年前の第一次安倍内閣では松岡農相の不審死がありましたが、死体を見つけて一時間通報しなかったそうです。次の赤城農相の顔がボコボコになっていたり、農水官僚も次々と痴漢で逮捕されたので、これは農林中金を寄こせという脅迫によるものでしょう。経世会の政治家は次々に汚職が発覚したり殺害されたり病気にさせられました。昨年、加藤の乱で森喜朗に歯向かった加藤紘一が亡くなり、谷垣は自転車事故で半身不随となったので邪魔者はいなくなり、清和会は現在も安泰です。社会派のようで、下山事件の黒幕のGHQや現在でいうジャパンハンドラーズのような存在も出てこないし、中川昭一殺害を指示した世界銀行のロバート・ゼーリックみたいのが出てくればワクワクしましたが、リアルさに欠ける内容の映画でした。
世の中、こんなものだよね
サスペンス映画の傑作
テンポよく展開して飽きさせない。2転3転する。ただ、画面からは空気...
テンポよく展開して飽きさせない。2転3転する。ただ、画面からは空気感のような緊張感があまり感じられない。これは最近の映画のような音楽や効果音を多用していないことではないかと思った。
その音を使わない代わりに、光や表情や態度の演技は迫り来るものがある。
この映画の三船敏郎はいい!
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